「200(議席)くらいですかね」と何気なく言った私に、目の前の男は「えっ? 200?」と声を揃えた。永田町のある建物の一室。そこは倉庫のような薄暗い室内だった。二人は与党関係者。
都議選の際は、ストローでアイスコーヒーを飲みながら、当たり前のように言い切ってしまった。
「小池さんのボロ勝ちでしょ」
その時も与党関係者は沈痛な表情になってしまった。逆に私は驚いた。「だってそうでしょ。千代田区長選で負けちゃったんですよ。無理ですよ」
「ですよね......」と言い重い空気が部屋に降りた。結果、小池旋風が吹き荒れ、自民党都議戦は歴史上の大惨敗。が、この結果は誰でも予想出来ただろう。
今回の衆院選はどうだろうか。
・小池新党が立ち上がる
・野党共闘が成立する
この二条件があれば自民党の議席287議席が200に減るのではないかという予想だ。
「でもそれは小池新党が小池(呼び捨てだった)が代表か......。共同代表になるか。あとは野党共闘ができたらの話でしょう」
「そ、そうですね。その二条件ができればの話ですよ」と私はあわててフォローした。
が、その日の午後。彼らが恐れていた事態が起きてしまった。小池都知事が「希望の党」という国政政党を立ちあげ、自身が代表になる旨を発したのだ。その後安倍首相が衆院解散を発表する声明を出したのだが、テレビの映った安倍首相の顔は不愉快そのものだった。首相は感情がすぐに顔に出る。
小池都知事に対する反論は「都政のこと、築地移転、ラッシュ解消など公約がまだきっちり結果が出ていないのに国政政党の代表になるのはおかしい」というもの。その通りだ。しかし、小池都知事は新党ブームが起きた1992年から、新党のうまみを知っている。
対立軸を打ち出し、「それを打ち破るのは自分」と、立ち向かう姿勢が国民に受けるのを体感している。むしろそれが彼女の得意技だ。都議選の際は「東京都議会の闇」と立ち向かい、今度は安倍政権の強引さと立ち向かうという構図。これは「都政をおろそかにしている」というまっとうな批判も薄れるほど世論は小池新党、というか希望の党に流れるだろう。
案の定、記者会見は小池劇場と化していた。また小池新党、希望の党代表(とここでは呼ぶことにする)は脱原発を打ち出した。これは何を意味するのかというと未だに国民に人気のある小泉純一郎元首相の協力を取り付けるためのアピールだ。小泉純一郎氏の脱原発は本気だ。
候補者の応援演説で、小池・小泉のコンビが街宣車に立つ姿を、そして国民が二人を熱狂的な拍手で出迎える様子は容易に想像できるのではないか。
自民党の巻き返しはあるか。まだ噂レベルの域を出ていないが、ある大物を民間から口説いているという。「彼」が出馬したとしたら、確かに強烈な対抗勢力となるだろうが......。(麻木明)
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