60年以上に渡って築き上げられたコレぞ独り飯の美学・歌舞伎町「つるかめ食堂」|ビバ★ヒルメシッ! 文◎加藤梅造

2017年12月05日 

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私は昼飯を食べるときはたいてい独りだ(夕飯もそうだけど)。

だからお店を選ぶ時は、その時に自分が何を食べたいかの他に、独りでも落ち着いて食える店かどうかというのが重要になる。

吉野屋や王将など無難な店を選べばてっとり早いのだが、チェーン店だと面白くもなんともないので、なるべくなら避けたい。

そんな私にとってのお手本は、久住昌之と谷口ジローのコンビによる『孤独のグルメ』だ。
ドラマ化されてヒットしたのでご存知の方も多いだろうが、主人公の井之頭五郎が仕事で訪れた土地の知らない店に入って、独りで食事をひたすら食べるというハードボイルド・グルメマンガだ。

五郎の食に対する美学が端的に表れているのが単行本12話の中の一コマだ。
いつものように飛び込みで入った板橋区の洋食屋で、店主のオヤジが見習いの店員(外国人労働者)を客前で怒鳴り散らす様子を見ていて我慢できなくなった五郎は、店主にこう言って抗議する。

「モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず、自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで......」

うーん、渋すぎる! これぞ独り飯の神髄。


ロフトプラスワンのビルの裏に


前置きが長くなってしまったが、新宿歌舞伎町で働いて20数年、私が今までもっとも訪れている飯屋は定食屋『つるかめ食堂』だ。
創業は昭和31年というから、いまや歌舞伎町の老舗中の老舗である。
ロフトプラスワンのビルの裏にあるので単純に近いっていうのもあるが、メニューが豊富でどれも安くて美味いのはもちろん、独りでも気楽に入れるのが足を運ぶ一番の理由だ。

001.jpg店は新しく建て変わっているが、なかなか風格のある門構え。観葉植物の手入れも行き届いていて、繁華街のオアシスといった佇まいだ。

トンカツ、エビフライ、生姜焼き、肉野菜、ハンバーグ、天ぷら、焼き魚、煮魚、カツ丼、天丼、カレーにチャーハン、凡そ定食屋にありそうなものはだいたい揃っている。もちろん納豆、冷や奴、ひじき、とろろなど、定食で大事なサイドメニューも豊富でどれも安い。
ちょっと変わった所では、名物の肉天定食やジンギスカン定食、麦とろ定食などはつるかめ食堂ならではの定番メニューと言えるだろう。

002.jpgこの日わたしが注文したコロッケ定食(750円)に納豆(100円)と冷や奴(100円)。ボリューム満点で950円なり!

11:30の開店から23:30の閉店時間までお客さんはひっきりなしに訪れる。
主にブルーカラーがメインだが、歌舞伎町という場所柄、ホストや水商売のオネーチャンなども多い。
時には、キャバクラの店長と思わしき男性とホステスっぽい女性が、店を辞める辞めないの深刻な話をしていたり、ホスト風の男性と同伴の女性が「俺、今月ナンバーワンになれそうなんだ」「がんばって!応援するよ(貢ぐよ)」なんて話をしていたりして、そういう会話をなんとはなしに横で聞きながら肉じゃがをつつくのもなかなか楽しい。


003.jpg壁に貼られたメニューもチェックしたい。愛知名物「きしめん」とかもあるんだな。今度食べてみよう。

004.jpg気付く人は気付く、レジ横に貼られたメッセージボード。これは女将のこだわりとのこと。脱原発のためお店にはグリーン電力を導入しているそうだ。すごいよね。リスペクト!

言ってみれば、日常と非日常が境目なくつながった世界という感じだろうか。
再び『孤独のグルメ』からひくと、第4話の赤羽の飲み屋(定食屋)で五郎が「俺の生活とはまったく無縁と思える世界がここにこうして展開されている。この奇妙な空気の肌ざわりがなんとなく現実感を遠のかせている」という思いに耽る場面を連想させる。

とにかく、歌舞伎町で何を食べるか迷ったらまずは「つるかめ食堂」を訪れてみて欲しい。
60年以上に渡って築き上げられた独り飯の美学がここにはあるのだ。もちろん安くてあったかい食事も。


文◎加藤梅造


つるかめ食堂
東京都新宿区歌舞伎町1-15-8白木ビル1F
https://www.facebook.com/tsurukameshokudou/

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