能町みね子が日体大相撲部齋藤一雄監督に聞く 相撲の稽古・技術・そして大相撲 第2回

日体大相撲部の稽古場には3つの土俵ごとにモニターが設置されすぐに自分の相撲をチェックできる画期的なシステムになっている。

11月28日、大相撲九州場所が終わりました。優勝は堂々たる相撲を取り切った横綱照ノ富士。大変盛り上がった場所でした。その大相撲の興奮冷めやらぬ中、文筆家能町みね子さんと日体大相撲部監督齋藤一雄先生との対談第2回目を掲載いたします。何より、対談後の11月7日、その日体大相撲部は第99回全国学生相撲選手権大会の団体戦で日大を破り、7年ぶり7回目の優勝を果たしました。
そして、熱のこもった第1回目対談から、さらに話は伯仲。話題は「土俵の広さはこれで良いのか」「体重別で相撲をやったらどうなる?」という相撲論から「仕切り、まわしの取り方」といった技術論。さらには斎藤先生が優勝した「第1回相撲世界選手権の思い出」まで、2人の「相撲談義」は続いていきます(次回で最終回です)。

 

第2回★相撲の技術、これからの相撲

 

●やる気にさせる齋藤先生の指導法

〜約2時間の稽古を見学させていただき、その後〜

―ー稽古を見ての感想はいかがでしたでしょうか。

能町みね子さん(以下・能町さん) まず、稽古の環境が面白かったです。土俵が3面あるのがすごい。そして、さらに稽古場の隅に、俵がいくつか埋められただけのところがあります。あそこはぶつかり稽古用の俵ですよね。脚を踏ん張る用の俵っていうことですね。

齋藤一雄先生(以下・齊藤先生) そうですね。ホントはもっといっぱい土俵作りたいんだけど、あそこは土俵が作れないからあれを作りました。

能町さん 稽古内容は、「効率が良い」と言うと語弊がありますが、すごく合理的というか。無駄なことがあまりないなと思いました。

齋藤先生 それが良いかどうか分からないですけど、自分がやりたかった稽古がこれなんで。

能町さん 先生の指導がすごく短く的確ですよね。すぐに「誰と誰(が当たれ)」ってパパッと決めますし、「ここがマズい」って端的に言うのが、聞く側としてはわかりやすいんじゃないかと思いました。

齋藤先生 考え方だと思うんですよね。皆一生懸命やって強くなりたいと思ってるので、ただ自分で気づかないことを客観的に教えてあげるっていう。やらせるのって、好きじゃないんですよ。歩いて行く者に「こっち向けよ」ってアドバイスするのはいいんですけど、首つかまえて引っ張っていくことはしたくないんですよ。やる気にさせるというか。

能町さん 根性論で回数だけやらせるようなことはあまり意味がないわけですかね。

――稽古中、先生が「そんな相撲に未来はないよ」「それで勝っても意味がないよ」と声を掛けるのが印象的でした。

齋藤先生 自分が進むべき方向をキチンと見てもらって、そっちの方向でしっかり考え方を持っていれば将来は勝てるようになるということです。「3年先の稽古」という言葉がお相撲さんの世界にあるんですけど、目先の勝ち負けにこだわらないで3年先に結果が出る、そういう意味でああいう言い方をしました。

能町さん あと、「気を抜くなよ」ってすごくおっしゃってましたね。ケガしやすいですもんね。

齋藤先生 やっばりケガが一番怖いですから。関節が伸びるんで、膝関節とか。

 

●いい相撲とは何か

能町さん 「がっぷりで勝ってもしょうがないから」って何回か止めていたのも印象的でした。がっぷりになって稽古する必要はあまりないんですかね。

齋藤先生 ないです。ケガのリスクも高いですし、力比べやってもあんまり良いことはないです。というか、力比べやったらウチの学生弱いです(笑)。

能町さん え、そうですか!

齋藤先生 もっと強い人いっぱいいます。体が大きい人はいるんで。日大には190キロぐらいの学生もいますから。

能町さん 確かに、アンコ型(よく太った丸い体型のこと)の子があんまりいないですね。どっちかというと細身で背もそんなにない子が多いですね。

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