TABLO編集長・久田将義 偉そうにしないでください。

未だに増加する振込詐欺被害 電話をかけたらこうなりました 詐欺集団とのリアル・バトル|久田将義

2018年08月28日 リアル・バトル 久田将義 振込詐欺 詐欺集団 電話

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 振込詐欺の被害が続いています。警察庁発表だと2017年、被害額約390億円。新手の詐欺→警察が警告→さらに新手の詐欺というイタチごっこの態をなしています。近年、法務省を偽った振込詐欺なども登場。

 僕は十年くらい前に日本最大の詐欺集団、オレオレ詐欺の「梶山グループ」の人間に取材しました。実際その頃に、メールで「アダルトサイト未納料金を払え」というようなものが来たので、その場で電話をして振込先を聞き、当該銀行の支店に電話をかけ、口座を凍結させました。
 その後、二回くらい電話しました。その当時の振込詐欺はこんな感じでした。ある日、僕の携帯にこんなメールが来ました。その文面。


《(株)DIGリサーチ【03-●●●●ー●●●●】
担当の田村と申します。
この度、お客様の携帯電話が迷惑メール拒否の設定をされている為、サイト運営会社から再三の催促のメールが届かないということで弊社が依頼を受けまして、ご連絡をさせていただきました。
お客様がご使用中の携帯電話の端末認証記録により、(有料複合サイト)の利用《着メロ・天気・懸賞・ニュース・ギャンブル・出会い・動画》等のコンテンツの登録があり、月額料金等の長期滞納が続いてるとの事です。
今後も不当に未払いを続ける悪質なサイト登録者には[利用規約]に基づき携帯個体識別番号から追跡し、お客様の身元調査をおこない、損害賠償等を求める民事訴訟(民事裁判)となります。
通信記録という証拠を提出したうえの裁判であるため、誤っての登録であっても支払い命令が下されます。
訴訟差し止め、退会処理希望の方は本日中に大至急ご連絡下さい。
(株)DIGリサーチ
TEL 03-●●●●-●●●
担当 田村
受付時間
平日 9時~18時迄
土曜日 日曜 祝日は休日となります。
※メールでの返答には対応できませんので、ご了承下さい。》


 せっかく電話番号が書いてあるのだから、電話しようと思いました。ICレコーダーを手元におき、録音の用意をして番号通知で電凸してみました。長くてくどいけど我慢して読んでみて下さい。

架空請求業者(以下・架)「はい、株式会社DIGリサーチと申します」

僕「僕が何かコンテンツてのに入会したんですけど、退会手続きが取られてないのでそのまま費用が加算されていて、放置すると法的処置になります的な感じなんですけども」

 それから担当に代わります。

架「顧客対応のワタベの電話が大変長引いてまいりまして私、ホリモトと申しますので代理にてご対応の方させて頂きますので一つ宜しくお願い致します」

ホリモト(以下・ホ)「では当社の業務内容についてのご説明をさせて頂きます。当社は調査会社となっておりまして、主に個人の身辺調査、並びに企業様の調査、その他お手続きの代行などを主につとめさせて頂いております。今回、なぜ当社の方からこういったメールのご通達をお送りさせて頂いたかと言いますと株式会社モバイルネット......」

僕「モバイルネットさん?」

 と、ノートに書き留めおきます。

ホ「2010年度の方の12月19日、夜22時40分52秒といった形でこちらサイトの方から頂いておりまして、現状ご登録データを見てご連絡させて頂いているんですけども。普段、インターネットのウェブサイトのご観覧頂く際に、"利用規約"といってサイトからの長ったらしい文章とかってお読みになって頂いてます?」

 ここ重要、と思いながら再度メモ。
 ここから長いので割愛しますが、どんどんホリモト氏が怒りモードになっていきます。かなり僕がバカにした話し方をしたからでしょう。
 こんな感じのやり取りになりました。

ホ「当社で退会手続きを完了後、14,100円はご返金を取らして頂いている金額になるんですね。ただお客様でお望みにならない裁判でも、裁判費用ですとか弁護士費用。いわゆる裁判後のですとご返金の対応が取れなくなってしまう代わりにそれ以上、時間、労力、諸経費がかかってしまいますので。ですから裁判前の和解手続きというのを進めて頂きたいのですけれど」

 ああ、はいはい、そういう事ですか。大体からくりと言うか狙いが分かったのでもうフィニッシュでいいです。仕事モードに言い方を変換しました(それまでかなり長いやり取りでしたが割愛しました)。スイッチを入れます。が、あくまで冷静に、は必須です。


あくまで冷静に対処すること


僕「えーっと分かりました。僕も裁判、何回もやっていますので言いますよ。裁判前の和解もありますが、僕の場合、弁護士を入れているんですね。御社の場合は弁護士ではない訳ですし、和解をなさる資格があるのか僕は理解が出来ないんですけど。モバイルネットさんが僕の事を訴えるか、という段階に来ているんですよね」

ホ「さようでございます」

僕「最後通告みたいな形でメールが来ていましたから。そうですよね。和解するしないという事は、このケースの場合異質な感じがするんですよ。ではまず、モバイルネットさんがどの程度の事を考えていらっしゃるのか御社は把握していらっしゃるんですかね。裁判前のやり取りの事を言っているんですが」

 ここまで話して自分で気づきましたが、説明が分かりにくければ分かりにくいほどそれは嘘に近づいているという事です。架空請求に限らず、政治家、一般人、詐欺師、あるいは同業で言えばジャーナリスト、編集者などにも言えます。

ホ「本日退会して頂かない場合、身辺調査の方をお願いいたしますといった感じです。......お話を聞いているとある程度、法の部分に関しては強いみたいなんで弁護士の方をご用意頂いてモバイルネットさんにご利用のご記憶がないという事を口頭弁論でお伝え頂いた方がいいと思いますよ」

 段々イラっときているのがわかります、ホリモト氏。

ホ「今の段階でおきますと携帯とメールアドレスしか分からない状態じゃないですか。受付でお名前おっしゃって頂いていると思うんですけど僕らで調査を開始していないお話しなので私どもではまだ把握はしていないんです。そこでお答えというものだけ頂きたいのですけど」

 あ、終わりそうだ。つなげよう。

僕「申し上げた通り2010年に使った記憶がないんで」

ホ「ええ、ええ、ええ。それでしたら訴訟をされた事があるのならそちらの方にご相談された方が宜しいと思うんですよ。当社の方が退会するってなってしまったとしても料金は絶対かかってしまうので」

僕「使っていないのにかかるんですか?」

ホ「......」

僕「使っていない事が、例えば司法によって証明されたとしますよね。そしたらそれは架空の請求をしたって事になりませんか」

ホ「架空の請求ですか」

僕「モバイルネットさんが、もし全くね、僕が27サイトっていうのを2010年に登録していない事が証明されていれば、この請求額189,000円ていうのが架空になりませんかっていう事を申し上げたい訳ですよ」

ホ「なるほど。逆に言ったらモバイルネットさんがそのような悪質サイトだとするじゃないですか」

僕「悪質とは申し上げてないですよ」

ホ「いや、大丈夫大丈夫です。そちらの方のご理解で大丈夫なんですけれども」

 大丈夫って何がですか?

ホ「例えばそのような会社様のご依頼を僕らの方が承ってしまい、このようなメールを送ってしまうというのがそもそもの問題点になってしまうんで、正直僕らも危ない橋って渡れないんですよ。弊社の方も仕事を承る前にお客様の方が間違いがなく、国の方から認められた会社である事はご確認の上、ご連絡しています」

僕「法人登録されているんですよね」

ホ「もし宜しければ法務局の方へご確認頂いて......」

僕「いや、それはいいです。問題なのは提訴されるなら提訴されるで仕方ないと思います。それで登録の日がものすごい細かい数字で言われていますよね」

ホ「ええ、ええ、ええ。細かくて申し訳ないです」

僕「いえ、申し訳なくないです。その方がハッキリするので。僕は全く使っていないという確信があるので」

ホ「使ったとか使っていないとかじゃなく、登録データが残って......」

僕「同じです。登録もしていないという確信、じゃなく自信があるんですよ。にもかかわらず請求金額の内訳が事細かく言われてらっしゃる。ならば、その内訳事態が崩壊しちゃってますよね」


振込詐欺の方がエキサイト


ホ「言っている意味が全くわからないですが!」

 ホリモト氏、怒り始めました。いらいらしてるのでしょう。

ホ「崩壊って何ですか?」

僕「内訳事態が架空になってしまっている事ですね」

ホ「そのような理解ならそのままご放置を頂いて、書類をお待ち頂いた方がいいと思いますよ。書類がお届きになった段階でお客様もある意味、」

僕「書類はどこから届くんですか?」

ホ「弊社の方からです、それから東京都の霞が関裁判
所と言って......」

僕「地裁からですよね。何回も行っているのでわかるんですが、会社に来たり個人の住所に来たり......」

ホ「いや、ですから会社には届かないですよ。ご自宅の方の......」

僕「一般論で言っているんですよ。で、架空という言葉に敏感に反応されたかも知れませんが......」

ホ「それは僕の方も正直な意見で、僕も営業としてやらせて頂いているもんで、そういう風に言われてしまうとっていうのは正直な気持ちではあるんですよ」

僕「で、メール自体がそもそも事実としてあり得ないんじゃないかという事にもなってくる訳ですよね」

ホ「事実としてあり得ない!? メールに対してのご指摘でございましたら当社に対しての指摘になるという......」
僕「もう一回説明しますと、僕は27サイトの一つも登録していない確信と自信があるんですね。にもかかわらずメールを見ると使った、登録したって事になってますよね。するとそれ自体が強い言い方で申し訳ないですが虚偽になってしまうじゃないかという事です」

ホ「きょ、きょうぎですか?」

僕「虚偽です」

ホ「きょひ?」

僕「......虚は虚しい......もういいや。嘘のメールになってしまうじゃないですか」

ホ「僕らの方からそのようなメールを送ってるといったお答えですか」

僕「ですね。事実来た訳ですから」

 ホリモト氏、怒ります。

ホ「分かりましたっ。当社の方も身辺調査の開始をいたしますので。今の段階であなたのご住所ってお伺いする事はございませんのであとは書面の方だけご確認頂いて宜しいですかね」

僕「書面?」

ホ「あなたとお話していると僕もバカにされちゃってんのかなって思う所が正直何個かあったんですよ」

 そうだろうなあと自分でも思います。口調を変えみます。

僕「バカに? 例えばどこですか」

ホ「サイトを悪く言う分には構わないですけれどもメールを送っているのは当社のお話になりますから、当社に架空がどうたらこうたらとかって言って頂いてる訳じゃないですか」

僕「虚偽と言いましたけれどもね」

ホ「いいです! そんなの関係ないです! とりあえず書面の方だけお待ち頂いて宜しいですか?」

僕「どの書面ですか? 内訳の書面ですか?」

ホ「年間でのご登録費用のご利用料金の詳細や請求していたというメールの送信リポート。あとは内容証明書などです」

僕「それなら、今事細かに内訳を説明して頂いたじゃないですか。ホリモトさんから内訳を教えて頂いたので大体わかります、それで十分ですよ」

ホ「それで十分じゃないから架空とかって言うお話が出るんじゃないですか。書面があれば架空の部分はないですから」

僕「いや、同じですね。書面でも口頭でもそれ自体が0円だとしたら、登録していないとしたら......」

ホ「登録していなかったら僕らも依頼って承っていないんで、本当に」

僕「本当ですか?」

ホ「いいや! だから登録データが残ってるからこそ僕らもご連絡をさし上げている訳じゃないですか。それは先ほど話した......」

僕「とは思いません。だって登録してないですから」

ホ「うん! だ、だったら法廷上にてお話をして下さいよ」

僕「法廷で、ですか?」

ホ「だから口頭弁論の際にお話をすればいいだけじゃないですか!」

僕「口頭弁論は僕は別にしませんけれども」

ホ「その場合になったらお客様の敗訴が確定するだけなんで、僕からすればどっちでも構わないですけれども」

僕「敗訴にはならないと思いますね」

ホ「ああ、そうなんですか」

僕「敗訴にはならないと思います。なぜならば登録した事が証明できないからです」

 そろそろ気づけよと思います。


メモ、ICレコーダーは必須


ホ「登録データの履歴がないと会社も負ける裁判を見越した上で当社が依頼を受けるとはいかないと思うんです」

僕「もちろんそうです」

ホ「お仕事の一環としてやらせてもらってますから僕も給料頂いてますし。それがどこから出てきたかというとモバイルネットからなんですよ。諸経費とかかけてまで負ける裁判をしますか?」

僕「モバイルネットさんから経費を頂いているという事ですね」

ホ「復唱しなくていいですから! 僕が言った事と同じ事を言っているだけじゃないですか」

僕「まあまあまあ、そんなに喧嘩腰にならなくていいじゃないですか」

ホ「すみません」

 あら?素直です。

僕「その登録日時をチェックしなかったんですか?」

ホ「ですからお伝えしたじゃないですか。2010年12月19日の話ですよ」

僕「では、日時を確認してメールを送られたという事になりますよね」

ホ「じゃなかったら僕らの方の問題点になってしまうんで。メールを送ってしまう事が問題点になってしまうんですよ」

僕「もちろん問題ですね。こういう事件て社会的な問題となっている事じゃないですか」

ホ「うーん、その部分に関しては」

僕「違いますか?」

ホ「じゃ、ど、ど、どうするんですか」

 声がかれてきたホリモト氏。

僕「じゃ、腹を割って話しましょう」

ホ「僕の方も腹を割って話します」

僕「登録した覚えのないサイトがあって、代理の会社から最後通告という形で送られてきて、電話をしなければ身辺調査に入ると、最後は法的手段に出るという意味合いの文言がありましたが、僕は正直全くの嘘だと思っているんですよ」

 ホリモト氏をここまで引っ張ってきました。お疲れ様です。しかし振込詐欺ですからね。

僕「だから、電話したんです」

ホ「なるほどでございますね」

僕「で、それを分かって頂きたくてお電話したという事ですね。あと、僕のような人間もいるという事も分かって頂きたくてお電話しました」

ホ「確かに言う事を聞いているとホントに登録していないという強い自信があるからそういう言葉が出るんだなと僕も思っていたんですよ。ただ、何でここに登録データがあるのかって言うのも僕の疑問なんです」

僕「確かに疑問ですね。僕らは主張が全く両者相反する訳です」

ホ「も、もう一度言って頂いていいですか?」

僕「相反する主張です」

ホ「あいはんするしゅちょう......」

僕「相反する主張を僕らはしている訳ですよね」

ホ「ごめんなさい、ちょっと意味が」

 ちょっと笑いそうになりましたが我慢します。

僕「そちらは登録データが残っている。僕はデータがないと言っている」

ホ「僕らも電話業務をしていてこの人は本当の事を言っているとかわかるんです。貴方はそうなんだとは思います。またお客様によっては不安を抱かせてしまう事もあります」

僕「不安はないんですよ、本当に。ただ不思議だなと。つまりお話を聞いていると全くない所から色んな名目の金額が出てきたじゃないですか。実は一年半前のデータってのはないはずなんですね。書面をお待ちくださいというならお待ちしますけど。長くなってすみません」

ホ「いえ、僕の方も分かりあえたって言ったら変ですけど、」

 分かりあえてはないと思います!

ホ「逆にいいお話を最後に出来て気持ち良く終われそうだなって良かったんでけすけど。ただ登録データが残っているので......」

僕「うーんと、では僕も最後に。申し上げにくいんですけど2010年にはこの携帯使ってないんですよ。なぜならこの携帯は今日、新品で購入したからです。だからあり得ないんですよ」

ホ「え?......(沈黙)はいはい。なるほど......。もしよかったらなんですけど今回、今日初めてなんですよ。このケースは。もしよかったら会社に確認を取らせて頂いていいですかね。本日は遅くまで仕事していらっしゃいます?」

 慌てて電話を切ろうとするホリモト氏。

僕「お電話して頂くには構いませんよ。お待ちしてます」


「もうメールするなよ。他の人にも」とつぶやきながら電話を切ります。後に分かった事ですが、同じ文面のメールが僕の中学高校の同級生にも来ていました。つまり僕らの中学か高校の卒業名簿を手に入れた業者がいるらしい訳です。名簿こそが、振込詐欺の命といっても良いでしょう。
「最終通告」「提訴」といった単語が混じっていたら要注意です。(文・久田将義 「ニコ生タックル」ブロマガより加筆)

ニコ生タックル http://ch.nicovideo.jp/hisada

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