つい先日、何十年ぶりかで銭湯を利用しました。温泉やスーパー銭湯みたいな施設にはたまに出かけるのですが、普通の街のお風呂屋さんという佇まいの銭湯はとんとご無沙汰。筆者の幼少期はお風呂のない家に住んでいた子どもも多く、夜に友人同士で銭湯に出かけていたものです。昨今は家風呂が当たり前になり、わざわざ銭湯に出かける機会もなくなりました。
そんな現代の一般的な銭湯はどうなっているのか。気になったので調べてみることにしました。
<グラフ1>公益財団法人「全国生活衛生指導センター」のサイトで公開されているデータ(※データ元は厚生労働省「衛生行政業務報告」)をもとに、筆者がグラフ化しています(クリックで拡大)
グラフ1は一般公衆浴場(いわゆる街の銭湯)の推移を示したデータですが、やはり銭湯の数は年々減少していました。昭和50年には約1万9000件もあったのが、平成25年には約4500件ですから、40年弱で1/4以下にまで激減していることが分かります。
とはいえ、いわゆる「公衆浴場」と呼ばれる施設は一般公衆浴場(銭湯)のほかに、個室付浴場、ヘルスセンターやサウナ施設、スポーツセンターなどもあります。こちらは銭湯ほど減っていませんし、スポーツセンターなど増加傾向にある施設も見られました。
ちなみに個室付浴場は個室でないとまずいサービスを提供する夢の施設なんかも含まれているはずで、こちらも増加傾向。まあ、家に風呂がある・なしという問題ではないので、さもありなんという話でしょう。
<グラフ2>厚生労働省「衛生行政業務報告」のデータをもとに、筆者がグラフ化しています(クリックで拡大)
グラフ2は公衆浴場の営業許可と営業廃止の件数推移となります。こちらは一般公衆浴場だけではなく、公衆浴場全体を調査したデータ。
平成19年から廃止件数が許可件数を上回るようになりました。公衆浴場のなかでも一般公衆浴場の減り幅が最も大きいわけなので、おそらく営業廃止件数の多くを占めているはず。年毎に増減はありますが、例年コンスタントに廃止する施設があるので、銭湯業界は厳しい状況が続いているようです。
<グラフ3>厚生労働省「衛生行政業務報告」のデータをもとに、筆者がグラフ化しています(クリックで拡大)
グラフ3は都道府県の一般公衆浴場数を調べたもの。一般公衆浴場には公営と私営の2種類ありますが、その総数をランキング化しています。漠然と東京が1位だろうと思っていたのですが、トップは大阪府の579件。2位が東京都で561件、3位が青森県で303件と続きます。そして、下位は1桁台という県もありますが、健康ランドのようなヘルスセンターが多かったり、温泉施設が豊富だったりするので、公衆浴場がないというわけではありませんのでご安心を。
とはいえ、昔ながらの銭湯は、施設そのものの数が減るわ、利用する機会も少なくなっているわで、踏んだり蹴ったりという状況なのは間違いないでしょう。
おそらく現代の子どもは「銭湯って何?」という子も多いのではないでしょうか。フォークの名曲「神田川」の「あなたはもう忘れたかしら」ではないですが、いつの日か、人々の記憶からも消えてしまうのかもしれません。(文◎百園雷太)
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