摘発後も公開されている「個室プロレス」で話題になったJKリフレのサイト。
従業員の女子高生にプロレス技をかけさせたとして、JKリフレの経営者が労基法違反で逮捕された。 インパクトのある内容だったため、ネット上では笑い半分・モヤモヤ半分といった取り上げられ方をしている。
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『個室でプロレス技かけるJKリフレ 労基法違反容疑』
女子高生を雇い、男性客を相手に個室でプロレス技をかけるなどの接客をさせたとして、神奈川県警は、「横浜リフレ学園レインボーカラー」経営者、京谷真行容疑者(36)=横浜市西区=を労働基準法違反(危険有害業務の就業制限)の疑いで逮捕し、17日発表した。「法に抵触するとは思っていなかった」と容疑を一部否認しているという。
少年捜査課によると、京谷容疑者は2013年9~10月、同市神奈川区で経営する店の個室で、横浜市の高校2年の女子生徒(16)が18歳未満であることを知りながら、客の男に対し「腕ひしぎ逆十字」などのプロレス技をかけるなどの接客をさせた疑いがある。
(朝日新聞WEB版より引用 http://www.asahi.com/articles/ASG4K3GY2G4KULOB006.html)
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さて、この話は何を切り口にするかでバカネタにもお固い語り口にもなる珍しいケースだ。だが、ここではなるべく笑いの要素を排除し、「児童・未成年者を守る法律」の欠陥を指摘する。このJKリフレの問題は、過去にアップした児童ポルノ関連のニュース(※関連記事参照)とも密接に関わってくるテーマである。
上記の記事では主に 【児童ポルノフィギュア・擬似児童ポルノ・CG児童ポルノ】 などという誤報レベルの造語が拡散された点を批判したが、それと並行して「守るべき未成年者が忘れられている実情」 についても指摘させていただいた。
児童ポルノ規制や、表現規制を進めたがっている人間の中には、規制反対派をロリコン呼ばわりするタチの悪い輩もいるが、規制反対派の意見で最も多いのは以下である。
・実在する児童はなんとしても守れ
・二次元創作物は法の拡大解釈がされ過ぎて危険だから児童ポルノに含めるな
今回の一件は、この「実在する児童を守ること」と「二次元創作物まで児童ポルノに入れること」とを巡って、オトナ達が無様な政治闘争をしている間に、守られるべき未成年者が置いてきぼりにされ、危険極まりない状況に陥ってしまっていることを示す一例である。
現時点でも未成年者を守る法律や条例は様々あるが、今回のJKリフレがどんな罪状で挙げられたか確認して欲しい。なんと労基法違反である。今後捜査が進めば何か他の罪が追加される可能性はあるが、現時点では「ソープやヘルスの類と同じようなシステムで、未成年者と客を個室に入れ、その中でサービスを行う業態」は、性行為さえなければ労基法違反にしかならないのだ。
JKリフレ系の商売は、現在の法の目を掻い潜り、未成年者を性産業に従事させることで成り立っている。性器の接触や陰部の露出がなかったとしても、現役の女子高生らとイチャイチャできるなら喜んで金を出すというロリコンは多い。こうした店は客に性的な興奮を与え、また経営者もそれを解ってやっているのだから、明らかに性風俗店・性産業と看做すべきである。
また、そうした店で働いている女性からしてみれば、ヌルい内容で小遣い稼ぎができるのだから、それほど罪の意識もなく続けられてしまう。しかもこうしたケースでは仮に摘発を受けても逮捕されるのは経営者(場合によっては客も)だけで、リスクなく金だけ手に入れられるのだから、ホイホイと流れてしまう子がいたとしても仕方ないだろう。過去とある件で未成年者を取材した際に、他の街で普通にウリ(売春) をやっている子から、週に何日かアキバに来てJKリフレやメイド喫茶系の店でバイトしているという話を聞かされたことがあった。彼女いわく「稼ぎは減るけどリスクがないからおいしい」のだそうだ。
JKリフレのサービス内容だけを考えると、「それのどこが違法なんだ!?」という声も挙がるだろうが、JKリフレと売春などの違法な裸商売との関係性は、イメージビデオとAVのようなものである。
AVプロダクションを例に出すと、まず脱ぎのないイメージビデオで人前で肌を晒す仕事に慣れさせる。そして「もっとお金が貰えるから脱いでみようか?」と言いくるめ、脱ぎアリのビデオに出演させる。そして頃合いを見て「SEXしたことくらいあるでしょ?」などと最終段階の説得を行い、気付くとAV女優に落とされている。
これは女衒商売の基本だが、入り口はヌルい仕事でも、それを続けていく内に感覚が麻痺し、より稼ぎのいいハードな仕事へと進んでしまう。JKという看板が使えるのも数年(年齢詐称含む)だし、それを過ぎたら脱ぐかヤルかしか稼ぐ口がない。商売する側と金が欲しい側の思惑が一致し、JKリフレを入り口に、本格的な風俗嬢やAV嬢(最悪の場合は違法売春) へと道が繋がってしまっているのだ。
こうしたアホの子を言いくるめて日陰者の立場に追いやる流れを食い止めるには、JKリフレのような入り口の段階で摘発し、「未成年者を性産業の道具にすることは絶対に許さない」 という姿勢を見せるよりほかないのだが、先程も述べたように現行の法では労基法くらいにしか抵触しない。したがって、警察からすればどう考えても悪いと解っている業者がそこにいるのに、かなり無理やりな方法を採らないと逮捕・摘発もままならないのである。
この一件で「やり過ぎだ!」という声も見かけたが、未成年者を守るという観点から言えば、現状ではこうするより他に選択肢がないのだ。だからこそ、児童ポルノ問題・表現規制問題で戦っている専門家は「実際に児童を守る法の整備を再優先しろ、二次元創作物など二の次にしろ、早急に人的リソースを割かねばならないのは何か考えろ」と指摘しているのである。
だが、実際に法を整備し直すにしても様々な問題が噴出してしまう。このような「子供を使ったロリコン商売」をしているのは日陰者だけではないからだ。例えばアイドルグループがよくやっている握手会・ハグ会・ハイタッチ会などはどうだろう? JKリフレはシステムとして明らかに風俗店だったため摘発されて当然だが、未成年者との接触をエサにして金を稼ぐという意味では、アイドル業界で当たり前とされているこれらのサービスも抵触してしまうのではあるまいか?
法律の文面を作る際は「何をどうしたら違法」と言葉で説明しなければならない。だが 「未成年者と身体を触れ合わす事により性的な興奮を与えるような~」といった文言にしてしまうと、上に挙げたアイドルの方法論はすべて違法と看做されかねない。内容がソフトでも、時間的にほんの一瞬であっても、客が自分の欲望を満たすために、金で未成年者の身体を買っていると言えなくもないからだ。
これが行き過ぎると「女子小学生・女子中学生・女子高生に触ったら逮捕」「彼女らに欲情すること自体が違法」という訳の解らないことになってしまうが、さすがにそこまで行ったら法治国家とは呼べないし、今の時代に生類憐れみの令でもやりたいのかという話になってしまう。まさにこれが表現規制反対派が危険視している法律の拡大解釈である。
そのような馬鹿げた話にしないためにも、早急に専門家の知恵を総動員して、どこからどこまでと線引きを明確にし "今の時代に沿った未成年者を守る法律" を整備し直すべきなのだが、その専門家達のリソースが「児童ポルノ法の拡大解釈を巡る攻防」に割かれてしまっている現状がある。今の日本にはエロマンガやアニメなどより急務とされる事案が山積みなのだ。
お願いですから己の政治思想や裏に秘めた思惑はひとまず置いておいて、まずは実在する子供を守ることに専念していただけませんか?
Written by 荒井禎雄
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