東南アジアのタイは比較的手軽に行けて治安も良いことから人気の海外旅行先の常連となっています。同じ仏教国同士ということで安心感があるのも人気の理由の一つですが、だからと言って日本の仏教とは違う面もかなりあるので注意が必要です。
ガイドブックにも説明が載っているとおり、日本の大乗仏教(北伝仏教)と異なり、タイの仏教は、厳しい修行と禁欲をもって救済の道が開かれるという上座部仏教(南伝仏教)です。また輪廻転生が信じられていて、現世で日々功徳を積む(タンブン)ことが来世に影響すると考えられていることから、日本よりもずっと仏教が生活の中に深く根付き篤く信仰されているのです。
そのためタイの寺院はいくら観光地となってはいてもあくまで仏教信仰の場なので、ノースリーブや短パンなど肌の露出度が高い服装は控えることになっています。
タイで僧侶は妻帯ができないだけでなく、女性に触れることも許されません。逆に女性も僧侶の身体や衣に直接手を触れることを禁じられています。
仏像の扱いにもかなり厳しいものがあり、その眼は海外にまでも。以前渋谷の某レストラン(既に閉店)がトイレに仏像を飾りとして置いたことから、仏像に向かって用を足すのかとタイのネット上で非難の声が上がり、東京のタイ大使館が店側に抗議するまでに騒ぎが発展したことがありました。
この手の話には枚挙に暇がなく、2003年のアメリカの映画『Hollywood Buddha』の宣伝ポスターが仏像の頭上に男性が座った写真のデザインだったため、これまたネット上でもマスコミでも大騒ぎとなり、タイ外務省がロサンゼルス総領事館を通じて映画監督に抗議文書を送り、映画監督が謝罪する顛末となりました。
2012年には仏像がマクドナルドのドナルド人形の色に塗られた画像がネット上で拡散し、例に違わず大炎上。巻き込まれたマクドナルド・タイランドは、社として預かり知らないことで全く無関係と関与を否定。外務省が画像の出所探しに乗り出しましたが、結局見つからなかったようです。
仏像や仏塔といった仏教遺跡の扱いに神経を尖らせているのも同様で、つい最近も3月8日にアユタヤ遺跡のワット・ヤイチャイモンコンで外国人と思われる女性観光客が仏像に上って記念撮影をしている様子を見かけたタイ人がその様子を撮影した写真をSNSに投稿したところ、不適切だと炎上していました。炎上はさらに写真投稿者にまで波及して「なぜ見かけたのに大声で注意しなかったのか」と批判される羽目に。
とくにアユタヤは、現地で今大人気の時代劇TVドラマの舞台となっていることから、タイ人の間でアユタヤ遺跡への関心が高まり、アユタヤ観光ブームが起きている真っ最中なんです。そんなこともあって仏教遺跡への非礼な態度はいつも以上に批判を受けやすい雰囲気なので、タイへ観光に行く人は十分に留意したほうがいいと思いますよ。(取材・文◎赤熊賢)
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