敷居が低すぎて入るのに勇気が必要な店が池袋にある。
廃墟かと思うほど、ガラクタが店前に溢れ出す。赤ちょうちんとメニューの掲示で、かろうじて飲食店の体裁を保っている。
熊のキャラクターの笑顔がなんだか切ない。
普通の感覚では、この店に入るのは避けるかも知れない。
しかし、この店構えから漂う香ばしい珍フレーバーに黙っていられない私は、一念発起して店に近づいてみた。
「いらっしゃいませ。どうぞお入りください」
とあるが、扉の足元には内側から段ボールのバリケード。
歓迎なのか拒否なのかわからない。
店主はツンデレなのか。
それでも勇気を振り絞りいざ入店。
激狭。
この写真で店内のほぼ全て。
情報では5席とあったが信じられない。
写真の左側が小上がり席。
ただし、テーブルの下にも物が詰められているため、靴を脱いで座るなんてことは出来ない。
小上がりに腰掛け足は通路に投げ出すという、暴走族よろしくの「ハコ乗りスタイル」。
小上がりといっても、上がりきれないのだ。
三席あるとされていたカウンター、たしかに椅子は三つ。
しかし肝心のカウンターも物に侵食されている。ガラケーの説明書までもがせり出し、料理の置き場はほとんどない。
ハコ乗りスタイルの小上がりと、料理の置けないカウンターで合計五席となっているようだが、果たしてこれは席とカウントしていいのか。
看板メニューである「素うどん」と「磯辺焼き」を注文。
身長140cmほどのごく小柄な女性店主でさえ、ほとんど身動きの取れない厨房。
待っている間に、店内を見回す。
お客さんが持ってきたものを置いていったらこうなったという。
しかも今は全てが売り物だそう。
これもまさか売り物なんだろうか。
マリリンモンロー、知らない犬、なめ猫、ビートルズ。軸足がどこにも置けないカオス状態が果てしない。
洋の東西問わず、ひたすら雑多に物が置かれ貼られている。地球を小さく小さくまとめて凝縮したら、この店が完成するのではなかろうか。
誰だろう。脳みそがジワジワしてくる。
と、素うどんが出来上がったようだ。
海苔・ゴマ・ネギ・三つ葉がかかっている。
柔らかに茹でられた麺と、醤油とダシだけではない独特のタレが美味い。
素うどんを食べている間に、店主は磯辺焼きを焼いてくれる。
そして・・・
「ちょっと、後ろのスイッチ押して」
磯辺焼きのせいで店内に煙が充満したら、換気扇のスイッチは客が担当するらしい。
焼き上がりまでもう少し。
雑然とした店内で、もっとも神々しく奉られている存在がある。
神を祀る位置に福原愛が飾られている。
何か、店主の特別な想いがあるのかも知れない。
磯辺焼きが焼けた。
関東風のしょっぱめな醤油味を軸にした独特なタレが美味い。
大塚駅前で、磯辺焼きの屋台をやっていたという店主。再開発などで移転を余儀なくされ、ラーメン屋などを経てこの店に至る。
本当はラーメン屋もやりたいが厨房が狭すぎてできないと嘆いておられた。
夜は居酒屋として酒も出しているという、カオス飲食店、普通のランチに飽きたら訪れてみてはどうだろう。
◼︎素うどん 四國屋
東京都豊島区池袋2-9-6
03-5391-4930
11:30〜翌2:00
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