先日発生した海上自衛隊輸送艦「おおすみ」と釣り船「とびうお」の衝突事故では、「とびうお」に乗船していた4人うち2人が死亡する結果となった。衝突事故の経緯は調査中で詳細はいまだ判明していないがこの事故の背景にはどのようなものがあるのだろうか? 海運関係者がその背景を語る。
「今回の事故以外でも船同士の接触事故がたびたび起こっているが、どの事故の背景にも小型船舶のモラルの低さがあるのではないか」という。
海上では大型船になるほど喫水線の関係などから通ることのできる水路が限定されることから、回避行動も限定される。それに引き換え小型船は小回りが利き、高速で航行することが出来るため自由度が高い。法令上はどちらも衝突回避の責任は平等だが、大型船は「すぐに止まれない、回避できない」わけで、当然小回りのきく小型船こそ、回避しなければおかしい――しかし、現実はそうではないという。
「とくに瀬戸内海は小型船のマナーが悪いと感じています。『おおすみ』の事故後も船のギリギリを左から追い越す船や、『大型船だから足が遅いから、いけるだろう』と、小型船が突っ込んできて大型船の航路を妨げるような行動をしていて肝を冷やすことが多い」
「おおすみ」の事故が発生した瀬戸内海のような狭い海域だと、多くの漁船が入り乱れ、貨物船、高速船、大型船が狭い水路に殺到することとなる。漁で使うブイが漂っていたり、ほかの船のかげから貨物船が来たり、後ろから高速の船に追われてたりと、一部で「瀬戸内ハイウェイ」とも呼ばれる瀬戸内海の航海はかなり神経を使うものなのだという。そして、海運関係者はつづける。
「以前もイージス艦衝突事故を起こした海上自衛隊が一方の当事者となっていることから、報道も一方的に海上自衛隊側に責任があるかのような報道がなされている印象を受けるが、このような海難事故の背景には一部のモラルを無視した操船があるということを忘れないでもらいたい」
Written by 田上順唯
Photo by 海上自衛隊ホームページより
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