同人作家が乱交パーティを主催して逮捕、その収支には意外な盲点が

2015年07月10日 アダルトビジネス 乱交パーティ 同人作家

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 素人ならではの無知故の暴走としか表現できない頭痛のする事件が起きた。 同人でマンガを描いている20代の男が、ラブホを会場として乱交パーティを主催し、売防法違反の疑いで逮捕されたのだ。

 逮捕されたのは 『Sou Soul』 というサークル名で活動している草人こと樋口武志容疑者(27歳) で、調べによると樋口容疑者は2013年頃からBBSで告知をして、男性客から1人2万円ほどの参加費を取り、風俗嬢の女性を用意し、乱交パーティを主催していたという。警察は過去に約20回、500万円程度の稼ぎがあったとみている。実際に逮捕された際は女3vs男4のハンディキャップマッチ中だったようで、現行犯逮捕だと発表されている。こういう事件を目にするたびに、元AV監督という経歴からどうしても金の計算から始めてしまうのだが、この卑しさは治りそうもないので目をつぶっていただきたい。

●約20回で500万円? 腑に落ちない金の流れ

 さてさて、男達から1人2万円ずつ徴収したということは、総売上は8万円にしかならない。そこから風俗嬢に渡す金とホテル代を捻出すると、仮に女性1人のギャラが1万5千円(×3=4万5千円)だったとして、それにホテル代が加わるから、3万円弱しか浮かない計算となる。それではリスクを考えたら旨味が無さ過ぎるので、警察が言う500万円の売り上げという話は非常に疑わしい。 仮に売り上げが500万円あったとしても、その大部分はギャラとホテル代で消えてしまうだろう。

 そもそも3年間で20回しかやれていないということは、2ヶ月に1回程度のペースだ。 おそらく容疑者の手元には月に2万円程度の、高校生のお小遣いのような金額しか残らなかったのではないだろうか。もし女性のギャラを1万円前後まで下げられれば幾分マシな数字になるのだが、そこを値切ると鶯谷デッドボール案件であり、継続して参加者を集められるかどうか疑わしくなる。

 次に、どうすればリスクと天秤に賭けても実行しようと思えるか考えてみるが、まず月に1回必ず開催することが絶対条件となる。そして男を最低8人(×2万円=16万円)常に集めて、女性は3人(×1万5千円=4万5千円)で固定すると、ホテル代を払っても1回辺り10万円は浮くので、1年続ければ120万円は純利益になる計算だ。これくらいが趣味として続ける最低ラインで、もう少し欲を出すならば男客をさらに増やさねばならない。

 20回で500万円の売り上げというと、平均で1回につき25万円は集めねばならず、利益の元は参加費しかないのだから、常に約13人の客を集め続けないと達成できない数字である。この辺りは警察の発表が少し疑わしいと感じるのだが、実際に容疑者が2013年~15年の間に500万円の売り上げを立てていたのであれば、乱交パーティの様子を撮影し、そのデータをエロ動画サイトの運営会社に売るなどしていたのではないだろうか。

 では続いて「どうすればもう少し上手にヤレたか」という危険なテーマに入るが、何より先にこの容疑者は無知すぎて同情の余地がない。せめてもっと法律の勉強をしてから方法を考えるべきだった。東京BNで過去にも書いた記憶があるが 「性器の露出や出し入れが発生する内容では、男女問わず参加者から金を取るスキームは違法」と考えねばならない。大事な話なので太字にしてアンダーバーまで付けてみたが、これが絶対の大原則である。

 例えばAVでは、素人男性を男優(汁含む)として使う場合でも、必ずギャラが発生する。男優と言わない(女優との接触が一切ない) 役割であっても、撮影現場に入るというだけで、スタッフ・出演者という名目で10円でもいいからギャラを払うのだ。

 ここで素人がよくヤラかすのが「お金を払ってくれれば現場にご招待します」的な方法なのだが、これは間違いなく逮捕される。例えエキストラで女優に触れる機会がなくとも "金を取って性器を見せる場を作る行為"は違法で、罪状はストリップが摘発される場合と全く同じになる。なるべく解りやすく簡略化して説明したので、この部分は絶対に頭に叩き込んでおくように。

 では今回の容疑者に何か抜け道がなかったかというと、実はちょっと面白い方法がある。それが何かと言うと「乱交パーティやります、2万円払うとセックスできます」なんてバカな告知をせず「私が監督するAVに出演しませんか?」にするのだ。

 そして上で説明したように、現場に入る人間には男も女もギャラを払う。男性の方は10円でもいいが、理想を言えば、そして共犯意識を持たせて口止めするためには、1,000円程度の交通費は渡しておいた方が無難だろう。そして撮影したデータをその辺のAVメーカーに持ち込んで実際に発売して貰い、AVメーカーが普段やっていることと同じことをするのだ。これならば今回の容疑者がアウトだと言うならば、他のAVメーカーも全てアウトという話になる。

 ただし、これでは儲けにならない可能性が高い。素人が撮影した乱交物のデータなど、二束三文でしか買い取って貰えないからだ。では何で儲けるかというと、ここで彼の同人作家という肩書きに意味が出てくる。まず自分のサイトを有料化する。そして有料会員を募り、あくまで "マンガ家である彼を支援する" という名目でお金を集める。有料会員にはイラストや同人マンガのデータなど絵を使った限定コンテンツを提供し、忘れずに鍵付きのBBSなども設置しておく。そこまで準備が済んだらやっと本番だ。定期的に有料会員限定のBBSで「私のAVに出ませんか?」と告知をし、会員番号を持っている人間だけを現場に案内するのである。

 ここで気を付けたいのが「乱交パーティに参加する為には月額料金を払わねばならない」となってはアウトという点だ。 あくまで乱交パーティはAVの撮影であって、それで金を取る訳ではないと言い張れる形にしなければならない。 よって「有料会員になれば乱交できますよ」と自分でネットで言いふらすなど、自殺志願者のバカがやることである。せっかく乱交以外のコンテンツを用意できる "同人作家" という肩書きが活きるのだから、もう少し賢くなろう。

 ではこのようなスキームを組んだ場合の売り上げを考えてみよう。

[収入]
・月額料金=2,000円
→目標会員数50人(10万円/月)

・撮影データの納品
→1本につき2万円

※完全買い取りでこの値段。 これ以上の金額では買い手が付かない。

[支出]

・女性へのギャラ=4万5千円(1人1万5円で3人用意)
・男性客へのギャラ=5,000円(1,000円×5人)

・ホテル代=1万円

※大人数で押し掛けられるホテルがあるかどうかは別問題。

 これならば、月1本撮影するとして、収入が12万円あり、支出が6万円なので、月に6万円は浮かせられる。 しかも法律の面でも何もしないよりは遥かに安全だ。 さらに撮影日以外の労力は大した話ではないので、週に3回でいいからコンビニの夜勤でもやれば、6万円+8万円(時給1,000円として、22時~5時までの7時間労働で7,000円×週3日で21,000円、これを単純に4倍して約8万円)に、同人活動の売り上げなどが加わって、最低限の生活はできるだろう。 実家住まいならば家に金を入れたって貯金まで可能だ。

 ところで、上の数字ではAVメーカーへの素材売りの金額が低すぎると感じるかもしれないが、それは素人が撮影した使いどころの少ない映像な上に、1万5千円でやって来る風俗嬢ではビジュアル的に販売本数が期待できないという点が最も大きな理由である。 それに加えてモザイク編集をメーカーにやって貰い、さらに倫理団体の審査料も払って貰う必要があるため、これくらいの金額じゃないと買い手が現れないのだ。

 逆を言えば、素材の編集をメーカーのOKが出る程度に自分でやれて、さらにモデルの質(3人中1人でいい) に気を遣えるのであれば、この金額はもっと大きくできる。 自分のスキルが高まれば高まるほど、どんどん食えるようになって行くスキームだと言えよう。 もしメーカーが素材を5万円くらいで買ってくれるようになれば、コンビニの夜勤を週2日程度に減らせるぞ。

●割に合わない乱交パーティー、素人は裸商売に手を出すな?

 ただし、このままでは未来がないので、理想を言えば最初は月に数万円浮かせるのがせいぜいの形で始めて、同じメーカーと何度かやり取りを繰り返す中で、メーカーにスタッフを用意して貰えるようになりたい。 メーカーならばプロダクション所属の仕事がない安い女優を用意することもできるし、素材のクオリティが段違いに安定する。 そうなれば販売本数も良化するので、1本当たりの監督料もコンビニの夜勤を辞められるレベルになる。 そこまで行けば "同人作家" から "乱交物専門のAV監督" という肩書きにスライドすることさえ可能だ。

 ただし、それでは完全にAV業界人になってしまうので、とどのつまりは「素人が裸商売に手を出すな」という結論に至るのである。最低でもこれくらい "絵が描ける" 人間でなければ、セックスを売りにする商売など不可能だと知ろう。

 ちなみに、この記事では重要な点を何箇所か省いているので、これをこのままやってもおそらく上手く行きませんのであしからず。

Written by 荒井禎雄

Photo by FlashBuddy

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