佐世保JK同級生殺害事件で、殺人の疑いで逮捕された少女(16、逮捕時15)の親が事件前日(7月25日)、児童相談の窓口に電話していたことがわかった。しかし、時間外だったことから宿直担当者は「職員は勤務時間外で退庁した」と伝えていたという。この事件に限らず、普通の一般市民は、役所の勤務時間内に電話をすることが難しい人がたくさんいる。相談窓口の人員不足を解消し、体制のあり方を見直さないと、類似の事件が繰り返されるのではないだろうか。
共同通信社が県の関係者の話として伝えているのは、親が7月25日午後6時半ごろ、佐世保子ども・女性・障害者支援センターに電話しているというもの。しかし、退庁したことを知ると、「月曜日にかけ直します」と電話を切った。少女を診察した精神科医の助言だったとみられている。この精神科医も6月10日、窓口に相談している(日経新聞、8月3日)。
事件前に相談していたと聞くと、2000年5月3日の起きた西鉄バスジャック事件を思い出す。西日本鉄道の高速バスを刃渡り40センチほどの牛刀を持った17歳の少年がバスジャックした。二人が負傷。68歳女性1人が死亡した。日本のバスジャック事件で人質が死亡したのは初めて。
少年は「ネオむぎ茶」というハンドルネームで犯行前にインターネットの匿名掲示板2ちゃんねるに書き込んでいた。中学校でいじめにあったものの、学校や教育委員会はいじめの事実をみとめなかった。入学した高校も9日登校しただけで中退している。
大検を目指すようになった少年だが、家庭内暴力はさらに悪化した。親が警察や精神科病院に相談したが、事件を起こしていない段階では対処出来ないとされてしまう。その後、親は当時メディアによく出ていた精神科医町沢静夫氏に連絡を取る。結果、国立肥前診療所が少年を医療保護入院をさせた。このころ、2000年5月に起きた豊川市主婦殺人事件で、逮捕された17歳の少年が「人を殺してみたかった」と供述していたことを知り、彼のようになりたいと少年は手記を書いている。しかし、手記を知らない診療所は外泊許可を出す。そのときに事件が起きた。
事件が起きるときは、社会的サポートが欠如しているときに起きたりする。西鉄バスジャック事件は外泊許可ができ、一時的にサポートが途絶えたときだ。一方、佐世保事件では、サポートや介入をする直前、模索段階だった。行政は土日は休みであり、平日でも午後5時以降は窓口は原則対応しない。こうした「時間外」の相談については、様々なサポートの現場で批判をよく聞く。時間外の相談について、今後、見直さないと同じような事件が繰り返されるかもしれない。そのためには、不足している窓口の人員を増やすべきだろう。
Written by 渋井哲也
Photo by Rachel.Adams
【関連記事】
●【佐世保同級生殺害事件】加害者が遺体を切断した類似事件から考察
●【佐世保同級生殺害事件】加害者少女の家庭環境と生きづらさを考察
●【佐世保同級生殺害事件】加害者少女に「命が大切」という教育は届いたのか