中国の月探査機「嫦娥3号」が12月14日夜、月に到達した。中国はこれで、米国、旧ソ連に続いて探査機を月まで送った三番目の国となった。「嫦娥3号」はこの後、月探査車「玉兎」を使って月面探査を行うという。
自国の宇宙船が月まで行ったというので、中国ではもちろんテレビが中継をするなど大々的に報じられたようだが、それに対する市井の人々の反応は様々だ。
中国版ツイッター「微博」上のつぶやきを眺めてみると、もちろん科学技術レベルが世界最高水準まで達した自国の偉業を喜ぶ声が多い。だが、当然ながらその一方で不平不満も多く噴出している。それを眺めると、いまの中国が内包する危うさが垣間見える気がする。
たとえばこんなつぶやきがある。
「汚職や医療、教育といった問題を解決するのが、月に行くより難しいってことがこれでわかったな」
「月着陸がなんだ。俺なんか家も買えないのに、役人の豚どもを養わなきゃならないんだ」
「月に行ったら、俺の給料は上がるのか? 月に行ったら、俺の子供の教育は安くなるのか? 月に行ったら、大気汚染はなくなるのか? 月に行ったら、立ち退きはなくなるのか? 月に行ったら、汚染食材はなくなるのか? 月に行ったら、手抜き工事はなくなるのか?......」
「何番目であろうと、祖国が軟着陸を果たしたという感覚はすごいもんだ。経済や不動産価格にも、軟着陸してもらいたいもんだね」
「国民の教育や医療ではビリから3番目の国だけどな」
「なんの意味があるんだ。中国のパスポートは屑紙と同じ、あるいはそれにも及ばない」
やせ細った子供の写真を掲載して、「これは北朝鮮の子供たちじゃなくて、わが祖国の子供たちだ。嫦娥の月到達を祝っているいまこの時、最も貧しい地区ではまだこんな子供たちもいるのだ」と訴えるものもある。
さらには、いろんな意味でかなりブラックなこんなジョークも。
「月は古来から中国の領土だった。5000年前の中国人はそれを月と命名し、歴史書に記載した。数千年前に我が国の古代の住民、嫦娥が月に定住したことは歴史が証明しており、よく知られたことだ。中国の月に対する主権は争う余地のない事実である。中国人民は我々の主権と領土を防衛する決心と能力を備えている」
ちなみに「嫦娥」というのは、月に住んでいるとされる中国の伝説上の美女で「玉兎」は彼女が飼っているという兎の名前である。嫦娥は、夫を地上に残し、自分だけ不老不死の薬を飲んで仙人となり、月に逃げ込んだともいわれている。
ただし、嫦娥に関する物語はいく通りもあり、そのなかには嫦娥は美女だったが、月に逃げた後、ガマガエルの姿になってしまったというものもある。
Written by 劉雲
Photo by 中国航天報より
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