2018年12月1日から「新4K8K衛星放送」の実用放送がスタートします。その流れを受けて、家電量販店では4Kテレビが売り場を席捲中。シャープやソニー、パナソニックなど、大手国産メーカーの新モデルがずらりと並んでいる様子は壮観です。
そんななか、量販店の売り場を歩いていると海外メーカーの4Kテレビも見つかるのですが、あまりプッシュされていないような印象を受けました。国産メーカーより安いし、画面も普通にキレイだと思うのですが、日本人の多くは「やっぱり海外メーカーはねぇ...」というイメージが根強いのでしょうね。
そこで、今回は液晶テレビのデータについて調査してみました。
<グラフ1>出典はBCN調査「BCNランキング」のデータより。筆者がグラフ化しています(クリックで拡大)
まず、グラフ1は国内の主要な家電量販店やネットショップの実売データを集計するBCNが発表した薄型テレビの国内シェアです。
一番売れているのがシャープで、約3割のシェアを握っています。そして、パナソニックが20.1%、ソニーが15.9%、東芝が12.1%という国内大手メーカーが続き、ようやく中国のハイセンスがランクイン。つまり、日本では国産メーカーが圧倒的な強さを誇っています。
しかし、世界市場で見るとこの状況は一変してしまいます。
<グラフ2>ウィッツビュー「Shipments Forecast of Global TV Brands in 2017 and 2018」(2017年12月)のデータをもとに、筆者がグラフ化しています(クリックで拡大)
グラフ2は世界における薄型テレビの出荷台数をメーカーごとにまとめたもので、韓国のサムスンが4295万台と圧倒的なトップ。世界シェアは20%を超えていて、他の追随を許さないトップメーカーです。
そのサムスンと同じ韓国メーカーのLG電子が2830万台でシェア13.4%で2位。次に中国のTCL(1434万台・6.8%)、ハイセンス(1280万台・5.8%)と続き、ようやく日本のソニーが1225万台、シェア5.8%で5位にランクインしました。
また、イギリスの調査会社であるHISマークイットが2018年上半期の世界テレビ出荷台数に関するレポートを発表しています。そこでのシェア(売上高ベース)においても、サムスンが29.0%でトップ。他のメーカーはLG電子が17.5%、ソニーが9.7%、ハイセンスが5.7%、TCLが5.6%という結果でした。
<グラフ3>出典は「平成26年版情報通信白書」(総務省)より。
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc122250.html 以上のデータをもとに、筆者がグラフ化しています(クリックで拡大)
グラフ3は世界市場のメーカー別シェアについての変遷を示したデータです。2008年はサムスンに続いてソニーが2位、シャープが3位と、日本メーカーもかなり伴ばっていました。
しかし、わずか5年後の2013年になると、ソニーはLG電子に抜かれて3位。シャープはTCL、ハイセンス、Skyworthという中国メーカーにも抜かれて7位に転落しています。
ちなみに、液晶パネルのシェアについても韓国、中国メーカーは圧倒的で、日本メーカーは後塵を拝しているような状況です。とくに有機ELパネルについてはLG電子が100%近いシェアを持っていて、ソニーやパナソニックなどの国産メーカーもLG電子からパネルを買っているんですよね。つまり、薄型テレビの日本市場では振るわなくても、LG電子が全く儲かっていないかといえば、全然そんなことはないわけです。
これらのデータを見ていると、ガラパゴス化している日本のケータイ電話の歴史を見ているような気分になりました。
実際、日本の薄型テレビは「価格」よりも「高性能」に、なおかつ日本人が使いやすいインターフェースに重きを置いているような印象です。このまま世界的な標準から大きく乖離していき、いつの日か世界市場のなかで日本メーカーの名前を見なくなるなんてことがないといいんですが...。(文◎百園雷太)
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