なぜだ? なぜなんだ!? スパイ活動しているとしか思えない「擬態する定食屋」

2018年03月16日 定食屋 小田和正 花屋 

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 文京区は東京大学の近くに一軒のお花屋さんがあります。

 名前はフローリストKT。

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▲外観


 外観はご覧の通りいたって普通で、この連載で紹介すべき様子はありません。
 ところが近づいてみると。

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▲メニュー


 ランチメニュー? 花屋に?
 そうなんです。ここはおそらく世界で唯一「定食が食べられるお花屋さん」。

 おそるおそる入口の扉をあけて
「あのぅ、食事ってできるんですか?」
 花屋さんに「食事できますか?」と尋ねるという途方も無い違和感に苛まれます。

 中にいた女性の店主さんは普通のことのように迎え入れてくれ、カウンターだけの席に案内されましたが、そこからの景色は異様そのもの。

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▲内観


 まだ全てを受け止めきれていない僕に「何にしますか?」と店主。
 僕が決めあぐねていると、店主によるメニューの紹介が始まりました。

 メニューそれぞれに、

1、これをメニューとして出すことにした経緯
2、今朝からの仕込みの話
3、このメニューの評判
4、自らのこのメニューへの感想

 が盛り込まれます。それが4種類分あるので、メニューの紹介に10分を要します。
 結婚式で、小田和正の歌にのせて新郎新婦の生い立ちから現在までの動画が流れるようなものです。

 過剰すぎる情報をいただき、僕が注文したのは「焼き魚セット」。

 店主は厨房(花屋に厨房があるのも異様)で調理を始めるましたが、そこから店主自身の小田和正がスタート。

 カタールに住んでいたことやイギリスに28回行った話、故郷宇都宮の話から家族についてなどなど。
小田和正も歌い終わってしまうくらいに、話は続くのです。

 そして焼き魚セットが配膳。

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▲焼き魚セット


 今度は焼き魚セットの小田和正が始まります。白米の小田和正や、けんちん汁にいたっては具材一つ一つの小田和正が展開。
 焼き魚の奥に見える小鉢は特別に出してくださったポークチリ。もちろん小田和正つきです。

 これだけ語りまくるだけあってとても美味しい定食で、完食し満腹。

 すると、先ほどまでは口角泡を飛ばすように語っていた店主が突然、クレモンティーヌかと思うような小声になり(僕以外にお客さんはいなかったので、その必要はないと思うのですが)、この店で出しているという「餃子」の小田和正がはじまりました。

 それは他のメニューに比類ないほどの熱量で語られ、「サービスで焼いてあげる」と厨房へ消えて行ったのです。
 焼いている最中に、餃子の小田和正2コーラス目がスタート。

 宇都宮の名店の餃子を個人的なつながりで仕入れているが、門外不出の餃子が東京で食べられることが広まってしまうと、本店のブランドが下がってしまうということで餃子は撮影禁止。また、店名をネット上に公開することも禁止しているそうです。
 頂いてみると、餃子にあまりテンションをあげない上にすでに満腹の僕でも「うまっ」と声に出てしまうほど美味。

 焼き魚セットにサービスのポークチリ、さらに餃子までを詰め込んだ僕の腹は極限。腹をさすっていると、なぜか注文をしていないカレーの小田和正がはじまりました。

 もしかしてこれは...。

 そうです。出て来ました。カレーが!
 確かに美味いんです。本当に美味い。
 ただ、苦しいが先に来ちゃってます。

 僕が美味いと苦しいの間を右往左往していると、カレーに入れた具材を指折り数えて、さながらカーテンコール。さらには、今回のカレーには入れなかった豚肉や牛肉についてまで紹介。
 出てない役者までカーテンコールに登場する舞台なんて、かつてあったでしょうか?

 カーテンコールも終わり、食後のコーヒーも頂いて、お会計をしようとしたところで、「あ、お抹茶出すから待ってて」と店主。

 まだ終わってなかったんだ。僕を太らせてドナドナするとしか思えません(何度も言いますが、全てが美味しいし、ありがたいばかりのサービス精神です)。

 お抹茶をいただきながら、おそらく本当に最後と思われる「この店の小田和正」を聞きます。

 はじめは普通の花屋だったこと、料理好きが高じてこんな不思議な店ができたこと、芸能人の悪口やお褒めの言葉などなど。

 そして本当にお会計。
 ここまで何人の小田和正がでてきたことか。小田和正の集団です、ODA48です。
 金額は900円。ポークチリも餃子もカレーも抹茶も、本当に全てがサービスだったのです。

 ここでようやくわかりました。
 過剰な小田和正もサービスも、全ては料理が好きで店が好きえで人が好きという、店主の「愛」からくるものだったのです。

 たくさんのサービスにお礼を申し上げて、帰ろうとした僕の背中に、「あ、ちょっとまって」と店主の声。

「まだ何か食わされるのか!?」と怯えましたが、こんなお土産までいただきました。

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▲お土産の花


 もちろんサービス。

 世界唯一の「定食が食べられる花屋」は、過剰なまでのサービス精神を持ち合わせた女性店主が切り盛りする、「愛」に満ちたお店でした。


フローリストKT
東京都文京区本郷2丁目19-8 インクニビル1階
定休日:第3木曜、年末年始

(連載・Mr.tsubaking 『どうした!? ウォーカー』第七回)
取材・文◎Mr.tsubaking

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