ネットに悪役を押し付けた既存メディアの手口~ネットウヨク論:番外編

2013年12月29日 ネットウヨク ネトウヨ 猪瀬直樹

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 今回書くお話は、私にとっては自分の過去の悪事を公表するに等しい内容である。テーマは 「ネットに悪役を押し付けた既存メディアの手口」 だ。

 2000年代の前半頃、私はとある大手情報サイトのプロデューサーをやっていたのだが、その当時はネットメディアがまだまだ正当な評価を得ておらず、個人のツテで記者会見の場などに潜り込んでも、媒体がネットというだけで白い目で見られたり、酷い時には 「遊びでやってる素人は後ろに行けよ!」 と、ベテラン記者風のオッサンに罵声を浴びたりするのが当たり前だった。

 今ではニコニコですら堂々と記者会見に入れたり、党首討論の中継を流したりしているが、あの当時では考えられなかった事である。この部分に関しては、ドワンゴに対して 「よくやってくれました!」 と素直に賛辞を贈りたい。

 余談になるが、あの頃苦渋を舐めていた 「ネット記者」 に救いの手を差し伸べてくれたのが故梨元勝氏で、梨元さんは本当に情報を取って来れる人間であれば媒体に拘らず接してくれ、会見場の入り口で揉めていると 「彼はボクが連れて来たんですよ~」 と、わざわざ自分の隣の席を空けてくれたり、自分に回って来たネタを 「これボクじゃよく解らないから一緒に来てよ」 と誘ってくれもした。当時の梨元さんは、ジャニーズやバーニングに同時に喧嘩を吹っ掛けてTV業界を干され、ネットに活路を見出そうとしていた時期だったので、それもあって "何か" をひっくり返そうとしていたのかもしれない。

 また、そんな状況下にあったネットに拠点を置く記者らが 「大手メディアがやれるもんならやってみろ!」 と、腹を括って大成果を挙げたのがライブドア騒動なのだが、この辺りの話は本題から外れるのでまたの機会に。

 本題に入るが、あの当時無名なネット記者が日の当たるメディア(TV・新聞・雑誌...) に何かしら絡めるチャンスがあるとすれば、それは唯一 「既存メディアの保険」 として動く時だけだったように思う。

 どういう事かと言うと、週刊誌や実話誌(またはTV) が裏を取り切れないちょっと危ない案件を扱う場合に 「まずネットにやらせてそれを拾おう」となり、その 「ネットにやらせる部分」を請け負うのである。これはやらされる側からすると非常に危険度が高いため、本当に危なすぎるネタの場合は情報サイトや個人ブログなどに書くのも恐ろしく、どうしたって2ちゃん・阿修羅・論談のような投稿型サイトに "飛ばす" しかなかった。

 それをあの手この手で拡散させ、その反響を見て美味しいと思ったら実話誌辺りが記事にするといった流れだ。この際に、ネットで第一報を飛ばした見返りとして執筆依頼を頂けるという流れになるのだが、私の場合はネタの危なさもあって記名で書けるケースは稀で、お陰様で今になっても全くの無名ライターのままである。自分で言うのも何だが、今はもっと上手なやり方があるので、こんな方法で日銭を稼ぐような手法はオススメしない。

 このように、私のような無名なネット記者が食い繋ぐために既存メディアにいいように使われていった結果どうなったか? それが今回のテーマなのだが、とにかく【ネット=悪役】という図式が広まってしまった。

 今ではネトウヨ騒動のせいで「ネット住民はデマばかり垂れ流すバカだ!」と言われても反論の余地がなくて困ってしまうのだが、昔話だと前置きするならば、ネットで事実か否か疑わしい情報を垂れ流し、それを 「ネットではこんな情報が流れている」と白々しく拾い上げ、己の安全を確保した上で美味しいとこ取りをしていたのは既存メディアである。

 確かにネトウヨと呼ばれている人種は情報を深く調べないし、Google先生に都合の良いキーワードを突っ込んで、ヒットした出処不明の胡散臭い情報を鵜呑みにして拡散してしまう。その点は認める。だが、それを鬼の首を取ったかのように批判して正義漢ぶっている雑誌やTVは、それ以上にえげつない手法を使っていただろう?(もしくは現在進行形で使っているだろう?)

 私がこのネットウヨク論で、ネトウヨ君らを批判しつつ、同時に既存メディアもクソ叩きにする理由はコレである。私個人の私怨が多分に含まれているので、その点は平にご容赦下さい。ある程度差し引いて読んで下さいと頭を下げるしかないが、TVや雑誌がネットを悪役に仕立て上げて偉そうに能書きを垂れている様は滑稽でしかない。「お前らどんだけネットを悪用して来たんだよ?」 という話である。

 今ではネットの立場が昔に比べたら格段に良くなり、また 「賢き観客」 も増えたため、一昔前のような 「都合の悪いネタは何でもかんでもネットに...」という方法論が通用し難くなってはいるが、それでも相変わらず 「ネットではこんな噂が~」といった書き口の記事があちこちに溢れている。なんだったらそんなテーマが朝のニュース番組に流れる事すらある。

 あのな、会社から取材費が出るご身分で、ネットに転がっている情報を引用して記事にするなんざ恥ずかしいと思わないのか? 金が使えるなら、せめて個人サイトやwiki以上の情報をテメエの目・耳・足で集めろよ。

 それと、どこの誰がやってるとは言わないでおいてやるけれども、くだらねえアイドル情報のまとめサイトを作って、そこでAKBだももクロだハロプロだのファンを煽るような2ちゃんスレばかり掲載してファン同士を争わせ、それを本業の雑誌にフィードバックするような手法を使うなよ。そんなやり口で金を稼いでおいて、正義の人ぶって 「ネットではこのようなけしからん情報が~」 じゃねえだろ。「ファン同士がいがみ合うことをアイドルの子達は望んでいません!」とか言っちゃって、いがみ合わせているのはお前らだろうと。何をヌケヌケと言ってやがるんだか。

 と、このようにネットというのは様々な立場の人間が、様々な思惑で悪用している空間ですから、皆さんは偏った情報や胡散臭い話に流されないよう心がけて下さい。 既存メディアやアフィサイトで稼ぐ輩のマッチポンプに乗せられるなんて恥ずかしいよ?

Written by 荒井禎雄

Photo by Leo Hidalgo (@yompyHERE)

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