官僚たちが"反乱"を起こしているのではないかと思っている。まずは3月2日に朝日新聞が報じた、「森友学園決裁文書書き換え」の件。朝日新聞が"現物"を提示しなかったから、「フェイクニュース」と騒いだ輩もいたが、まともに考えれば「情報源を守っているから提示しない」と気付くはず。
そもそもこれで朝日新聞がフェイクニュースを作ったりしたら、朝日新聞自体が潰れてしまう。それだけではなく、日本のメディア全体の信用も地に落ちる。
すでに"東洋経済オンライン"でも書いたが、あれは近畿財務局か大阪地検から漏れたとしか考えられない。詳細な動機はわからないが、少なくともこれらに、いまの政権のあり方に疑問を持っている人がいるということだ。
それを感じたきっかけは、文科省の前川喜平前事務次官が名古屋市内の公立中学校で講演した際に、文科省が市教育委員会に内容の報告や音声データなどの提出を要求した件だった。
文科省に前川氏の講演をリークした"犯人"は安倍晋三首相に近い自民党議員だと言われていたが、野党のヒアリングでは文科省の役人はその回答を拒否。代わりに「講演の翌日に地元紙に報道され、それを読んだ一般の人から同日に連絡があった」と述べている。
だが前川氏の講演は2月16日の金曜日に行われており、翌17日は土曜日で休日。この日に一般の人が新聞を読んでこれを知ったとしても、文科省に連絡できるはずがない。
その矛盾を野党議員に指摘されても、文科省の役人がたいしてたじろく様子を見せなかったことが印象的だった。むしろ自らが矛盾を出すことにより、ヒントを与えているような感じすらした。
そもそも官僚はリークした"前歴"がある。2002年の鈴木宗男事件だ。この時、共産党が得た証拠書類は差出人不明で郵送されたものだったが、後でそれは外務省から出されたものと判明した。
有力な政治家は官僚にとって時に目の上のたんこぶになる。必ずしもそれは、官僚組織の維持に限らない。政治家を近くで見ることが多い官僚の目には、一部の政治家あるいはそのとりまきは「国家の癌」として見えるのかもしれない。さらに踏み込んで癌を取り除こうとする者が出ても不思議はない。しかもそれがあちこちで抑圧されていた場合、一か所に穴があけば他からも噴出しても仕方はない。
今回のケースで見ることができるのは、経済産業省がその焦点になっていることだ。官邸の影の主である今井尚哉首相秘書官や"昭恵夫人付き"の谷査恵子氏、愛媛県文書で名前が上がった藤原豊元審議官や柳瀬唯夫元秘書官も経済産業省だ。
第2次安倍政権で実権を握った経済産業省とそれ以外の省庁では、かなりの温度差があるだろう。その差を埋めるべく他の省庁が反乱を起こしたという線も、今回はあながち否定できない。(文・安積明子)
【関連記事】
●森・加計問題で窮地に陥った、安倍総理からの執拗な抗議を受けていました|久田将義
●森友問題・麻生太郎財務相の「謝罪会見」なのに謝罪する気、永遠のゼロ|青木理
●森友問題で再注目される安倍昭恵夫人は幼児教育と同じくらい大麻にもご熱心?