お客さんもいたというのに!
精鋭の機動隊員40人、総勢では90人という警察官が動員され、エンジンカッターを使って強硬突入を図る......。こう聞くと、指定暴力団の事務所か、大口の賭博場への摘発かと思ってしまいそうだが、突入先はなんと15人の麗しき女性が接客してくれる"キャバクラ"であった。
2月3日未明、警視庁は時間外営業の疑いがある東京立川市のキャバクラ「CLUB Sign」へ強制捜査に踏み切った。エンジンカッターを使ったのは、再三の立ち入り要請にも従わず、シャッターを開けなかったためである。警視庁が文字通りこじ開けて突入した先には、前述のように15人の嬢と5人のスタッフ、そして15人の客がいた。この捕り物により、36歳の店長を始め3人の関係者がお縄となったのだ。
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今回の出来事で基本となるのは、キャバクラやクラブなどの接待系の飲食店が、風俗営業法によって深夜の営業が禁止されている、ということだ。これはいわゆる性風俗も同じことで、地域によって時間は異なるが、都市部の繁華街などでは午前1時、その他では午前0時から日の出までの間は営業禁止となっている。もっとも、接待行為のないバーなどはそのなかに含まれず、「深夜酒類提供飲食営業」として深夜の営業を許可している。
ではなぜ、立川のように法律を無視してまで営業を続ける店舗があるのか? これはシンプルな理由で、法律通りにやっていたのでは、「稼げない」からである。
キャバクラなどは、通常18時あるいは19時くらいからのオープンが多い。つまり、法令通りなら、(繁華街で)6時間程度の営業しかできなくなるワケだ。キャストに高い時給を払っている店側としても、これでは厳しいのは自明の理。そのため、ここ10年ほど風営法の適用が厳格になって以降は、朝キャバをオープンするなどあの手この手で生き残りを図っている。
もっとも、朝キャバなどはキャストの確保諸々、また営業利益の上でも必ずしも最上の方法とはいえない、いわば苦肉の策だ。そのため、手っ取り早い方策として、確信犯的に法を無視して時間外営業を行う店が少なくないのである。
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率直にいって、都市の動態を考えれば、税制の上でも深夜営業を認めてもよいと思うのだが、かつて筆者が警視庁に取材した際の答えは、「普通の人は寝ている時間」という極めてお役所的な回答だった。タテマエ国家としては、やはりそういうことになるのだろう。
いまひとつ、注目すべきは、時間外営業のキャバクラなどへの摘発背景に、暴力団対策という側面もあることだ。6、7年ほど前、歌舞伎町で深夜営業のキャバクラが摘発された際には、背後に関東の指定暴力団への上納金問題があると言われた。ちなみに、摘発された立川の店は5年で7億の売り上げがあったという。
今回の摘発の裏に、(時間外営業以外の)なんらかの意図があるかは、現時点でわからない。しかし、確信犯とまで言える深夜営業に、なにかしらの理由があってもおかしくはないだろう。(取材・文◎鈴木光司)
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