『新宿の女』で歌手デビューし、ラストシングルが『新宿挽歌』だった藤圭子が、西新宿の高層マンションから転落死。そんなタイミングで『演歌の星 藤圭子物語』(71年/ルック社)を読み直してみたら、印象的だったのが体調不良でコンサートを強行したときの「死んでもいい。舞台を捨てちゃいけない」といった彼女の覚悟であり、彼女を発掘した石坂まさを=沢の井竜二のスパルタぶり。「彼女をボクの手もとに引き取ってからデビューまで、ずいぶんとシゴいたもんだ。ボクはいささか女をバカにする傾向があるんで、曲のことで意見がぶつかったりすると、ついぶん殴っちゃうんだな」と石坂まさをが証言すれば、彼女も「沢の井先生は気狂いになったみたいに私をシゴいていきました」「しょっちゅう意見の衝突があり、ケンカもしました。二人とも怒りっぽいので、すぐに売り言葉に買い言葉とでもいうのでしょう。『表へ出ろ』『出るわよ』というわけで、あわや取っ組み合いのケンカになることもしばしば」と発言。これが17歳ぐらいのときだから、確かに「私の人生、暗かった!」。ちなみに『圭子の夢は夜ひらく』の作曲家・曽根幸明氏も『ケンカが好きな芸人たち』(85年/ベストセラーズ)って本を出している、愚連隊出身の喧嘩自慢でした。
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Written by 吉田豪
Photo by 新宿の女/Sony Music Direct
> 連載 > 藤圭子、転落死~吉田豪の 「だいたい日刊で140字前後でニュース斬り」第29回