2日午後、銀座4丁目交差点で、「天下分け目の戦い」が行われた。東京都知事選に出馬している細川護煕元首相と舛添要一元厚労相が、時間を前後して街宣を行った。「助太刀」したのは細川氏側に小泉純一郎元首相で、舛添氏側に安倍晋三首相だった。その前に、これもまた都知事選に出馬している宇都宮健児氏の「ベビーカーデモ」が行われたため、交差点付近は人でいっぱい。舛添氏の街宣が始まる午後2時には、動けないほどになっていた。
友党からは公明党の山口那津男代表、高木陽介東京東京都本部長も参加した。公明党から2名がマイクを握ったのは、同党公認候補の選挙以外にこれまで見たことがない。現役の首相が都知事選でマイクを握るのも前例がないらしい。最終日ではなくこの日になった背景には、首相の外交日程の都合がある。2月7日からソチオリンピックが開かれるが、安倍首相は7日に北方領土の日の式典に参加した後、ロシアに飛ぶことになっている。
何よりの見ものは、舛添氏の街宣から細川氏の街宣に移行した時にどういう変化があるかである。細川陣営は意気込んでいた。まだ舛添氏らが演説していた時に、緑の布を身に付けた細川陣営が聴衆にビラを配布していたほどだ。
細川氏がマイクを握っている時、いろいろな人を見かけた。ひとりは自民党の平沢勝栄氏。知名度の高い平沢氏に、行きかう人が声をかけていく。平沢氏はそれににこやかに答えつつ、私にこう話してくれた。
「舛添さんの応援に来たので、細川さんの街宣も聞いておこうと思ってね。細川さんの話は長いですね。街宣は10分でまとめなきゃ」
平沢氏はめっぽう選挙に強い。その言葉に説得力がある。この時、細川氏の声は拡散し過ぎていた。それも平沢氏は指摘した。
「もっと音声に配慮しないといけないねえ。せっかくの演説なのに、これではちゃんと聞こえない」
舛添選対を取り仕切るM氏にも会った。M氏は細川陣営のボランティアからビラをもらい、こう言った。
「これでは誰が候補かわからないなあ」
ビラは小泉氏の写真が中心で、その下に細川氏を支援する有識者の顔が並んでいた。細川氏の写真は掲載されていない。M氏はこうも言った。
「それに、あれでは細川さんが目立たない」
その視線の先には街宣車の上で白い髪をなびかせる小泉氏の姿があった。シンボルカラーを意識して、最近は黄緑色のダウンジャケットを着用している。さっそうとした雰囲気で聴衆に手を振っていた。一方でマイクを握る細川氏は、黒いコートに緑色のスカーフを首に巻いていた。それが背景のグレーの建物にすっかり同化してしまっているのだ。
「この選挙、無効票が多いかもね」
選挙の専門家であるM氏は分析した。すなわち投票用紙に「小泉純一郎」と書く人が多いのではないかとのことだ。確かに細川氏から小泉氏にマイクが渡されると、聴衆が盛り上がる。ちなみに聴衆の中に、細川選対から「追放」された顔も見えた。細川氏を見つめる目に、好意は見てとれなかった。
選挙のプレイヤーは街宣車の上にいるとは限らない。
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Written by 安積明子
Photo by 小泉純一郎の「原発ゼロ」
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