『冬物語』『予備校ブギ』世代必見! 校舎の7割を閉鎖『代ゼミショック』に見る予備校業界の凋落

2017年11月30日 

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「あだ花」から「第二の教育機関」に成長した予備校


「予備校とは、車のスペアタイヤのようなものだ。使わないで済むなら、それに越したことはない」
これはかつての予備校全盛時代に名物先生だった元講師の残した名言です。本来、高校3年間で足りるはずの勉強を前提として行われる大学入試。現実に東大でも浪人せず現役で入ってくる受験生のほうが多く、大学受験に失敗して通う予備校はどこか学校教育のあだ花のような存在でした。

ところが、そんな日陰の存在である予備校が「あだ花」どころか「若者にとって必要な存在」「もう一つの学校」として社会的にも認知され、「今、予備校が面白い」といわれたのが1980年代~90年代。当時は今と違って18歳人口も多く、ピークの1992年には206万人もの18歳がいました(現在では、118万人ほど)。にもかかわらず、大学の入学定員は高校卒業者よりもかなり少なく、18歳で夢敗れた若者が、来年度入試での捲土重来を誓って大量に予備校に入学するという時代背景が80年代~90年代にはあったのです。

お客さんが多ければ儲かるのは経済学の常識。予備校経営者は笑いが止まらず、授業に多くの生徒を集めてくれる人気講師には下にも置かない対応で高給を支給していました。


トップ講師は年収1億!? マンガやドラマの舞台にもなった予備校


むろん、生徒数も多かったバブルの頃の話ですが、「人気講師が予備校の教務部長から別室に呼ばれ、『好きなだけお取り下さい』と現金が詰まったアタッシュケースを開けて見せられた」といった都市伝説もあるほどで、トップ講師の年収は1億円以上というのはどうも本当だったようです。
40代以上の読者なら『冬物語』というマンガやテレビドラマにもなった『予備校ブギ』という話を懐かしく憶えている方も少なくないかもしれません。それらの舞台になったのは、予備校界最大手の代々木ゼミナール。代々木駅前の赤い看板で有名な予備校でした。


吹き荒れるリストラの嵐 人気講師といえども来年はわからない


ところが、その代ゼミが2014年8月、翌年3月に全国27校舎中20校舎を閉鎖すると発表、教職員には希望退職者を募り大幅な規模縮小を図ったのです。かつて、駿台予備学校(S)・河合塾(K)・代々木ゼミナール(Y)の3大予備校によるSKY戦争といわれた頃の面影はもはやなく、講師が他塾の採用試験を受けに行くため休講になった教室が目立つほどだったそうです。

実は、予備校業界が高給優遇というのは生徒数が多かったときに世間が勝手に作り上げた一種の幻想で、一般の講師や職員はむしろ中小企業並の待遇です。また、多くの講師は原則、1年契約の契約社員。失業保険もなく、自分で国民健康保険と国民年金に入り、退職金など望むべくもないという契約形態でした。確かに生徒の人気が上がれば授業数も多くなるし、授業一コマ当たりの単価(業界用語でいう「コマ給」)もアップするでしょう。しかし、来年度も籍が確保される保証はなく、最悪、紙切れ一枚で契約不更新(クビ)も十分あり得ます。ハイリスクな世界なのです。

予備校講師に憧れる理由の一つには、公立の小中高では、生徒指導など授業以外の雑用が多すぎ、授業に全エネルギーを注げないことや、校内の窮屈な人間関係に嫌気がさして授業に全力投球出来る職場で教えてみたくなることが挙げられます。確かに昨日まで分からなかった生徒が分かるようになり、成長していく姿を見られるのは教えることの最高の醍醐味でしょう。

とはいえ、早稲田塾が11校舎を閉鎖するなど現在の予備校はお寒い状況なので、就職や転職希望者は十分慎重になった方がいいでしょう。教えられる場は何も予備校だけではありません。


予備校に通えない受験生もノウハウは利用できる!


一方、予備校が縮小したら受験対策はどうするんだと不安になる受験生諸君も多いでしょう。地方だと予備校自体があまりありません。
しかし予備校の授業に出ないと合格できないというわけでは決してないし、独学で東大や医学部に合格する再受験生だっています。
ただ、予備校が出す参考書は確かに実践的なものが多いし、予備校の模擬試験は弱点把握や時間配分などの試験慣れ、成績の現在位置把握など利用価値が高いでしょう。これらを上手に活用すれば、予備校に通わなくとも成績アップ・大学合格は十分可能です。

現在では、500人教室を生徒で満杯にするとか夏期講習の人気講座を取るために徹夜組が出るといったことは絶対ありえないのだから、就職希望者も受験生も現実をよく知り、これまで予備校が培ってきた受験必勝ノウハウを上手に利用していく姿勢が何より大切なのです。


取材・文◎駒場文一

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