スクエニ本社を家宅捜索「ハイスコアガール」問題の不可解な経緯

2014年08月06日 スクエニ ハイスコアガール 偽装疑惑 家宅捜索

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Photo by ハイスコアガール 公式ファンブック KAJIMEST

 

 アニメ化が決定している人気マンガを巡って大騒動が巻き起こっている。 騒動の元になったのは、月刊ビッグガンガン(スクウェア・エニックス)に連載中の『ハイスコアガール』で、アーケードゲームを題材にしたラブコメだ。"スト2"などの懐かしい作品が多数登場する事もあり、アラフォー世代の元ゲームキッズを中心に人気が広まり、アニメ化にまで漕ぎ着けた注目の作品である。

 さて、この作品はゲームを題材とするだけあり、作中にゲームのキャラクターやプレイ画面(の絵)が頻繁に登場する。"待ちガイル"や"投げハメ"など、かなり正確な描写がされており、作品を知っている人間ならパっと見て解るレベルだ。

 このマンガの単行本には (c) の表記と、作中で使用したゲーム及びゲームメーカーの名称が記載されており、一見するとゲーム業界から好意的に受け取られているのだなとも思える。ところが、このマンガは全くの無許可で他社のゲーム画面やキャラクターを使用していた疑いが持たれているのだ。(捜査中なので疑いと書かせていただきます)

株式会社スクウェア・エニックス等に対する刑事告訴について

(http://www.snkplaymore.co.jp/pdf/140806_1.pdf)

 この問題が表面化したキッカケは、SNKプレイモア(餓狼伝説やキングオブファイターズで知らスクウェアれるゲームメーカー)がスクウェア・エニックスを著作権法違反容疑で告訴した事だ。 これによって、大阪府警がスクウェア・エニックスを家宅捜索し、事件として大々的に報道されるに至った。

 ここで問題になるのが「原作コミックに(c)表記があった」という点である。個人的な願望としては「実はSNKプレイモアの担当者が口約束でOKを出してしまって、後任にその引き継ぎができていなくて~」的なユルユルな展開を望みたいところだが、現時点ではスクウェア・エニックスが「解ってやってた」と判断するよりないだろう。

 許可を得てもいないのに得たと言い張り、社会的に踏むべき手続きを一切無視してマンガを売り続けていたのだから、著作権侵害の中でもかなり悪質だと看做されておかしくない。スクウェア・エニックスは自身もゲームメーカーだというのに、どうしてこんないい加減なやり方をしてしまったのだろうか? この点がどうにも不可解である。

 『ハイスコアガール』は毎回他社のゲーム画面が出て来るような内容なのだから、編集部の人間が連載開始にあたって前以て各ゲームメーカーに使用許可を得ていないとおかしい。先にマンガの内容を説明し、包括契約でも持ちかけていれば、作品の内容はゲーム業界にとって良い物なのだから、SNKプレイモアも「いいよいいよ」で好意的に話を進めていた可能性まである。

 ところが、今回の一件は昨年の時点で問題が発覚しており、SNKプレイモアがスクウェア・エニックスに苦情を入れ、両社の間で交渉が続いていたそうだ。 しかしその最中にスクウェア・エニックスがアニメ化を発表。交渉でどうこうなるレベルではないと判断したのか、今年5月にSNKプレイモアがスクウェア・エニックスを告訴したという流れである。SNK側からの苦情で話が始まってしまっているので、スクウェア・エニックスとしては言い訳のしようがない。しかも(c)偽装というオマケ付きである。

 ついでに言うと、『ハイスコアガール』はカプコンやバンダイナムコといったメーカーとは提携状態にあるらしく、それらとのコラボグッズの制作・販売も行っている。ならば、なおさら「なんでSNKプレイモアに対してこうなった?」という疑問が出てしまう。

※ 参考URL

http://www.jp.square-enix.com/magazine/biggangan/introduction/highscoregirl/

 SNKプレイモアが気付いた時点で、すでにアニメ化やその他の展開が決まっていたのかもしれないが、であれば尚更この手の揉め事は全力で回避すべきだった。この騒動のせいで、現時点では『ハイスコアガール』は絶版になってしまう可能性が高く、そうなればアニメ放映も中止になるだろう。その場合のスクウェア・エニックスが被らねばならない賠償金の類はいったいどれ程になるのだろうか?

 さて、この騒動はスクウェア・エニックスが家宅捜索を受けただけでは収まりそうにない。すでに現時点でワンフェスに出展予定のディーラーが、SNKプレイモアに許諾を貰えなかったという話が出ている。これはSNKプレイモアが厳しくなったというより、今は捜査協力中で担当部署がそれどころじゃない事に起因していそうだが、万が一のために二次創作の類には気を付けた方が良いだろう。今回の『ハイスコアガール』はエロ描写などなく、年齢制限のないコンテンツであった。それでも権利侵害をするとこうなるという答えが出ているのだから、同人業界特有のグレーゾーンに甘えるべきではない。しばらくの間は何が起きても不思議ではないと考え、まずは著作権・二次創作に関する法律の勉強をすべきである。

 それにしても、賠償金狙いなら民事でも良かったろうに、わざわざ刑事告訴するとは、SNKプレイモアはそれだけスクウェア・エニックスに対して本気で怒っているという事だ。社会的制裁を加えないと収まらないところまで話がこじれてしまったのだろうが、スクエニ側はいったいどんな交渉の仕方をしたんだろうと気になって仕方がない。

 今回の騒動で最も救いがないのは、多くの人に作品を愛して貰っていたのに絶版もやむなしの状況に追い込まれた押切蓮介氏と、ハイスコアガールの読者達である。

Written by 荒井禎雄

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