今年8月にこのような記事を掲載させていただいた。『スクエニ本社を家宅捜索「ハイスコアガール」問題の不可解な経緯』(http://tablo.jp/culture/money/news001617.html)
これはスクウェア・エニックスが発行する月刊コミックガンガンに連載されていた『ハイスコアガール』というレトロゲームを題材にしたマンガが、SNKプレイモアの許諾を得ずにゲーム画面やキャラクターを使用していたため、著作権法違反であるとして刑事告訴+家宅捜索にまで話が及んでしまったというもの。
しかも無断で使用しただけではなく、コミック中に <©SNKプレイモア>という表記があり、さも許諾を得たかのように 「すべて解った上で偽装したのではないか?」という疑いまで持たれていた。
この一件はスクエニ社の出版部でのトラブルだったとはいえ、皆さんご存知の通りスクエニ自体が老舗のゲームメーカーである。同じゲームメーカー同士なのだから、ここまで話がこじれるまでに相当マズイやり取りがあったと考えるしかない。
さて、当初は家宅捜索にまで至った以上、企業の名を汚さぬよう早期の解決が図られるのではないかという声も多かったのだが、事態は想像しうる限り最悪の方向へ進んでいるようだ。
というのも、今月17日に大阪府警が『ハイスコアガール』の作者や、スクエニ社の出版部の役員・社員らを、合計16名も書類送検したというのである。普通はこの手の問題が生じた場合に書類送検される人数は、直接の担当者・作者・責任者らの中で、特に悪質もしくは責任が重いと看做された人間だけのはずである。ごく平均的な出版社・編プロなどであれば、多く見積もっても数人までといった規模に納まるであろう。
それが16名も書類送検されたという事は、スクエニ社内部で警察が呆れるほど酷い罪のなすりつけ合いが始まってしまったのではなかろうか? 今回書類送検された作者含む16名は全員が容疑を否認しており、それぞれ「誰それが許可を取っているものと思っていた」といった主張をしているという。これでは責任の所在が解らず、警察からすれば組織的な隠蔽の線でも疑わねばならなくなる。 それであれば16名という大人数にも納得が行くのだ。
スクエニ社はこうなる前にSNKプレイモアが納得する形で謝罪すべきだったと思うし、それ以外の選択肢などありはしなかったはずだ。今回のようにあまりに無責任な対応をしてしまっては「スクエニは組織として悪質な手法で他者の権利を踏みにじる会社だ」と看做されても言い訳ができまい。
また、今回の一件で最も可哀想なのは『ハイスコアガール』の作者である。そもそもマンガ家が生み出す作品の中に "社会的に問題となる部分" があったならば、それを修正するなり、作者と作品を守れるよう取り計らうのが編集者(出版社) の役目である。それをしないのであれば「じゃあ編集者がいる必要はない」という事にもなろう。スクエニ社は編集者・編集部としてやって当然の仕事を怠ったのだ。
この事件の経緯を見る限り、スクエニは作者も作品も守る気がなく、あろう事が何かトラブルが起きた場合に作者に罪をなすりつける事さえすると受け取れてしまう。これでは他でも仕事を取れるクリエイターは、わざわざスクエニの仕事など請けたがらないだろう。
私自身もゲームっ子だったため『ハイスコアガール』は非常に懐かしい気持ちで読んでいたのだが、作者まで書類送検されたとなっては、グッズ展開なども含めたすべてのプロジェクトが尻切れトンボになってしまいそうだ。
エニックスもスクウェアも、ゲームを通して日本中の子供を楽しませてくれたゲーム業界の雄なのだから、これ以上その名前を汚すような事はして欲しくない。 過去に生み出した数々の名作およびそのファンのためにも、クリエイターや作品を守る事を第一に考えて欲しいと願う。
Written by 荒井禎雄
Photo by ハイスコアガール(1)
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