海上自衛隊は、韓国済州島で10月10日~14日に開かれる国際観艦式への参加を拒否した。いわゆる「旭日旗」問題が原因だが、あえてその是非には触れない。ひとつだけ言えることは、韓国の一部勢力(すべての韓国人がそうではない。反日行為にうんざりしている人も少なくない)である"反日屋"とも言うべき勢力にとって、「旭日旗」は「慰安婦」「徴用工」とともに第三のカードと化した。今後もことあるごとに、このカードを切ってくることであろう。
さて、本稿では韓国ではなく台湾のことを述べたい。先日、筆者はプライベートで台湾を訪れた。二年ぶりの訪台だったが、ここ最近の日台関連のトピックスと言えば、台南市に登場した「慰安婦像」である。これは、"親大陸政党"である野党・国民党の敷地内に設置されたもので、親日的である台湾の世論では慰安婦の歴史とは別にして、設置には懐疑的・批判的なものも少なくなかった(あるいは関心が少なかった)。それに大きなさざ波を立てたのが、9月6日に起こった保守系活動家を称する日本人男性による慰安婦像へのキックだった。
男性は批判を浴びるとストレッチをしていただけ、などと苦しい言い訳をしていたが、ストレッチなのか否かは、ネットで流布している監視カメラの映像で各自ご確認いただきたい。各種情報によれば、マスコミ媒体に多くの広告を出すことで知られる某新興宗教の信徒とも言われている男性だが、それが影響しているのか、大手マスコミの反応はいまいち鈍い。
そんな状況下の台湾、それも台南を筆者は訪れたのだ。さぞかし、慰安婦像の周囲は物々しい状況になっている......と思いきや、現実はまったくそうではなったのだ。
慰安婦像は台南の繁華街にあり、交差点の筋向いには日本統治時代の台湾初のデパート「林百貨店」がある。このデパートは建物自体が文化財指定されており、現在は改修も済み、レトロなおしゃれスポットとして台南市民に親しまれている。つまり、慰安婦像は嫌でも目につくところにあるのだが、台南市民の慰安婦像に対する関心は日本人の筆者が驚くほど低い。
数時間現場にいたが、地元の人はまず気に留めないし、たまに外国からの観光客(中国人や日本人が多い)が目にしても足を止める程度。また、慰安婦像前にバイクを駐車する多くの若者たちのほとんどが、気にする様子も見られない。
もちろん、台湾の人々も"慰安婦問題"にそれぞれの思いはあるのだろうが、こと台南の慰安婦像に関しては、特定勢力の「プロパガンダ」とハッキリと看破しているように思えた。
そのような状況を考えると、自称・保守活動家の行いは愚行以外のなにものでもなく、あえて過激に言えば「売国的」行動ですらある。なんにしても、ネットを中心に加熱する一方の慰安婦像問題、そして「愛国心」だが、現実(現場)との乖離をあらためて感じさせられた訪台であった。(取材・文◎鈴木光司)
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