「ネットウヨク論」第6回:インターネットで情報収集する際の基礎知識「できる限り感情を捨てて情報に接しよう 」補足1

2013年08月11日 IT シリーズ ネットウヨク

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『国を傾かせるほど情報リテラシー能力のない政治家たち』

 前回の記事で「情報に接する際はなるべく感情を捨てよう」とは言ってみたものの、それが出来ていないが故に、国を傾かせるおそれのある人種がいる。それが誰かと言うならば、ズバリ日本の政治家達だ。 

 こう言うだけでは新橋のガード下の酔っぱらいオヤジと何も変わらないので、"直接自分が関わった案件だけ"を取り上げて、日本の政治家の情報リテラシー能力の欠如がいかにマズイか指摘(糾弾?)しようと思う。

 「情報と感情の切り分けが上手く出来ない!」とお嘆きの貴兄は、それほど恥じる事はない。なんたって日本を動かす上流階級のお家にお生まれになられあそばされた政治家様達ですらこの有り様なんだから......。

※繰り返しになりますが、今回は事が事なので、自分が直接体験した話題しか取り上げません。政治思想的な問題ではなく、情報精度と情報に対する責任の問題ですので、内容が偏ったとしてもご容赦ください。

 さて、初っ端からきな臭い話題になる。2000年代の前半頃、私はジャーナリスト有志で構成されたライブドア問題追求チームの末席にいた。矢面に立ってリスクを背負い込んだのは二階堂.com(http://www.nikaidou.com/)で、彼の周囲に集まったジャーナリスト・記者らの殆どは名を隠し、各々が得意分野で情報収集していた。私はその中で、当時まだ専門家と呼べる人間の少なかった"インターネット業界"や、サブカル・AV業界などのネタを受け持ち、主にさらわれる心配のない小ネタを一生懸命集めていたのである。(地雷を掘り当てた場合は誰かに押し付けて逃げる的な立ち回りもあったりなかったり)

 そして皆さんご存知の通りライブドア問題は事件化され、ホリエモンらが逮捕拘留された訳だが、その頃(たしか2006年1月頃)に二階堂を中心としたライブドア問題追求チームに対し、とある政党から情報提供依頼が回ってきた。危ない話なので絶対に政党名は出せないが、まだもう少し長生きしたいので何があっても名前は出さないが、お前らが何と言おうと名は伏せるが、自民党(及び小泉)の引きずり下ろしに躍起になっていた民主党からである。



 さて、当時がどういう状況だったか振り返ってみよう。2006年の初め頃といえば、小泉内閣がいわゆる"4点セット"(※)によってピンチに追い込まれていた時期である。

※自民党追求4点セット

1:官製談合事件(防衛施設庁)

2:BSE問題~牛肉輸入問題

3:耐震偽装事件

4:ライブドア事件

 これらの内、ライブドア事件に関する情報をくれというのが民主党からの依頼内容だったのだが、中でもホリエモン出馬騒動に絡む、ライブドアから自民党への金の動きについて何か情報がないかという決め打ちがされていたようだ。

 実は我々のチームも、2005年の段階でライブドアから自民党への金の流れに関しては手を尽くして調べていたのだが、証拠と呼べる代物には辿り着けずにいたのである。よって、平野貞夫氏→小沢一郎氏というラインで「決定的な証拠があがって来ていないので、ライブドア事件はいったん忘れて、確実な残りの3点セットで攻めた方がいいですよ」と伝えるのが限界だった。(この辺の詳しい話は平野貞夫氏の元公設秘書(http://tamakoro.no-blog.jp/tama/)がよく覚えているはず)

 ところが、民主党は何が何でもライブドア問題でヤリたかったらしく、どう考えても正攻法の(しかも確実に勝てる)はずの『官製談合・BSE/米国牛肉輸入問題・耐震偽装事件』の3点セットを傍らに置き、よりによってライブドア問題1本に絞るかのようなそぶりを見せ始めたのだ。更には「別ルートで決定的な証拠を入手しましたので、もう結構です」とまで......。



 そうです、永田議員(当時)の偽メール騒動の始まりです。

 民主党が2006年2月の衆議院予算委員会で公表した"送金メール"のネタを最初に耳にした時(予算委員会の少し前)に我々が何を思ったかというと、まず「ついに出たか!」である。また正直に言えば「先を越されたか!」という気持ちもあった。しかし仲間内でディスカッションする内に、次第に「そのネタってガセじゃねえか?」という思いが膨れ上がっていった。

 というのも、あの当時ライブドア問題について深い部分まで入り込んでいた記者連中は、たいていが身内か顔見知りであった。それほど親しくなかったとしても、情報交換する程度には横の繋がりができていたのだが、その誰も送金メールの詳細について知らなかったのである。

 これはおかしい。少なくともあの時点では、ライブドア問題に関して一番情報を抱えていた、もしくは最も多くの情報源を持っていたのは二階堂である。これは断言しても良いだろう。なんせ二階堂は世間がホリエモンを時代の寵児として持ち上げていた時から、ヤクザ・総会屋・IT業界その他諸々にまで網を張って、孤立無援の状態で戦っていたのだから。

 聞けば、その二階堂でもついに手に入れられなかったネタを、永田議員は独自のルートで手に入れたという。だが党内の派閥争いが絡んだのか、小沢・平野ルートを民主党の窓口にしていた我々には一向に詳細が伝えられて来ない。なんたって"ニシザワタカシ"なる人物からの情報提供だったと知ったのは、皆さんと同じタイミングである。永田議員が2006年3月の懲罰委員会で情報提供者を明かすまで詳しい話を知らなかったのだ。

 おそらく平野氏を通じて「そのネタはガセの可能性が高い。委員会で公表するのは裏を取ってからにした方がいい。ライブに拘らずに3点セットの方をやるべきだ。」と散々警告したのが仇になったのだろう。先程も言ったが民主党内の派閥争いが優先され、永田議員らが手柄を焦ったとしか思えないのだが、その結果が"アレ"(※)である。 

※偽メール問題の顛末はwikiをご参照ください(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A0%80%E6%B1%9F%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%AB%E5%95%8F%E9%A1%8C)



 あの時、永田議員らが手柄を焦らず「どうしてもライブドア問題で自民を攻撃したい!」という感情を抑えて冷静になれていれば、穴だらけの偽メールにまんまと騙される事もなかっただろうし、正攻法の3点セットで自民党を確実に追い込めていただろう。

 また、せめて情報提供者の過去の経歴を調べるとか、マスコミ界隈の誰かに情報提供者について問い合わせるなどしてくれていれば、ああはなっていなかったはずである。なんせ件の人物は過去に何度もメディアにガセ記事を掴ませて、その度に名誉毀損裁判の賠償金額の"記録更新"をしていたような男なのだから。しかも我々のチームには、その情報提供者のお陰で巨額の名誉毀損裁判に敗訴した出版社(複数)の記者達が揃っていたのだ。それなのに、嗚呼それなのに......。

 当時はライブドア問題がブームだったので、世間の話題になるという気持ちもあったのだろうが、それはもはやゴシップ誌の手法である。お陰で偽メール騒動によって自民と民主の立場が逆転してしまい、追求して然るべき、小泉内閣に大ダメージを与えられたはずの3点セットが宙ぶらりんになってしまった。あれだけの大問題がうやむやにされてしまうのだから、政治家の情報リテラシー能力のなさは国を滅ぼしかねない。

 この連載で注意点として挙げた「確証バイアスに陥るな」「情報を疑え」「自己洗脳に陥るな」「情報に触れる際に感情を捨てろ」のどれも出来ていないと、ここまで事態が悪化するのである。

 今回は私の実体験のみを語るという前提だったので、民主党の偽メール問題だけを取り上げたが、今現在の話をするならば、最もネットリテラシー・情報リテラシー能力がなさすぎて危ういのは自民党である。つい先日も平井卓也衆議院議員(自民党ネットメディア局長)がニコニコ動画で暴言を吐いていたのがバレてとんだ赤っ恥をかいたばかり(※)だし、嫌韓系の2ちゃんまとめサイトやTwitterの記事を鵜呑みにして国会質問までしてしまう片山さつきなんてトンデモさんまで抱えている。

※自民党ネットメディア局長様のニコニコ自作自演問題(http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013070302000144.html)



 いったいどこの世界に「ネットメディア局長」なんて御大層な肩書きを持っているのに、ネットの書き込みの匿名化に失敗して自演バレするマヌケな政治家がいるというのだろう?お前は2000年代初頭に2ちゃんの脳死スレやネゲットスレに常駐していた個人サイト管理人かっていう。(そのスレはIP出ちゃいますよ、みたいな) 

 こんなレベルの連中が、ネット対策のつもりなのか市民サポーター[J-NSC(http://www.j-nsc.jp/)]をかき集めたところで、大本がバカなのだから屁でもない。バカは何人集めてもバカである。そんな集団がネットに残せる物といえばノイズだけで、言ってみればバックに政党がついているネトウヨ団体のようなものだ。自民党がまずやるべき事は「インターネットのお勉強」であろう。

 ライバル(だった)民主党は、偽メール問題で(間接的かもしれないが)死人まで出しているという点をくれぐれも忘れないで頂きたいものだ。



【関連記事】シリーズ「ネットウヨク論」、「ニコニコ生主とは何か?」



Written Photo by 荒井禎雄

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SAPIO (サピオ) 2012年 8/29号 [雑誌]

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