世紀のリマッチ ボクシングミドル級『カネロvsゴロフキン』は明らかなカネロ勝利

2018年09月17日 カネロvsゴロフキン ボクシング ミドル級 世紀のリマッチ 村田諒太

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 2017年9月15日、世紀の対決、「GGG」こと世界WBAスーパー・WBC世界ミドル級王者ゲンナジー・ゴロフキンと世界二階級制覇サウル・「カネロ」・アルバレスの試合が行われました。結果、ドロー判定。二人はこの判定に当然、不満タラタラでした。ファンも完全決着を望んでいました。

 1年後の9月15日、世紀のリマッチ。僕は初戦でのドロー判定は仕方ないか、カネロが僅差で勝ったぐらいの見方をしていました。が、展開はカネロからしてみれば不本意で、ゴロフキンからすれば、「思い通りの戦いをしたのに、なぜ俺が勝っていないんだ」という内容でした。

 すなわち、

1 カネロはミドルレンジでもロープを背負っても勝ってきたテクニックを持っている。カネロは短距離、中距離、長距離でも戦える。

2 ゴロフキンは決して下がらず、ジャブをつきながら前進してリズムをつけて、相手を倒してきた。というより、下がって戦ってはいけない選手。

3 ゴロフキンが前進するも、カネロは自分の戦い方でもある、下がりながらパンチを出す。結果、ゴロフキンのリズムになり、ゴロフキンは自分のボクシングが出来たと思っていたはず。ファンもそう感じていた。ゆえに判定に物議をかもす。
 
 という構図でした。
 これを踏まえて、カネロは三つの戦い方のうち、一つに絞ります。「ゴロフキンが出てきても下がらない」事。すなわちショートレンジでの打ち合いを望んできました。ゴロフキンにリズムをつけさせない作戦でした。
 カネロはブロックの上からも構わず、叩き、リズムを作る選手です。従って、ブロッキングが上手くても結果、敗ける選手が多いです。
 彼のリズムを崩すには空振りをいかに多くさせるか。唯一の敗戦、フロイド・メイウェザーのような戦いです。歴戦の雄、ミゲール・コットでさえもブロックしても、上から打たれダメージを負いました。コットはダメージを負いながら、そのように見せない足の使い方は見事でしたが、判定負けでした。
 ゴロフキンは今回もジャブ中心の自分のボクシングでした。現ボクシング界ではストレートのような世界一のジャブ。それで勝ってきたのですから、この戦い方を磨き、カネロ戦に望んだと思われます。

 逆に、カネロは前述のとおり、作戦を立ててきました。1Rはゴロフキンがジャブをついて様子を見ます。カネロは手数を出さなかったので、このラウンドはゴロフキンでした。カネロは距離感を確かめていたように思います。
 2Rから、カネロがエンジンをかけます。下がらない戦い方で挑んだカネロの、ミドルレンジで放った左ロングフックがゴロフキンの顔面右をとらえます。その後、ゴロフキンの右目下が腫れます。それでもぐらつかなかったのはゴロフキンの驚異的タフさでした。
 3R以降、WOWOWでは元・現世界チャンピオンの解説者たちが「おーっ」と声を挙げるような、カネロの左ボディがゴロフキンをとらえます。解説の現WBA村田諒太選手が「カネロの作戦は見事」と言ったように、次第にカネロが初戦と戦い方を変えてきた事にファンも気づきます。

 ゴロフキンは前進を止められ、リズムを崩します。中盤、既にゴロフキンの呼吸が荒くなり、「ゴロフキンがKOされても仕方ない」とWOWOW解説者に言わしめるほどの苦戦。ジャブはカネロに当たってはいるのですが、同時に左フック、左ボディを出すカネロにゴロフキンは何を出せば分からないように見えるほど、後退を余儀なくされました。

 しかし、中後半、カネロが打ち疲れのようになった時、ゴロフキンは意地を見せます。荒い呼吸のまま、闘志の左ジャブ、右ストレートを連打。下がりながらも手数を止めません。ゴロフキンの意地は見事でした。
 顔面をとらえ、カネロがボディワークでパンチを何とかかわした場面もありました。

 ラウンドが終わり、コーナーに座るゴロフキンの顔に疲労がありありと見えます。しかし、後半は何とカネロにも疲れの表情が浮かびます。中盤で「このままいけば判定でもカネロ。KOもあり得る」と思っていましたが、後半勝負にもつれ込みました。今までの(と言ってもカネロの対戦相手は世界チャンピオンクラスばかりですが)ボクサーなら、スタンディングダウンを取られてもおかしくない試合を最後まで立っていたゴロフキンの闘志は素晴らしかったです。


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 以前、辰吉丈一郎元WBDバンタム級王者が、日本ボクシング史上に残る名勝負と言われる薬師寺保栄戦の後、「顔を見ればどっちが勝ったか明らか」という主旨の発言をした通り(辰吉の顔が腫れあがっていた)、カネロvsゴロフキン戦も両者の顔を見れば明らかだったのではないでしょうか。

 ここで注目されるのは、WOWOWの解説者を務めた村田諒太選手の世界王者防衛戦です。ゴロフキンと村田の対戦が帝拳プロモーションの興行によって日本で出来る可能性が少なくなりました。カネロを呼ぶほどの資金力のある事務所は残念ながら日本国内にはないでしょう。別の資本が入るのなら別ですが。

 村田選手はもし、カネロと対戦するのなら得意のブロッキングにプラスして、スウエーなどを多用してカネロの空振りを誘う方法がよいとは思っています。

 いずれにせよ、世紀のリマッチの名の通りの激闘でした。カネロのパウンドフォーパウンドの順位も上がるでしょう。現在はクロフォードだと予想しますが。(文◎久田将義)

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