【新宿駅痴漢冤罪事件】被疑者が自殺...裁判が進むなか警察の矛盾点が浮上

2015年12月21日 新宿署 痴漢冤罪 自殺

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IMG_4534.jpeg●原田さんのノート「話が合わないんだよ」と書かれている。

 2009年12月11日早朝、東西線早稲田駅で大学職員の原田信助さん(当時25)がホームから飛び込み自殺した。前夜に新宿署で行われていた痴漢容疑(迷惑防止条例違反)での取り調べが違法であったとして、遺族の母親、尚美さんが東京都を相手取り、損害賠償を求めている。11月17日の東京地裁(小海隆則裁判長)で、新宿署長と生活安全課長(いずれも当時)が証言をした。それによると、防犯カメラでは痴漢を特定できず、また繊維鑑定も目撃者探しもしていないにもかかわらず、被疑者死亡のまま書類送検していた。

●新宿署の証言には数々の矛盾?

 同年12月10日夜、原田さんは転職先の歓迎会のため吉祥寺で飲んでいた。その帰宅途中、JR中央線からJR山手線に乗り換えた。原田さんが山手線のホームに登る途中で女性とすれ違った。そのとき、女性は原田さんがお腹を触ったことを主張し、口論となった。それに気がついた友人らが原田さんに近づき、喧嘩となった。原田さんは見覚えがなく、いきなり殴られた被害者だとして、争っている中で、110番通報をしている。

 原田さんはその後、新宿駅西口交番に行くが、その途中からボイスレコーダーで録音している。西口交番では、「相互暴行の被害者」として新宿書へ行き、説明をしたほうがよいと言われたこと、しかし、新宿署内では痴漢容疑で取り調べを受けていることが記録されている。録音は、電車にひかれたあとも続いていた。

 警視庁保管の「110番情報メモ」によると、「痴漢容疑で本署同行としたが、痴漢の事実がなく相互暴行として後日地域課呼び出しとした」「現認した被疑者の服装と(信助さんの)服装が別であることが判明」と記されている。被害女性が証言してた服装と、信助さんの服装が違うことから「人違い」だったとの判断だ。しかし、原田さんが新宿署内にいる時点で、この判断がなされていたのに、ことのことは告げられていなかった。原田さんのノートには、「話があわないんだよ」と、このときの心情を思われることが書かれている。

 原田さんの死後2日後(09年12月14日)には、相互暴行事件は刑事課、迷惑防止条例違反事件は生活安全課の管轄だが、両課による「特命捜査本部」が設置された(被告側の東京都や新宿署長、捜査の指揮にあたった警部補は、この名称の捜査本部の存在を認めていない)。死後にJRから提出された防犯カメラの映像には原田さんが痴漢するシーンはない。

 防犯カメラ映像について、新宿署長(当時)はこう証言した。

原告代理人 防犯カメラ映像は、どの課で見ている?

新宿署長(当時) 聞かれてもわかりません。報告も受けていない。解析をした写真を見せていただいた。

 また、映像を見たと思われる生活安全課長(当時)は、映像からは原田さんが痴漢と断定できないと証言した。

原告代理人 見た映像から、原田さんが痴漢と断定する映像?

生活安全課長(当時) 断定できる映像はない

原告代理人 触っている映像は?

生活安全課長(当時) ない

 これまでの証言などで、刑事課のM警部補が特命捜査本部の捜査主任だということがわかっている。しかし、M警部補は防犯カメラ映像は見ていない。そのことは、前回の証人尋問でわかっている。

原告代理人 ビデオは刑事課では見た?

M警部補 見てない

 11月17日の証人尋問で、新宿署長(当時)は、刑事課と生活安全課の合同捜査本部として、「M警部補が申し出た」として、設置を承認している。捜査をM警部補に任せてきた。そして、生活安全課長もなぜか、M警部補にまかせきりになっている。M警部補は刑事課の課長代理。生活安全課長も口出しができないというのか?

原告代理人 刑事課と生活安全課の合同捜査本部の場合、どちらかが主体になる?

生活安全課長(当時) そうです。捜査主任に任せきりになる。

原告代理人 生活安全課の主体は?

生活安全課長(当時) M警部補が捜査主任なので、生安からはいない。

原告代理人 生安であっても刑事課の指揮をうける?

生活安全課長(当時) はい

原告代理人 あなたの方から指揮は?

生活安全課長(当時) ありません

 さらに言えば、痴漢をしたとされる現場も曖昧だ。

原告代理人 場所の特定は?

新宿署長(当時) 階段の途中とあるので....。階段付近かな。

原告代理人 「階段の途中」を「階段付近」と読むのですか?

新宿署長(当時) 送致書では「通路」とあった。

 また、相互暴行事件でもあるため、傷の確認をしているのかと思えば、傷の写真も撮っていない。

原告代理人 傷の確認は?

新宿署長(当時) 報告は受けていない

 特命捜査本部では目撃者探しさえしていないが、署長は特に指示してないことが証言でわかった。

原告代理人 目撃者探しの指示は?

新宿署長(当時) していません。カメラ映像の通行人が特定できれば確認したいとの話はあった。

原告代理人 相互暴行の?

新宿署長(当時) 痴漢と両方です

原告代理人 目撃者探しは重要ではないか?暴行を続けていれば人だかりができたのではないか

新宿署長(当時) 本件ではやっていない。必要かどうかは....

原告代理人 あなたにとっては必要ではない?

新宿署長(当時) そんなことはない。本件ではおまかせをしていた。

 証言尋問を聞いていると、この「特命捜査本部」(被告側としては「合同捜査本部」)は、刑事課の課長代理であるM警部補が中心になって捜査が行われたものの、合同捜査の一方の主体である生活安全課長が蚊帳の外に置かれている。そんなイメージがしている。しかも、新宿署長も、なぜか、M警部補の報告を追認しているだけ。実質的には、新宿署長の指揮下にない。課長代理であるM警部補に形式的には実権が与えられている格好だ。まさに「特命」なのではないか。だとすれば、誰から「特命」を受けたのか。証人尋問ではそこまでは明らかにされていないが......。 

Written Photo by 渋井哲也

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