これがヤラセのからくり 地元有力者が語る『24時間テレビ』とのやり取り 妄想ドキュメンタリーはこうして作られた!
善意の人たちを利用したテレビ局
――日本でも放送されたんですよ、これ……(『24時間テレビ』のプリントアウトを見せる)
「この横断幕は僕の家にあるよ。昨日見なかった?(笑)」
――見ました、見ました(笑)。写真撮りましたよ!
一同(笑)。
「あのままにしてあるんだ(笑)」
――例えばまた日本のテレビ局がやってきて、コムローイを上げたいと言ってきたらどうします?
「大丈夫。できるよ。この町では、前の2回で集落の人たちに収入をもたらしただろ? それにはコムローイを作る手順がある。撮影をする段取りがある。参加者には収入がある。例えば、10万個のコムローイを上げるとしたら、14の集落で会議を持って、それぞれの集落では何個上げられるか、それを考えてからコムローイを1個あたりいくらかの答えが出るんだ。つまり、どれくらいの人が欲しいか、ケースバイケースだな。その人数の目標数次第だ」
インタビューが終わり、外へ出ると、心配していたのだろうか元副町長の家族が待っていた。彼はそれに気づくと、
「おうい、日本人だぞ、珍しいだろ。さあ、一緒に写真を撮ろう!」
と言って家族を招き寄せた。その中には彼の奥さんもいて、彼女は「昨日も会いましたよね」と私たちに言った。まさか、重要なキーマンの奥様とはつゆ知らず、我々は不躾に質問攻めしてしまっていたようだ。
その側に停めてあった元副町長の車はスズキの軽トラで、車体には日本語が書かれていた。私たちがなぜ日本語なんですか? と聞くと元副町長は「なんて書いてるの?」と聞いてきた。そこで教えてあげると、なぜか彼ら家族は盛り上がり、私たちも共にとても楽しい時間を過ごしたのだった。彼らが日本に対して良い印象を抱いていることが分かった。
名誉のために書いておくが、彼らには何の落ち度もない。いきなりやって来た日本のテレビ局の無理難題に見事に応えてくれたのだから、非難するところなど何一つ無い。それどころか、4,000人もの人を集めるのだから、無償でなんて無理に決まっている。せめて交通費程度は出してくださいよ? というのは真っ当な意見だと思うし、我々もそこに何の疑問もなかった。
問題があるのは全て日本テレビ側である。
彼らはタイの人々が「東日本大震災での被災者のためにコムローイを上げた」という妄想を映像にしようとして現地を荒らしたのだ。実際、町人は誰もが「津波での死者のために」なんてことは知らなかったし、メインとなって動いた元副町長からもそのような話は一切出てこなかった。
日本テレビは妄想をドキュメンタリーとして放送しただけではなく、震災被災者とタイ国民を愚弄したのである。
そして、『24間テレビ』がこの町で妄想のコムローイ映像を撮った前年、実は日本テレビのバラエティ番組『イッテQ』がまさにこの同じ場所で「カレンダープロジェクト2011年8月編 ~灯篭流しコムローイ~」(2010年8月15日OA)という企画を収録していたという事実を、写真などの証拠とともに次回お伝えしたいと思う。(取材・文◎編集部)
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