あの伝説のボクサーに聞いた 王者・村田諒太の世界防衛戦に向けて語った内容とは

2018年10月20日 WBA エディ・タウンゼント カシアス内藤 ゴロフキン ミドル級王者 内藤律樹 村田諒太

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内藤さん2[1].jpg カシアス内藤会長。一瞬の夏は終わらない。

 ノンフィクション作家沢木耕太郎の「一瞬の夏」の主人公でもあり、アリスの「チャンピオン」のモデルとなった名ボクサー・カシアス内藤さん。2004年に咽頭がんを患い余命三カ月とされますが、現在、長男内藤律樹東洋太平洋スーパーライト級チャンピオンを世界王者に育てるべく、活躍中です。その内藤さんに今週、日曜に迫った村田諒太WBAミドル級チャンピオンの二度目の防衛戦について聞いてみました。


カシアス内藤(内藤純一)
1949年5月10日兵庫県神戸市生まれ。神奈川県横浜育ち。元東洋ミドル級チャンピオン、世界ミドル級一位。現・「E&J カシアスボクシングジム」会長。ジム名は名トレーナーで「師匠」の故エディ・タウンゼント氏と内藤さんの名前「純一」の頭文字を取って「E&J」とする。
 

――いよいよ日曜に内藤さんの階級だったミドル級で村田諒太選手が防衛戦をやります。

カシアス内藤(以下・内藤)・村田はアマチュア時代から知っています。凄くいい子という印象。実力はあるよね、当然。あとアマチュア上がりだから上手さがある。相手をよく観察しているよね。試合中にどんどん観察していっている。アマチュアからの選手はうちのせがれ(内藤律樹選手。現OPBF東洋太平洋スーパーライト級チャンピオン)なんかもそうなんだけど、ラウンドを重ねるごとにどんどん観察して対応していくっていう頭の良い選手。アマチュアの選手って変えていくんですよ。相手に対して、臨機応変に。

 ――予想としてはどうでしょう。

内藤・勝つとは思うよ、負けはしないよね。相手選手はパンチはないかな......。そこそこか。ミドル級だからパンチがないったってあるんだけど。ただ相手の情報は少ないんだよ。勝つとは思うけど。まあミドル級になると一発があるじゃないですか。

 ――勝つとして、あとは......。

内藤・KOさえしていればいいってわけじゃなくて。アメリカのファンは目が肥えているから、いい勝負の相手だったら称賛するんですよ。でもどっこいの力がなくて勝ったらブーイングされる可能性だってある。アメリカはオッズが出るじゃないですか。だから内容が問われるかな。それによって、またアメリカでやれるかって事になるよね。

 ――ゲンナディ・ゴロフキン(元世界三団体ミドル級チャンピオン)と試合をやるという話も出ていましたね。

内藤・ゴロフキンは勝てない訳じゃないんだよ。チャンスはいっぱいある。ただ海外に出てやらないと。海外と日本は違うよね。そう言えば律樹が「ゴロフキンは強い」って言ってたよ。向こうで練習していたからね。とんでもなく強いって(笑)。やってみなくちゃわからないからね。海外でやって真価が問われるんじゃないかな。アメリカではチャンピオンという名前だけじゃ評価してくれないかな。「誰vs誰」「強い奴vs強い奴」の戦いを見に来る。だからタイトルマッチじゃなくてもお客が入るんですよ。皆、わかっているから。アメリカは賭けもあるしね。

――内容ですよね。

内藤・今度で評価が出るんじゃないのかな、アメリカでの。日本の興行は肩書を大事にするじゃないですか。チャンピオンの試合を見に行くけど「この人誰?」の試合は見に行かない。でも俺はそれは違うと思う。ランキング以上の力がある選手はたくさんいる。

――ところでジムに十年ぶりにくらいにお邪魔したのですが、「礼儀を大事に」という貼り紙が真っ先に目に入りました。

内藤・ボクサーとしてどうあるか、人としてどうあるか。それが大事。選手がリングに上ると俺、めったに声を出さないんですよ。トレーナーの中にはリング上で、いっぱい言っている人いるけどそんなに言われたってわからないよ、選手は(笑)。俺。選手だったから分かるけど。俺は一ラウンドに一回しか言わない、俺の方見たら、「ああだぞ、こうだぞ」って言う。それでいいんですよ。

――エディ(タウンゼント)さんもそうだったのですか?

内藤・エディさんもそうだよね。下手すれば「純、何やってるの!?」でお終いですよ (笑)。それで、自分で考える。

 俺、村田をなぜよそのジムなのに気にしているかっていうとね、アマチュアの時に、律樹に俺が教えているのをあの子はずーっと見ていた。何で村田を応援するかというとそういう所。表でやっていても体育館でやっていてもずっと見ていた。だから俺は村田を応援している。県も違うし、学校も違うから聞けなかったんだろうけど。でも一生懸命やろうとしている気持ちが伝わるから、あの選手を応援している。他のジムに文句言われちゃいそうだけど(笑)。

――いや、応援している分には文句は言われないんじゃないですか。でも上に行って欲しいですよね。

内藤・上に行って欲しいね。彼には三団体でも四団体でもいいから、まとめて食ってもらいたい。

――(笑)


 いや、本当ですよ!(笑)。絶対やってもらいたい。彼にはそれだけのチャンスがある。でも......ボクシングって面白いよね。(聞き手・久田将義)

内藤さん律樹選手2[1].jpg長男、内藤律樹OPBF東洋太平洋スーパーフェザー級チャンピオンと。

※内藤さんの話は多岐に渡ったのですがまたの機会に。

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