8月13日、大阪府高槻市内の駐車場で、平田奈津美さん(13)の遺体が発見された。8日後の21日、大阪南部の柏原市で山田浩二(45)が平田さんの死体遺棄容疑で逮捕され、ついで星野凌斗くん(12)の遺体が発見された。山田が星野くんの遺体を確認しに立ち寄ったことから遺体のありかが判明したのだ。
平田さんの遺体は粘着テープで後ろ手にされた上、息ができないよう鼻や口にも巻き付けられていた。しかも短く切ったテープが多数、顔に貼り付けられていた。そうした強い殺意を感じさせる状況証拠から9月12日、府警は山田を平田さん殺害の容疑で再逮捕した。
山田はこれまで何度も少年院や刑務所に入っている累犯者。刑期を終えて、昨年出所したばかりだった。捜査の推移をみるにつけ、連想したのは僕が追いかけている辻出紀子さんの事件である。被害者と容疑者が車に居合わせたこと。事件後、これといった物的証拠が見つからないこと、容疑者が黙秘を貫いているということ。そうした点で二つの事件は共通している。
【未解決事件の闇】伊勢女性編集者失踪事件のこれまでを総括する
辻出さんが失踪したのは1998年11月24日である。携帯電話の履歴からXが辻出さんと事件当日、会話していることを突き止めた警察は1999年1月、Xを任意同行。Xから「辻出さんと車内で1-2時間、一緒にいた後、別れた」といった話を引き出している。
その年の2月、警察はXを別件で逮捕する。前年にXがホテトル嬢を監禁したのが容疑である。逮捕し身柄を拘束すれば、辻出さんの件についても、口を割らせることができると踏んだのだ。
連日、厳しい追及を続けるも、Xは頑として黙秘を続けた。これといった物的証拠がなかったため、辻出さんの捜査は膠着した。その上、別件についても、その年の10月、無罪判決が下され、Xが釈放されてしまう。以来、この事件は大きな進展を見せていない。別件の無罪が決定的だったのか。その後、三重県警の現場サイドには上層部から通達があったという。
「無罪判決の後、今後、Xには一切手を出すな、というお達しがありました。上層部からすれば、触らぬ神にたたりなしということ。自分が任期にある間は「人権侵害だ」とかそんな風に訴えられたりして不祥事になるのは勘弁ってことなんだと思います」と話すのは元捜査員である。
◇◇◇
寝屋川の事件に話を戻そう。警察が山田を殺人の容疑で再逮捕したのは、山田の言う同乗者がいないことが確認できたこと、山田が買った粘着テープと平田さんを拘束したテープが一致したことなどから、殺害が推定できるからだ。しかし、どこで山田が平田さんを殺害したのかということはもちろん、星野くんにいたっては死因すら特定されていない。
警察がこのまま物的証拠を揃えられず、山田に黙秘を続けられたままならば捜査は極めて厳しいものとなる。殺害場所や時間、方法が分からないままでは彼が犯人だと断定することが難しいからだ。
二人とも殺害したということであれば極刑は免れないはずだ。しかし死体遺棄だけだと、過去の犯罪を加味しても、そのうち再び野に放されることは目に見えている。つまり、疑わしきは罰せず、ということだ。被害者の関係者にとってはまことに厳しいが、それが現実なのだ。捜査本部が決定的な証拠をつかむよう、切望している。
Written by 西牟田靖
Photo by Amateur.Qin
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