つい先日、子供にわいせつ画像を送らせた上で自分と会うように脅迫した、愛知県警緑署地域課巡査部長・鈴木一史容疑者が、処分保留で釈放となったという記事を掲載した。
※参考記事:『愛知県警巡査部長の「小学生女児強要未遂事件」が児童ポルノ禁止法に落とした闇』
(http://tablo.jp/case/society/news001998.html)
この記事の内容の繰り返しとなるが、特に注目すべきは「子供の自撮りわいせつ画像を送らせた上で、それをネタに強要する」という行為に、児童ポルノ法が適用されていない点である。アイドルDVDや写真集を配達しただけのamazonスタッフが児ポ法幇助で逮捕されている時代だというのに、実に不思議なこともあるものだ。
ところが、これと殆ど同じ内容の事件が発生し、同じく愛知県警が捜査を担当したところ、そちらの容疑者は児童ポルノ法違反で逮捕された。事件の概要は、群馬県の伊勢崎市立第三中学校の教諭・井田啓太容疑者が、LINEを通じて小中学生の少女達に自撮りのわいせつ写真・動画を送らせ、さらに別の少女が被写体の児童ポルノをネット上で公開したというもの。
容疑者が警察関係者だと児童ポルノ法にならず、その他の職業だと児童ポルノになる。 これは法の下の平等という概念に反した立派な憲法違反であろう。
◇◇◇
『日本国憲法 第14条』
1.すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
◇◇◇
この国では政府はおろか警察までもが憲法を軽視しているのだ。これでは権力者が暴走した場合に止める手段がない。 日本という国は、21世紀になっても中世を引きずった発展途上国なのである。 ああ恥ずかしい。もはや必要もないかとは思うが、念のためこの2つの事件の要素を照らし合わせて考察してみよう。
●鈴木一史容疑者(巡査部長)
「小学生の女の子にわいせつな画像を自撮りさせて送らせた」
「入手したわいせつ画像をネタにゆすり、自分に会いに来いと脅した」
→強要未遂容疑で逮捕
→処分保留で釈放
●井田啓太容疑者(中学校教諭)
「小学生の女の子にわいせつな画像を自撮りさせて送らせた」
「入手したわいせつ画像や動画を個人鑑賞用に保存した」
「別の児童ポルノをネットで公開した」
→児童ポルノ違反容疑で逮捕
この2つを算数の公式のように比較してみるとこうなる。
「入手したわいせつ画像をネタにゆすり、自分に会いに来いと脅した」= 児童ポルノ法違反に非ず
「入手したわいせつ画像や動画を個人鑑賞用に保存した」 + 「別の児童ポルノをネットで公開した」= 児童ポルノ法違反
愛知県警の判断によれば、「小学生の女の子にわいせつな画像を自撮りさせて送らせた」までは児童ポルノ法違反にはならないそうだ。また、より悪質なのは、未遂とはいえ自分の元に呼びつけ、実際に少女の肉体に危害を加えようとした鈴木一史容疑者の方だと思われるのだが、まともな理由説明もないままに処分保留で釈放。という事は、井田啓太容疑者もきっと同様の処分が下されるに違いない。井田啓太容疑者は望みを捨てずに頑張って欲しいところだ。
嫌味はさておき、この愛知県警の法律も憲法も無視した身内庇いは、児童保護の観点からすると非常に危険だ。 なんせ相手が警察関係者だと、レイプ被害の危機に陥らされても犯人を裁いて貰えないのだから。それでは同様の犯罪に手を染める警察官や犠牲となる子供が続出することは避けられない。いったい何のための児童ポルノ法なのか。
これまで児ポ法反対派は、法律の内容に問題があり、それでは児童を守る事が出来ないと声を挙げていた。しかしながら、実際は警察のこのような愚劣・卑劣な悪用により、それ以前の問題になってしまっている。まさに予想の斜め下という最悪の展開だが、7月からは単純所持への罰則が加わるため、よりカオスな状況になるだろう。
愛知県警様におかれましては、お願いですから、児童ポルノ法の第一条だけで構いませんので頭に入れていただけませんでございましょうか。
◇◇◇
『児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律』
第一条 この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性に鑑み、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を規制し、及びこれらの行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的とする。
◇◇◇
重ね重ね言わせて貰うが、女児に児童ポルノを撮影させ、それを送らせ、自分の手元に残した上で、さらに女児に肉体的危害を加えようと呼びつけるという行為が 『強要未遂』 だけとは、いったい何のための児童ポルノ法なのか。
「実際に犯された訳じゃないんだから」 という声があるかもしれないが、それにしたってわいせつ画像を撮影させて手元に置いていたのだから、児童を性被害に遭わせている事に違いないし、同様の手口で実際に犯人に会いに行って犯されるなり殺される子供が現れるかもしれない。 そうした犠牲者を未然に減らす事こそが警察の職務ではないのか。
今回の愛知県警の酷いダブルスタンダードは、どの角度から考えても認める訳にはいかない。
Written by 荒井禎雄
Photo by donnierayjones
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