マスコミが報じない東北復興の矛盾「被災地格差」はなぜ起こるのか?

2013年11月05日 東日本大震災 被災地 被災者 遺族 震災

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 東日本大震災から2年8ヶ月が経とうとしています。「被災地」というと、岩手県、宮城県、福島県という、いわゆる被災3県をイメージする人は多いとは思います。その3県はすべての市町村が災害救助法の適用を受けています。実は、同法適用範囲は3県のほか、青森県(1市1町)、茨城県(28市7町2村)、栃木県(15市町)、千葉県(6市1区1町)、東京都(47区市町、帰宅困難者に対応)、新潟県(2市1町、長野県北部地震で適用)、長野県(1村、同)と広くなっています。

 また、「被災者」とひと言で言っても、統一された定義はなく、問題別によって決まられています。一般に、被災地に住んでいれば「被災者」と思うわけですし、被災地に住む者からすれば、応急仮設住宅やみなし仮設住宅に住んでいないと、被災者ではない、と思ったりもします。しかし、被災地内では、どこからどこまでが対象なのか?という線引きが、その後の生活を変えてしまいます。

 東日本大震災の避難行動について、行政の検証が行なわれています。特に公共施設で亡くなった方々の避難行動については、誰がどの部屋に避難し、どこで遺体が見つかったのか?といったことが行なわれる場合もあります。なぜ、その施設に避難したのか?その施設は安全な避難所だったのか?といったことは報告書で公表がされますが、一人ひとりの行動は発表されません。こうした情報は、個別に遺族らに連絡があったりするものです。

 実の娘が施設のどこに避難していたのか?を最近、両親が知ることができました。二年半も経っているのに、どうして連絡が行かなかったのか?と、両親は行政側に問い合わせました。

「遺族なのに、どうして連絡がないのですか?」

 行政側は面と向かって「あなたは遺族ではないから」と答えたそうです。たしかに、結婚をしているために、一義的には配偶者、つまり夫が「遺族」となります。しかし、その夫にも十分な説明がずっとなされませんでした。説明が行き届かなかった理由には、連絡の行き違いもあります。仕方がない面もあります。

 ただ、なぜ実の娘の両親は「遺族」ではないのでしょうか。行政はこうも言いました。「遺族とは、弔慰金をもらった人」。災害によって「弔慰金をもらう人」は、「災害弔慰金の支給等に関する法律」(*1)で決められています。

 つまり、遺族とは配偶者か、父母の場合は「生計を同じくしていた者に限る」となっています。ただ、この場合、弔慰金の支給対象を決めるに当たっての「遺族」です。避難行動を検証するに当たっての「遺族」とは必ずしも一致してくてもよいはずです。行政は杓子定規に定義付けをしたようです。しかも、実の両親にむかって「あなたは遺族ではない」と言うとは、娘を亡くした親の感情を考えていないのかと思ってしまいます。

 一方、東日本大震災の被災地に住む者であれば、応急仮設住宅に住めるのではないか? と考えがちですが、そうとも限りません。仮設住宅は、災害救助法によって一定の条件で被災者に提供することが決められています。

 津波被災地のある地域では8~9割、住宅が流出したと判断されました。「災害救助法による救助の程度、方法及び期間並びに実費弁償の基準」によると、

 応急仮設住宅

 イ. 住家が全壊、全焼又は流失し、居住する住家がない者であって、自らの資力では住家を得ることができないものをであること

 とあります。地域のほとんどが流出しても、残っている家々があります。地域に店もなく、公共施設もない。電車も通らない。街灯ももなく、近所の人もほとんどいない。そんなところに家がある場合、原則として、仮設住宅に入れません。

 ある男性の自宅は高台にありました。地区内のほとんどが津波で流出し、無事だった家屋は近くの家だけです。しかも、住んでいない家もあり、震災当時、住んでいたのは7軒です。これではコミュニティが成り立ちません。何度も交渉した結果、仮設住宅に入居することができました。

「東日本大震災に係る災害救助法の弾力運用について」(平成23年4月4日)という通知もあります(*2)。直接的な被害がなくても、応急仮設住宅に入れるようになったのです。

 しかし、義援金や支援金の支給対象にはなりませんでした。仮設住宅に入るときには日本赤十字から、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、炊飯器、電気ポットの6点セットを支給されるのですが、この男性は対象外でした。

 日本赤十字広報室によると、義援金も6点セットの支給は市町村の審査により、応急仮設住宅を管轄する被災県の要望によるものといいます。そのため、「あくまでも市町村の判断」としています。

 もちろん、災害後の生活をどのように支援するのかは、どこか線引きをしなければなりません。しかし、自治体の運用次第では被災者の定義を弾力的にできるはずです。津波による「全壊」か「半壊」、「一部損壊」の判断も、自治体による差があると感じています。被災した家屋、人だけを見るのではなく、その人がよって立つ共同体がどうなっているのかを見てほしいと思います。

*1  第三条 2  前項に規定する遺族は、死亡した者の死亡当時における配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含み、離婚の届出をしていないが事実上離婚したと同様の事情にあつた者を除く。)、子、父母、孫及び祖父母並びに兄弟姉妹(死亡した者の死亡当時その者と同居し、又は生計を同じくしていた者に限る。以下この項において同じ。)の範囲とする。ただし、兄弟姉妹にあつては、当該配偶者、子、父母、孫又は祖父母のいずれもが存しない場合に限る。

*2  応急仮設住宅について

 (1)「居住する住家がない」ことについて

  ...住家について直接被害がなくても、市町村長の避難指示等を受けた場合など、長期にわたり自らの住家に居住できない場合には、全壊等により居住する住家が喪失した場合と同等とみなすことができること。

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Written by 渋井哲也

Photo by xtcbz

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