北海道北見市の自宅で田中美勝(裁判当時48歳)は激怒していました。
何故のんは言うことを聞かないのか。
彼は女優であるのんさんのブログのコメント欄に書き込みました。
「俺が必ずお前を殺す」
「お前は俺が殺すからねキチガイ」
「お前は俺に殺されたいようだからね。その通りにしてやるよ(笑)」
「必ずお前は殺すから安心してね」
彼はIPアドレスから身元を割り出され、脅迫罪で逮捕されました。のんさんは彼のコメントを見て「いつ誰に襲われるかわからない」と恐怖心を抱いていたそうです。所属事務所は彼女を一人で行動させないようにするなどの対応を迫られました。
彼は以前から頻繁に彼女のブログにコメントをしていました。その内容は猫の話など何気ないものでしたが、家族は不穏なものを感じていました。証人として出廷した兄は「以前の書き込みは応援のメッセージで、まさか罵倒や脅迫をするとは思ってませんでした。ただ件数が常軌を逸していて...ものすごく馴れ馴れしい感じでした。『大丈夫か? 』と思ってました」と話していました。
彼はのんさんが能年玲奈さんとして活動していた時からのファンでした。当時のブログにももちろん書き込んでいて、手紙を書いたこともありました。手紙には本名、住所、電話番号、顔写真も載せていました。
手紙を送った後、ブログに手紙を送ったことを書き込むとそのコメントに対して彼女から反応がありました。
「自分は能年さんと交流ができている。」
そう彼は思い込んでしまいました。その思い込みはいつしか、
「彼女のことは『友達』だと思ってました。」
という勘違いに発展していきました。会ったことすらないのに。
彼は手紙の中で仕事の『助言』も書いていました。『性を売り物にしない方がいい』、そんなことを書いたそうです。
その手紙を送った後に彼は、
『能年玲奈はキスシーンや性的なことを匂わせるシーンはNGにしている』
というネットの記事を読みました。この記事は彼の勘違いを加速させました。彼は記事を読んでこう思ったのです。
「彼女が自分の意見を参考にしている!」
もちろん誤解ですが、そう気付くことは彼には出来ませんでした。
『助言』を破ってしまった彼女に対しての怒り
この手紙から数年後、のんさんは彼の『助言』を破ってしまいます。映画賞の授賞式で肌の露出が多いドレスを彼女は着ていたのです。
「自分の助言と違う」
焦り、驚き、悲しみ、そして怒り...、彼の書き込みは「変質者」「クズ」「死ね」などという罵詈雑言へと変貌していきました。
何故あんな言葉を書いたのか、という質問に、
「自分のコメントを見て不愉快な気持ちになって『また田中さんにこんなことを言われるならやらない方がいいな』と思ってくれれば、と思って...忠告のつもりでした。」
と答えていました。多少キツい言葉を使っても大丈夫だと思っていたそうです。何故なら彼はのんさんの『友達』だからです。
「中年漁りをしている」
という書き込みもありました。のんさんのブログには彼以外にも悪質な書き込み(『今度イベント会場に襲いに行く』など)をする者がいて、ブログ上だけとは言えそんな人間と彼女が関わっていることが許せなかったそうです。
他人の言葉に対しては憤っていた彼でしたが、逮捕されるまで自分の言葉を省みることは出来ませんでした。
「弁護士の先生に考えを改めるよう言われて...やっと現実が理解できました」
そう泣きながら話していた彼に下された判決は罰金30万円という軽微なものでした。彼がのんさんと関わることは今後ないと思いますが、対人関係の築き方を改めない限りまた別の問題を起こしてしまう気がします。
昨今、SNS上では他者への聴くに耐えない誹謗中傷や差別的な言葉が飛び交っています。そんな言葉を発する人たちの根底には彼と同じものが流れています。彼同様、その異常性を自覚できていないようですが。
誰もが一度、言葉の使い方や発信の仕方を考え直してみるべきなのかもしれません。(取材・文◎鈴木孔明)
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