その場、その時でしか食べられない料理があります。店で出していても、既にメニューから削った料理などです。前回書いた通り、食べるのが好きなので、美味いものを食べると店名と場所をメモしてるのですが、追記しておきます。
まず、三重県の叔父に船を出してもらって、その場でさばいた伊勢湾の鯖の刺身。漫画『美味しんぼ』(原作・雁屋哲 画・花咲アキラ)で主人公・山岡士郎が「今まで一番美味い刺身は鯖だった」と言い、父の海原雄山に嘲笑されるシーンがあります。
僕は食通でも何でもない、ただの食いしん坊ですが山岡士郎に賛成です。「刺身は鯖」と僕の中では思っています。機会があればまた食べたいものです。
カレーも好きでして、欧風やネパール、スリランカカレーでなく、日本風のカレーがどちらかと言えば好みです。
で、現在ゴールデン街で「ばるぼら屋」という鉄板焼き、煮込み料理を主に出している店があります。そこの主人が「ばるぼら屋」の前身、新宿センター街にある「ばるぼら」時代に月に一回出していたカレーが絶品でした。
因みにナシゴレンも美味くて、五皿くらいお替わりをしたほどで今でも主人には「久田君、あの時よう食うたな」(ご主人、関西出身です)と笑われます。それほど美味かったです。
「ばるぼら屋」では現在は、(多分)カレーライスは出していませんが、関西出身のご主人仕込みの煮込みや"粉もん"料理は相変わらず美味いのでお薦めです。吉田類さんも常連のはずです。
このように「幻の料理」というのが、皆さんにもあるのではないでしょうか(いわゆる「おふくろの味」もそうかも知れません)。
僕が上記の料理のほかに、たまに思い出すのが「フィッシュ&チップス」です。大学の頃、ニュージーランドのハミルトンという北島の一番北端の小さな街に一か月ほどホームスティをしていました。そこの一家が海へ連れて行ってくれたのですが、屋台でフィッシュ&チップスを売っていました。
新聞紙に包まれた、雑な感じで油で揚げた白身でした。大きめのポテト。豪快です。白身は多分タラか、もしかしたらサメだったかも知れません。油も「ケンタッキーフライドチキン」のような軽い感じではなく、「油モノ」でした。これが多分、大学の頃だったからでしょう、食べ応えありました。「白身の肉」を食べているという充実感。新聞紙もいい味を出していました。何よりニュージーランドの海辺というシチュエーションも美味さを倍増させていたのだと思います。
今でもバーや居酒屋で「フィッシュ&チップス」がメニューにあると目が向いてしまいます。
池袋近くにたまに行くバーがあります。そこにフィッシュ&チップスがあったので頼んでみました。ニュージーランドで食べたような豪快なものではありませんが、日本風にアレンジしてあって好感が持てました。何より衣にビールを混ぜてありまして大変、軽いです。衣にビールを混ぜるのは、色々な店で出しているようですね。
洗練され、食べやすくなったフィッシュ&チップスも良いですが、たまに新聞にくるまれた雑なフィッシュ&チップスに再会したくなるものです。
文◎久田将義