能町みね子が日体大相撲部齋藤一雄監督に聞く 相撲の稽古・技術・そして大相撲 第1回

齋藤先生 そうですね、ありがたいいですね。でも、軽いクラスで優勝した子は高校時代全然たいしたことなかったんですよ。人間、本気になったら大して変わらないってことです。

 

●日体大相撲部の生活

能町さん 寮で、ご飯は3年生が作ると伺いましたが、具体的にはどんな感じですか。

齋藤先生 朝は3年生がご飯を炊きます。卵と豚肉とタマネギはいくらでもあるので、あとは自由に自分たちで料理してもいいし。昼は外で食べたり自由にやって、夜は食事当番が作ります。

能町さん それは、いわゆるちゃんこ番的な感じで。

齋藤先生 そうです。ちゃんこ番って、よその大学は決まった子がやるんですけど、ウチはみんなで。ただし、レギュラーはやらないです。レギュラーは、日曜日の食事当番が月に1回ぐらいまわってきます。日曜だけはみんなで回してやるので。レギュラーも、ちゃんこの作り方ぐらい知らないといけないですから。まあ、楽しくやってますよ。

能町さん 寮の中も気になります。私は相撲部屋しか見たことがないので。食堂みたいなものがあるんですか?

齋藤先生 そうです。

能町さん 部員の皆さんは、ご飯食べたあとは自由時間なんですか?

齊藤先生のコメントに興味深くうなずく好角家として知られる能町みね子さん。

齋藤先生 稽古が終わったら自由時間ですよ。ホントは授業ある子もいるはずなんですけど。

能町さん 基本的に夜ごはんは全員揃って?

齋藤先生 順番です。そんなに広くないんで。今は、1年生が先に食べてます。

能町さん そうなんですね! そこも大相撲と違いますね。

齋藤先生 1年生から先に帰れって言って、風呂も1年生から入るんですけど、それには大きなメリットがあります。3、4年生って、稽古が終わってもダラダラしてすぐ帰らないんですよ。タオルもいっぱいあるんですけど、1年生がタオル当番をすると、3、4年生は適当に使っちゃうんですよ。いっぱい洗濯ものが出る。でも、3年生がそれをやるとなると、最小限しか使わない。

能町さん なるほど(笑)。1年生は1年生でちょっと遠慮もあるから、バランスもよく。

齋藤先生 (笑)。それはあって当たり前ですから。あと、ウチは最近、タオルを個人個人で使うようにしました。コロナのこともあるので。ウチはおかげさまでクラスターも起きていないんですけど、より良い対策ということで、タオルも共有しないように。

能町さん 確かにそれがいいですね。名前を書いて使う感じですか。

齋藤先生 はい、刺繍してあるんで。で、1〜4年生で色を替えてるんです。

能町さん わかりやすいですね。

齋藤先生 どうやったらいいか試行錯誤してる最中なんですけど。タオルに関しては、4年生は4年生のタオルを洗濯しようってことに最近なりました。3年生は3年生、2年生は2年生。各自の学年でやろうってことで、洗濯機あるんで。

能町さん コロナ禍の今は別として、相撲部屋に行って稽古するとなると、どこに行くんですか?

齋藤先生 私は玉ノ井親方(元大関栃東)が高校(明治大学付属中野高校)の後輩なので、栃東のところに行ったり。どこでも行かせてもらいますよ、「行っていいですか?」って言うとだいたい「いいですよ」って言ってくれるので。寺尾さん(元関脇。錣山部屋)のところにも行きました。

能町さん そういうときはみんなで車で行くんですか?

齋藤先生 はい。車で連れて行きます。では、そろそろ向こう(稽古場)に行きましょうか。(第2回に続く)

能町みね子が日体大相撲部齋藤一雄監督に聞く 相撲の稽古・技術・そして大相撲 第2回 | TABLO 

 

※1 実力が拮抗した2人が、2人で何番も続けてやる稽古方式。

※2 何人かが土俵周りに集まる。まず誰か2人が対戦し勝負が付くと、勝った者に対し周りの者が「次は自分が」と対戦を申し込み、勝った者がその中から相手を指名し、また対戦。このようにして順繰りに続く稽古方式。

※3 2人が受ける側とぶつかる側に分かれる。ぶつかる側はぶち当たって土俵際まで一気に押し、また向きを変えて一気に押し、というのを何度も繰り返す。最後に、受ける側は相手を転がして受け身を取らせる。この方式の稽古。たいてい、すべての稽古の仕上げに行う。

■プロフィール

齋藤一雄
昭和六十三年、全日本相撲選手権において優勝する。翌年、平成元年の全国学生相撲選手権では団体優勝を果たす。日体大の教員を経て平成十六年から学友会相撲部の監督に就任。平成十九年・二十年・二十三年・二十六年と監督として全国学生相撲選手権で本学相撲部を学生日本一に導く。また、個人戦においては平成二十年から七年連続決勝進出者を輩出し、数々の横綱に輝いている。日体大からの学生横綱 垣添徹(後に小結「垣添」)、明月院秀政(現幕内「千代大龍」)、中村大輝(現幕内「北勝富士」)、一ノ瀬康平、中村泰輝(現3年生)、デルゲルバヤル(現幕下「欧勝馬」)。日本体育大学教授。医学博士(日本体育大学相撲部ホームページより)

能町みね子
北海道出身。文筆業。著書に、『くすぶれ!モテない系』(文春文庫)、『雑誌の人格』シリーズ(文化出版局)、『お家賃ですけど』(東京書籍)、『そのへんをどのように受け止めてらっしゃるか』(文春文庫)、『私以外みんな不潔』(幻冬舎)、『結婚の奴』(平凡社)など。NHK「シブ5時」出演の際は、その場所の相撲の見どころなどを紹介・解説する好角家。