日本の漁村にもダメージが
北朝鮮籍と見られる漁船が相次いで、日本海沿岸で漂着している。
関連して菅義偉官房長官は9日に「北朝鮮の漁船と思われる船で、実は軍所有の木造船が日本海に漂着している例が、今月から見られ始めている。工作員など、いろいろな問題の可能性もあるので徹底して取締りを行っている状況だ」(NHK)と発言している。
工作員が乗船している可能性を念頭におく慎重さは必要だが、実は北朝鮮の船が漂着したのは今回は初めてではない。
2013年に80件、2014年に65件、2015年に45件、昨年に66件。そして、今年が83件(12月13日現在)だ。
北朝鮮は2013年に漁業拡大政策を慣行しており、その頃から漂着船が増えてきた。漁業量を増やすために船が沖合に出るようになったからだろう。今年は特に10~11月の間のイカ漁シーズンに、日本の排他的経済水域内の大和堆に北朝鮮漁船が多く目撃され、海上保安庁が放水し、追い払う事態となっている。
無理に沖に出て漁業をするのには、北朝鮮の経済状況が関係しているとの指摘も多い。それは「食料不足のために漁獲に必死になっている」ということではなく、北朝鮮の経済状況が上向き富裕層が増加し、基本的な食料である穀物でもない、そして肉よりカロリーが低くて健康的な海産物を求める層が増えているというのだ。
北朝鮮が中国に漁業操業権を販売したことも原因の一つとして考えられる。漁場を失った漁船が日本海側に押し寄せたということだ。
漁船が「軍所有」であることは、特視することでもないだろう。北朝鮮の水産業の多くは軍部が管轄しているからだ。また、実際に操業しているのは軍部ではなく、富裕層が軍に金を払った上で船を借り入れているケースが多く存在するからだ。
北朝鮮の船が、日本では禁止されている網によるイカ釣りを行っている姿も目撃されている。一杯ずつ釣り上げるのでなく、網で群れを一網打尽にしてしまうのだ。日本の漁業に損害をもたらすだけでなく、生態系を損なう危険性があることは言うまでもない。
いまにも壊れそうな木造船に工作員が乗船している可能性は低く、むしろこうした実質的な被害がより深刻ではないだろうか。
取材・文◎李ソヨン
写真◎編集部