10月9日の朝、ネット上に現れたあるニュースに北京市在住の多くの人々が釘付けになった。それは11月7日から12日までを休暇とするという内容だった。この期間中に北京市ではAPECが開かれる。車両の通行量を減らし、安全対策を容易にするために、北京在住の共産党中央と国、北京市の政府機関および事業単位、社会団体を休みにするというのだ。このニュースに対する反応はさまざまだった。
「まさか、その期間に会議の予定が入っているし」
「こんなに景気が悪いのに、また休むわけ?」
なんといっても北京の人たちは10月1日から7日まで、国民の祝日として国慶節(建国記念日)に休暇を楽しんだばかりである。
「デマでしょう」
「これ、そもそもの情報源はどこなわけ?」
多くの人が信じきれないでいるところに、すぐさま「11月7日から12日までを休暇とするというニュースはウソでした」という続報が出てきた。
「ほらね、やっぱり」
「なんだびっくりした」
しかし、そこからまた状況は二転三転する。やっぱり休暇になる、いやそれは嘘だ......。
「っていうか、何を信じればいいんだ!!」
インターネット時代。どこかのニュースサイトが掲載した記事を別のニュースサイトが転載するなどということは日本でもあるが、中国では日本とは比べ物にならないくらい簡単に、頻繁に行われている。その結果、"ニュース"として掲載された情報が、実は半年や一年前に別のメディアが報道した古い情報だった、などということは珍しくないのだ。
ニュースの受け手側もそうした事情をある程度わかっているからこそ、最初からどこか疑う気持ちを持って報道と付き合っているところがある。だがそれにしても、9日のこのニュースは多くの人を混乱に陥れた。中国中央テレビ(CCTV)をはじめ、北京の人気日刊紙「新京報」や新華社のサイト「新華網」など、普段はある程度権威のあるメディアとして認められているメディアで休暇のことが報じられても、まだ疑心暗鬼の人が少なくなかった。
「まさか、中央テレビまでウソのニュースを流すってことはないよね?」
最終的に、「これはどうやら本当らしい」とみんなが信じるに至ったのは、北京市政府が中国版ツイッター「微博」などを通じて休暇の通告を発表してからだ。
とはいえ、その後も「大学は休みになるの?」「うちの職場はどうなんだろう」と、すっきりしない人は少なくなく、小さな混乱は続いているが。さらには、状況がおおむね落ち着いたころになって、「APECで休みになるというニュースはウソでした」というニュースを流すサイトが登場し......。
この出来事で、ネットニュースを通じた情報収集の難しさと怖さを、多くの人が感じたのは間違いないだろう。
Written by 劉雲
Photo by Jonathan Kos-Read
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