『なんでんかんでん』店主が激白! 「ラーメン屋なんてもう儲からない!」「スープは工場から仕入れてる店がある!」|なぜ流行ってるラーメン屋は偉そうなのか・第二弾
現在、年間6000軒が開業し、5000軒が廃業するともいわれるラーメン専門店。トレンドの移り変わりが早く、ラーメン評論家や素人のラーメンマニアが跋扈し、新規店が開業すると、その瞬間にレビューがネット上で公開される。その実態について、90年代に「環七ラーメン戦争」の火付け役になったといわれる、有名店「なんでんかんでん」の店主、川原ひろし氏に話をうかがった。
ーーなぜラーメンだけがこんなに取り上げられるのでしょう?
この時代のラーメンは、味噌、醤油、塩、豚骨から坦々麺、五目あんかけ、つけ麺までいろんな種類があり、それぞれ個性が面白いので、メディアで取り上げられやすいんでしょう。でも、もうメディアからもあまり相手にされなくなってます。本も売れないし、視聴率も取れないんです。
その証拠に、最近のラーメン博なんかを見てもわかるけど、今話題を作るには、創作ラーメンというのかな? 見ため重視で、味よりも驚き、お得感が重視されるようになってきています。ハッキリ言って、この業界のブームもいよいよ終焉。早い話、ネタが出尽くしてしまったということでしょう。やはり、ラーメンはシンプルであって、スープで勝負しないとダメです。
ーー天然素材の無添加ラーメンや自家製麺など、こだわりを売りにしてる店も多いのですね。
それは何の自慢にもなりませんね。ガラス張りで製麺機を見せる店もあるけど、普通はオープン前にどこか店の端っこで作るだけだから。あと利尻産の昆布だとか、水にこだわってるとか、それを謳い文句にしてる店もあって、実際、私の知り合いにもいたけど、その店もすぐ潰れたもんね。お客様はそこまでこだわってないということですよ。
それより、もっと驚く現象がこの業界の常識になりつつあるんです。近年、新規オープンした店の多くがスープを工場から仕入れているの。要するに「店でスープを作ってない」ということ。「どこどこの店と同じようなスープを作ってほしい」と頼むと、そこそこ似たようなスープを入手できる。私は30年間、店でスープを炊いてきたので、残念な気もするけど、否定はしない。なぜならば、スープ工場のレベルも上がっていて、正直「美味いい!!」なんです。
近年、ガラの値段も上昇しているので、スープを工場から仕入れることで「スープの味が安定する」「近隣と臭いの問題でのトラブルが減る」「ゴミ代の節約」「冷房も効いて快適」「人件費の節約」「職人が辞めても問題なし」といいことずくめ。なんといっても、昔のようなインスタントっぽいスープでなく、本当に炊いているので本格的。これからますますラーメン業界の常識になってくると思うよ。ただし、繁盛するかどうかは別問題。繁盛させたかったら、私に問い合わせ下さい(笑)。
ーー社長の影響からか、ラーメン屋は当たればデカイというイメージがありますが。
どんな商売でも、ズバ抜けて当ると儲かります。飲食店の成功って何を基準に成功なのかわかりません。繁華街の一等地や、隣に東京ドームのようなイベント会場があって、常に人が流れてくる、そんなラッキーな場所で店をやっている人はわずかですし、お金もかかる。ただ場所に救われているだけです。
なんでんかんでんは、駅から遠く人通りのない住宅地でした。夜間のみの営業で、わずか13坪の店。にもかかわらず、年商3億円を売り、十数年に渡って日本一の売り上げでした。90年代から2000年代は、なんでんかんでんや「マネーの虎」に影響を受けて、創業された方が多かったようです。確かに時代と豚骨スープという珍しさも重なって、なんでんかんでんは有名になりました。豚骨醤油の店ですら、当時は存在していませんでした。でもこの時代になって、多くの飲食店の経営者が「儲からない」と言っています。
ラーメン自体が美味しかったのはもちろんですが、私が成功したの一番の理由は、私自身が一番のおすすめ商品だったからです。特に接客には特別に力を入れていたし、世界一お客様に優しくし、大切にしました。お恥ずかしながら、当時、なんでんかんでんの社長は日本一の接客の天才と言われ、全国からサービス業の方が見学に来たほど。そして、目立ちたがりの精神は、どの店の人にも負けませんでした。
「こな落とし」の命名、「プリントのり」の開発、「有名ラーメン店のインスタントラーメンの発案」など数々の話題作りに挑戦してきました。TVの出演は1500回を超えていて、今も月3~5本のバラエティー番組に出演させていただいておりますが、これからの時代にラーメン店として有名になるのは難しいと思います。でも可能性は大ですので、頑張ってほしいですね。
ーーウンチクや変なポエムを店に貼るラーメン屋ってどう思います?
多少のハッタリは大切だと思いますよ。ウンチクなんてハッタリですから。「おまえは相田みつをかよ!」って、店主の名言(?)を書いてる店も多いけど、そんなことより、本当にお客様に感謝する心を持ったほうがいいですね。私は一人のお客様に対し10回もありがとうって言ってましたし、今も1日1万回「ありがとう」って声を出して言っています。今年、「ありがとう大學」というのを立ちあげました。
味やうんちくよりも、心からお客様に感謝する心を経営者が持つことが大切です。あとは、従業員教育。これが一番難しいですが......。
ーーラーメン評論家が増えましたが、なぜみんなラーメンを語りたがるんでしょう?
外国人から「日本人はTVや雑誌でもFacebookでも食い物のことばっかり考えてる」「もっとこの国が抱える問題を考えてもいいのでは?」と言われたことがあります。たしかに。日本が平和だという証拠なのかもしれませんが......私もまったく同感です。だから、ブログや番組でも食べることばかりやっているのでしょうが、国民が幼稚化しているのです。一番幼稚化しているのが政治家です。食うことしか考えてないヤツが、ラーメン評論家なんかになると思っています。
ラーメン評論家のI・Hなんて、ウチの店を悪く言ってたから説教して、引きずり倒してやったことがあります。私の知り合いの店によると、I・Hが1回も来てないのに評論を書いてたとのこと。人に取材させて、自分で食ったように評論してたのではないかと思います。ラーメン評論家って私は大嫌いです。彼らの評価で店が潰れることだってあるわけだし、味は好みであって、気安く評論家に点数をつけられる筋合いはないのです。自分でまずいと思ったら行かなきゃいいんです!!
ーー信用できるラーメン屋を見分けるポイントは?
繁盛している店は、外に置いてる麺の箱の数で判断できるっていう噂もあったけど、あれも嘘っぱち。私は接客がひどい店は行かないようにしてます。
ラーメン屋の親父でタオル巻いて腕組んで、偉そうにしている人いますが、ラーメン屋なんて偉そうにする商売じゃないです。私の中での商売は「笑売」であり、「SHOW売」です。お客様に喜んでもらえるかです。
前述しましたが、これからの時代は業務用スープのラーメンが主流になって来ます。それだけに味だけでなく、人間性が求められるのです。
ーー店全体の雰囲気や接客が一番重要、だと?
そう。飲食店ですから。飲食店はエンターテイメントであり、レジャーなんですよ。マネーの虎でいつも言ってたけど、「接客は積極!!」、所詮はラーメン屋。日本は学歴社会、東大とか行ってる頭のいいヤツには勝てないんだから。私はそう思ってますよ。
PROFILE
川原ひろし(かわはらひろし)
1964年3月13日、博多生まれ(53歳)。歌手を目指して上京し1987年にとんこつラーメン店「なんでんかんでん」を開業、人気店へ成長させる。環七ラーメン戦争の火付け役として知られ、2001年からTV番組「マネーの虎」などTVに数多く出演。
現在は歌手、タレント、催眠師として活躍。講演会、セミナー講師としても引っ張りだこ。今は、暇な飲食店を忙しくしてあげたいと、これまで明かさなかった「運気が上がる繁盛接客術」を伝授している。2012年には「なんでんかんでん」本店を閉店したが、2018年に復活を予定。川原社長の活躍は「なんでんかんでん」で検索!
取材・文◎N.A.B.E.