中国がついに本格的に一人っ子政策に手を入れることを決心した。すでに報道されているように、夫婦のどちらかが一人っ子であれば、二人目をつくることを許可するというのである。早速、「漢方でも飲み始めて急いで作らなきゃ」なんてやる気を出した夫婦も少なくないはずだ。
しかし、現実はそれほど甘くない。新政策には注意書きがついている。
「いつから実施するかは、各地方政府の判断に任せる」。
つまるところ、上記の新しい政策が実施されるのが一体いつになるか、いまのところだれにもわからない。早々と実施を決めたと伝えられていた広東省ですら、その後「もう少し先になる」と急に後ろむきな話にすり替わってしまっている始末なのだ。
「やっぱりね」と多くの人が思ったであろうことは想像に難くない。一人っ子政策はこれまでも何度も変わる変わると言われ続け、しかしなかなか変わることがなかった。なぜそうなるのか、人口問題以外のところに理由があることが、中国の人たちにはよくわかっているのだ。
今年8月に発表されたある調査結果を見れば、その理由は一目瞭然だ。
浙江省のある弁護士が、中国全国31の省レベルの計画生育委員会(一人っ子政策の管轄部門)に、2012年1年間に徴収した「社会扶養費」の額を質問する書簡を送って行った調査だ。「社会扶養費」というと、まるで「子ども手当」のような響きだが、実際には真逆のものだ。中国では、最終的に何人、どういう風に子供を作っていいかは地方政府が定めているが、その計画出産制度に違反して子供を作った夫婦に対して課される罰金のことを「社会扶養費」というのだ。弁護士の書簡による質問に回答を寄せたのはわずか10の委員会だった。
その額がすごい。
福建省は20億7686万元(約350億円)、広西壮族自治区8億6321万元、海南省2498万元、河南省15億9856万元、吉林省6771万元、遼寧省9100万1900元、四川省24億5014万元、重慶市16億5000万元、雲南省2億2046万元、湖北省7億9817万元。
これだけで、合計約100億元(1670億円)である。全体の3分の1からしか回答を得られなかったことを考えると、全国ではこの3倍近い額が動いている可能性すらあるということなのだ。
まだ2人目を生むチャンスがある年代の夫婦のなかには、許可されるのであればぜひ生みたいと思っている人も少なくない。だが、「時期は各地方政府にゆだねる」となった時点で、あまり期待しないほうがいいと考えた夫婦が少なくないことも事実だろう。
彼らはこう思ったはずだ。
「罰金が入ってこなくなったら困るから、そう簡単に許可はされないな」
みんな、子供は欲しいが、世の中そう甘くないこともよくわかっている。
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Written by 劉雲
Photo by 中国、引き裂かれる母娘 -一人っ子政策中国の国際養子縁組の真実-
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