みんな大好きゴールデン街
観光庁がインバウンドの切り札として、ナイトタイムエコノミー活性化を目指す......そう打ち出したのは今年頭のことだ。要するに「外国人観光客を夜の街で飲み食いさせて消費を伸ばそう」ということだが、東京でその恩恵を一番受けているのは東洋一の歓楽街・新宿。特に歌舞伎町であろう。
いまや、東京を訪れる外国人観光客たちにとって、ゴジラヘッドや東京ミステリーサーカス(脱出ゲーム)、そしてお馴染みロボットレストランなどはマストのスポットになりつつある。
そんなマストの中心とも言える場所のひとつに新宿ゴールデン街があるが、つい最近、外国人観光客(?)を巡るトラブルがあり、かの街の住民たちにささやかな波紋を投げた。
ゴールデン街の店と言えば、昭和レトロのモルタル作りが有名で、路面店のドアは真冬以外解放されているなど、観光客には開放的な雰囲気を醸し出している(反対に完璧なまでにクローズしている店もあるが)。ところが、そのフレンドリーな対応を悪用したのだろう、とある店舗の開放されている小窓から体を乗り出し、客のバッグをひったくっていくという事件が起きたのだ。目撃者によると、ラテン系の男性だったという。
知る人は知っているが、ゴールデン街は昭和レトロの雰囲気そのまま、良くも悪くもどこか村社会的な規範に包まれた街でもある。これまでトラブルと言えばせいぜい客同士のケンカ程度で、新宿という大繁華街にありながら、治安は保たれてきた。それだけに、「小窓から店内に身を乗り出して物を盗む」などという、荒業が起きたことに少なからずショックを受けたのだ。
もちろん、村社会であると同時に「寛容性」という新宿らしさも強く持っている場所ではある。仲間内の注意喚起を促すという程度で、ことを大きくするような騒ぎはしていないが。
実は筆者もゴールデン街からすぐ近くの飲食店で外国人とのトラブルを見かけている。大声を出しながら、男性3人連れで入店してきた彼らは、コンビニ袋から出した菓子をテーブルに広げると生ビールをオーダー。ゴミはすべて床に投げ捨てた上、なんと料金を支払わずに店を出て行ったのだ。女性店員(アジア系だった)が慌てて追いかけていったが、彼らは彼女を威嚇するがごとく怒鳴りつけ、悠々と夜の歌舞伎町に消えていったのである。
為念言っておくが、このような外国人はごく一部であり、そのほとんどが純粋に観光を楽しむ人たちだ。ゴールデン街も同様である。また、新宿という街が多様性で成り立っている以上、外国人観光客への窓口を広くするのは当然かつ、宿命的なことだろう。筆者もまたそれを支持する。しかし、大切なのは、キレイごとだけで成り立つほど世の中は甘くない、ということ。今後は、よりタフな対応も必要になってくるであろう。(取材・文◎鈴木光司)
【関連記事】
●いま午前中のラブホテルには「あの人たち」でいっぱい!? 子どもには聞かせられない性の話
●受動喫煙防止法成立は良かった! この際だから言いますね「煙、無理なんですよ」|久田将義