危険ドラッグと児童ポルノ、地下に潜る両者の共通点とは

2015年07月29日 児童ポルノ 危険ドラッグ

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 "合法ドラッグ" と "児童ポルノ" を並べて語ると、話題になった事案を無理やり繋げているだけだと思われるかもしれない。 だが、この2つは非常に似通った "その後" が予想されている。

●歌舞伎町から姿を消した合法ドラッグ店

 警察が何度も大捕り物を繰り返した結果、新宿歌舞伎町には今現在合法ドラッグを扱う店舗は無い。 もしかすると超アングラな店が1軒くらい残っているかもしれないが、その可能性は薄いだろう。 なんたって最後まで営業を続けていた合法ドラッグ店の経営者が 「ウチが最後の最後まで粘ってた最後の1軒だと思うんだけど、もうリスクしかないし、客も来られないしで閉じました」 と言っているのだから。

 ちなみに 「客が来られない」 という点についてだが、警察は店を見張るのと同時に、そこに出入りする客の監視も行っていた。 全盛期には歌舞伎町だけで200軒以上あったのではないかと言われる合法ドラッグ店の閉店が相次ぎ、残り僅かとなると、人手に余裕が出来たからか、客への職質が非常に厳しくなったという。 その店が入っている雑居ビル等に立ち入ろうとするだけで警官に囲まれるのだから、仮に合法ドラッグ目当ての人間じゃなくても避けるようになるだろう。 それにより、残った僅かばかりの店にも客が行きたくても行けなくなり、兵糧攻めのような形で根絶やしにされたと言った方が近いのだとか。

 だが、この件については合法ドラッグ店に同情するつもりはない。 臨床結果も満足に出ていない、売っている方も使ったらどうなるか解らない危険な代物を売り捌き、何人も犠牲者を出したのだから、それくらいヤラれて当然である。

 ところが、これによって日本の合法ドラッグ問題が解決した訳ではない。 むしろ、大量に余った行き場のない商品をどうにかするため、より地下に潜るだけだ。 店舗への摘発が苛烈になった時期に逃げ場として選ばれたのはインターネットだったが、いくら隠語だけでやり取りしようとそこも厳しくなり、今や顧客リストを元にした直接取り引きくらいしか警察の目を逃れる手段はない。 広く客を募るのはもはや無理なので、過去の取り引き歴のある客だけにDMを送るといった、一昔前の裏ビデオのような宅配の手法に戻るしかないのだ。 ただし、ごく最近になってインターネット上にSNSのような閉じた方式で通販ショップを構える腹を括った人間も増えて来たので、今後はそれらに対する切り崩しが激しくなる事が予想されている。

●実は国内に不良在庫として存在している児童ポルノ(※)

※ ここで言う児童ポルノとは、子供の性行為が映っていたり、性器が丸出しになっているような物を指す。

 児童ポルノに関しても、実は国内に出口がなくて倉庫の肥やしになっている不良在庫が多数存在している。 これらの多くは、元々裏ビデオ業者等が所持していたマスターテープやデータで、古くはVHS時代の物も含まれている。 これらは児童ポルノへの締め付けが厳しくなって以降、ヤクザ者でも迂闊に取り扱えなくなり、かといって捨てるに捨てられず、ダンボール箱いっぱいに詰め込まれてどこかで眠らされている。

 たまに裏稼業の人間から 「これ買わないか?」 という話が回って来る事があるのだが、そんなものを預けられたとしても売り場が作れないため、よほど金に困って逮捕覚悟でもやるという人間以外は手を出せない。 では二度と出回らないかというとそうではない。 逆を言えば 「覚悟を決めた人間ならばやる」 という意味でもある。

 これらも合法ドラッグと同様に、過去の顧客リストに名前が挙がっている人間を厳選してDMを送ったり、SNS的な場へ招待するなどし、小規模な直接売買の形を採る事が殆どだ。

●合法ドラッグと児童ポルノは暴力団しか扱えない

 ヤクザ者でも手を余す児童ポルノだが、かといってどこかで暴力団が絡んでいないと、商売の元になる素材が手に入らないのも事実である。 ここまで規制が厳しくなり、表舞台から排除されると、シノギになるならないは関係なく、とりあえず暴力団にブツが集積される(※)。 その後は万が一の可能性を考え、組織とは直接結び付かない人間に商売をさせ、地道に細々と金に替えて行く。 生活苦から、危ないと解っていても手を出す人間はいるだろうから、児童ポルノも合法ドラッグも、そうした選択肢のない人間によって、今後も超アングラルートで売られ続ける事になる。 それを完全に根絶やしにするのは不可能だろう。

 ※ 誤解している人も多かろうが、合法ドラッグも児童ポルノも、そもそも暴力団だけがやっているという物ではなかった。 全くそっち系とは関係のない一般人でさえ、売る側に回れる状況だったのだ。

●予想されるのは古典的な詐欺

 治安を守るという観点から考えれば、多くの一般市民にとって素直に喜んでいい状況になったと言えるが、そうした人々でもほんのちょっとのイタズラ心で酷い目に遭う可能性があるという点は忘れずにいて欲しい。

 例えば、そこまで悪い物だと言われると、興味本位でアングラサイトを回って、実際に買ってみたくなる衝動が沸き起こるかもしれない。 だが上で述べたように今や暴力団でも処理の方法に困っているような難物なのだから、そう簡単にwww上で販売サイトが見付かるとは限らない。 むしろ合法ドラッグや児童ポルノが買えると思わせておいて、単なる砕いた岩塩や、色の付いた謎の液体などが送られて来たり、バッチリ腰までモザイクが入ったAVが送られて来る可能性の方が高い。 それに対してクレームを入れようにも 「お前はオレに違法な商品を扱えと言うのか? じゃあお前の家まで行ってやるから警察で話をしようか」 とでも言われたら手も足も出ない。 これは昔から使われている手口で、過去にそうした詐欺師が逮捕された事件もあったが、大多数の人間はそれをヤラれたら泣き寝入りするしかないだろう。

 このように、もはや合法ドラッグも児童ポルノも完全に暴力団の領分にあると考えるべきで、何かあった場合に執行猶予が付くかも解らないので、もはやそこにルールなどない。 合法ドラッグと明らかな麻薬の間に、線引きが無くなったと覚えておくべきだ。 よって、今からそれを求めるには自分がどっぷりとアングラ・イリーガルな世界に身を置くしかない。 もし悪魔の囁きに負けそうになった時は、自分の残りの人生と天秤にかけて、手を出すべきか否か考えて欲しい。

Written by 荒井禎雄

Photo by Little_Li

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