やしきたかじん曰く「お前(博士)は芸人の目じゃない!」 『水道橋博士×町山智浩 がメッタ斬りトーク』(終)
町山:俺、田原総一郎さんと1回しか仕事したことないんだけど。そん時デーブ・スペクターと一緒だったの。デーブさんと2人で座ってて、いきなり「デーブ!」って、田原さんが。「ブッシュ大統領って知ってる?」って。
博士:ははは(笑)。
町山:あのデーブがシャレで返せなかったもん。「??」って。絶句。
博士:そのパターンで一番有名なのは、「朝生」に出てきた思想家? みたいな人に「聖徳太子って知ってる?」って。「知ってるよ!バカにしているのか」って、そのひとが尋常じゃないほどに切れまくるという。YouTubeの名シーンだけど(笑)。
町山:田原さんのあれは一体なんなの?
博士:あれは話法。田原話法です。
町山:あれ、わざとやってる?
博士:わざとやってる。俺、初めて『スコラ』の対談で会った時に、「小泉純一郎って知ってる?」って言われたもん。
町山:とんでもないよあれ。相手がどういう反応すると思ってるの? わけ分かんないよ。
博士:あれ何なんだろうね。相手の意表をつこうとしてるのかね。威圧するみたいな。
町山:びっくりして二の句がつげないんだもん、デーブ・スペクターが。田原さんの意図が分からないから、あのデーブさんも反応できないじゃん。
博士:ああいうので機先を制するという、話術だと思う。
町山:「これで勝った!」みたいに? すげえなもうそれ。
博士:だって、高齢者の性の問題やってて、こないだ、これも原稿にも書いてるけど、NHKで。『クローズアップ現代』か。さあ、高齢者には性の…って真面目にやってて。「え? で、このあと何やったの? このあと何やったの?」って。生放送なのに。風俗店だけど、「この後やったの? この人と」。
町山:それって、ものすごく悪いことしたみたいだよ。
博士:で、最後「田原さん、今日は高齢者の性の問題について…」って、「いやそんなことはどうでもいいんだよ。天皇だよ、天皇の問題だよ!」って。すぅーっと終わっていった。
町山:高齢者の性についての番組でしょ。
博士:それなのに、天皇の生前退位を言い出す。
町山:そういう番組じゃない。
博士:そう。ずっとそれしかやってないのに、「その話はいいんだよ! 天皇の退位の問題だ」って。生放送。暴走老人とはあのこと。
町山:どうしたらいいのそれ。
博士 それも書いてるよ。ここ、ここ。
(下巻 P297)
田原総一朗は、今も意気軒昂だ。とっくに80歳を超えているが、先日も生放送でやらかした。
2017年5月18日、NHKの報道情報番組『クローズアップ現代+「高齢者だってセックス」言えない〝性の悩み〟』に、高齢者代表で出演したところ……不規則発言を連発した。
「ちょっと余計なこと聞くけど、さっき風俗店でね、本番以外のことをやると。何やるんですか?」
「(NHKの司会者に)あなた、奥さんとセックス語ってる?」
そして番組の最後にも、司会者がまとめに入ろうとすると唐突に吠えた!
「性の問題はいいよ! 天皇がね、お気持ちを表明された。これはね、明らかに生前退位のためには皇室典範を改正して欲しいという気持ちなんだ。政府は皇室典範改正に反対なんだ。安倍さん、何しているんだ。おかしいでしょ!」
老いてなお盛んなのは、言論だけにとどまらない。
愛妻に先立たれる辛さを誰よりも知り、妻への〝殉愛〟〝殉死〟を旨とする全身過激恋愛家の田原総一朗なのだが――。
博士:こんなの生放送で対応できないでしょ。うちの北野オフィスにダースレイダーってラッパーが入ったの。東大中退、お父さんは、ニュースステーションの解説員の和田さん。その人が、俺の直属の下になって、マネージャーが同じだから。彼がこないだ『朝生』に出て、そしたらいきなり、田原さんに「だまれ!」って言われて。
町山:それ、もう司会者じゃないよ~。
博士:Abemaの『NEWS RAP JAPAN』っていう番組にゲストにきて、ダースレイダーが司会で。めっちゃ喋れるから、東大も出て、ラップもできるし。能力的には本当、「朝生」の司会もできるレベルの人なんで、それで田原さんに「出てくれ!」言われて、出演したら、生放送で喋ろうとしたら「黙れ!」って言われるあの理不尽。
町山:もうむちゃくちゃ(笑)。ところで、博士は田原さんの2代目になんないんですか。朝生の司会。
博士:無理無理無理!!
町山:なんで~?
博士:いや、あんなのやったら、ノイローゼになるわ。
町山:田原さんが始めたのって、博士よりも若かったよね。
博士:若い若い。でも無理だね。そういうところでいうと、自意識の壁っていうか、自分はできないんだなって思う。日テレの『オジサンズ11』って、『しゃべくり7』の前番組の司会をやったんですよ。それこそ、小倉智昭さんから、テリー伊藤さんから、徳光さんから。福留さんとか司会者が全員11人集まって、その総合司会がボクですよ。
町山:すごいね。みんな還暦越えばっかり集まって。
博士:ヤッ(薬丸)くんや、羽鳥さんも居たけどね。でも、皆、一角の司会者で冠番組を持つひとじゃない。それで1時間番組で、それぞれのマネージャーとか全部ついて、本番やった後にさ、みんな、そりゃあ、各自が自分勝手じゃん。
町山:そりゃね。彼らみんな司会者だから。
博士:そう。本番前に、「うちの小倉のオンエアみたら、20何秒しかないんですけど」とかそれぞれに裏方さんがいて、みんながみんな抗議しててさ。俺、あの番組やっていて完璧ノイローゼなったもん。できないね。
ああいう時に、爆笑の太田くんなんかは、そういうのを平気で、自分だけのワンマンショーやって、自分が「総理」になっちゃう。俺の方が偉いに決まっていると思える自意識で、まぁ大雑把に出来る人だと思うんだけど、俺は本当に全員に発言機会を回さなきゃいけないと思う方だからさ、それで資料を毎日、こんなに読んでさ、緻密にやろうとするでしょ。
だから、「ああ、やっぱ俺には出来ないんだな」と思ったね。当時は。今なら、もう腹をくくってるから、出来るかもしれないけど、当時はもう能力的に俺には出来ないんだっていうのが分かった。
町山:入れ替わってても、あんまり分かんないかもしれない。田原総一郎さんと。
博士:あの番組で、一番面白かったのはさ、元・日テレの福留さんもいたのね。あの時に、『オジサンズ11』のメンバー全員にヒゲをつけたの。日本は髭のアナウンサーがいないって話題から。
町山:あ、日本にはいないねえ。
博士:日本にはいない。だから、つけた途端に、俺が「アルジャジーラ放送です」ってやったんだけど、全員ヒゲだからさ、それはそれで「面白い!」って受けて(笑)。そしたら、福留さんが小倉さんに対して、本番中だよ、指差して「小倉ちゃん、上も下もヒゲついてんじゃん!」って言ってね。
町山:頭の上にも(笑)
博士:受身がとれないよ。あれは!! あれから福留さんは、テレビ界から消えてったよね。あまりにもガチンコ発言が多かったから。
町山:最強の選手が集まってんじゃん。しゃべりに関して。
博士:そうそう。そういう意味では小倉さんはすごかったよ。1分間フリートーキングって言って、とにかく1分間で落とさなきゃいけない話をさ、みんなしゃべりのプロだからやるんだけど、俺は司会者だったからさ、全員のチェックシート、「このネタこういう風にやります」っていうの聞いてるんだけど、小倉さんは事前にネタを一切準備していないの。順番も最後でいい、全員がやって、誰かがまったくやってないようなネタを自分はアドリブでやるからって。で、実際、出来るんだよ。一分で落とす話を。アナウンス能力が凄かった、そういう意味ではプロです!! 頭(ズ)抜けていた!
町山:毛並みがいい!
博士:毛並みがいいねえ~(笑)。そういうのは客観的に認めるよ、俺はやっぱ。
(音楽流れる)