過去何回かに渡って、大手メディアの "児童ポルノ" という単語の乱用・誤用を批判したが、今回は切り口を変えてメディア側への警告を発したいと思う。 "児童ポルノ" という単語を便利に使い倒し、正義漢ぶっていいこと言った気になっていると、痛い目を見ますよという内容だ。
まず確認しておきたいのだが、児童ポルノ法が改正され、単純所持などに対しても罰則が設けられたという情報は頭に入っているだろうか? 1年の猶予期間があるとはいえ "児童ポルノ" の所持・掲載(提供)・製造・売買などは違法行為なのである。 したがって "児童ポルノ" とは、犯罪そのものを指す単語だと言っていい。
では、次に以前掲載したこの記事を読んでみて欲しい。
・偏向してでも日本を「ロリコン大国」にしたいAERAと北原みのり氏のトンデモ記事
(http://tablo.jp/case/society/news001569.html)
ここで取り上げたAERAの北原みのり氏の記事には、児童ポルノではない商品の画像に対して、さも児童ポルノであるかのようなキャプションが付けられていた。 この記事が掲載されたのは児ポ法が改正されるより前ではあるが、これが仮に猶予期間が終わって罰則が設けられた後だったとしたらどうなるだろうか?
北原氏のように児ポの範疇を無理やり広げたい人間が迂闊に "児童ポルノ" とレッテル貼りをすると、容易く名誉毀損や信用毀損が成立してしまう。 犯罪行為を犯している訳でもないコンテンツ及びその提供者に対して、メディア上で 「こいつらは犯罪者だ」 と名指しで石を投げつけているも同然なのだから、当たり前の話であろう。
納得がいかないという方のために解りやすく言い直すが、何もしていない他人に対して公然と 「万引きした」 だの 「人殺しだ」 だのと暴言をぶつけたらどうなるだろうか? "児童ポルノ" が違法行為を指す単語となってしまった以上 "児童ポルノではない物(合法コンテンツ)" に対して "児童ポル(違法コンテンツ)" であると触れ回る行為は、コンテンツ提供者の社会的信用を著しく傷付けることになる。 であるなら名誉・信用毀損で訴えられても仕方がないだろう。
とても簡単な話だと思うのだが、ご理解いただけるだろうか?
これまでは定義もあやふやで、裁かれて当然の事をしでかした人間にしか罰則はなかったが、単純所持などにも罰則が設けられた以上、単語の使い方には充分な配慮が必要になる。
しかし、各メディアの児ポ叩きやオタク叩きを見ていると、どうもそうした危機意識が欠落しているように見受けられるのだ。 これは私の勝手な推測だが 「ロリコンやオタクなんてサンドバッグだからやり返してこないだろう」 と、ナメてかかっているとしか思えない。
児ポの定義を広げたい一派にしても、摘発を免れたジュニアアイドルのイメージビデオや、そもそも児ポに含まれていないアニメ・マンガ・ゲームなどを取り上げる際に、間違っても具体的な商品名を挙げるなどして 「ほらここにも児童ポルノが!」 などとやってはならない。 これまでしれ~っと使えていた手法が、今後は使えないのだ。(個人的には賠償金を払わされるのは彼ら彼女らなので勝手にやってくれとは思うが)
もし仮に児ポではない物(例えば二次元コンテンツ) も児童ポルノに含むべきだと主張したいならば、「現在は児童ポルノに含まれていない○×のような商品も、児童ポルノと見做すべきだと思うのですが、いかがでしょうか?」 といった遠回しな問題提起から始めるよりないだろう。 これはそうした流れに持って行きたい一派にとっては明らかな後退だと思うのだが......。
法規制はこのような息苦しさを生むため、円滑な議論・討論の妨げになる可能性がある。 よって罰則規定を厳しくするより前に定義付けを強固な物にして欲しかったのだが、いまさらそれを言っても手遅れだ。
今は児童ポルノ問題と同じか、それ以上に危険な "ヘイトスピーチの法規制" という大きな動きがある。 こちらはコンテンツ・商品ではなく、言葉や言動を裁く法案なので、児ポと同じような失敗をしてしまったら、児ポ問題以上に酷い展開に陥るだろう。 現状の試案ではまだ罰則までは考えていないようだが、もし仮に罰則まで設けるとなったらTwitterなどでの言った言わないの口喧嘩が、容易く裁判沙汰に発展するかもしれない。
子供を守る、弱者を守るといった方便で法規制を進めるのは構わないが、今の日本では守りたい対象そっちのけの醜い諍いが起きるだけのように思えてならない。 法で規制したからといって問題が解決するとは限らず、むしろ議論や問題提起すら封じられるという点で、問題解決までの道のりが遠くなる場合もあるのだ。
Written by 荒井禎雄
Photo by Nappiness
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