会場となった武道館は超満員!(本サイト撮影)
4月22日、日本武道館にて「乃木坂46 生駒里奈卒業コンサート」が開催されました。グループ結成から5曲連続でセンターを務め、黎明期からグループを牽引してきた生駒里奈の卒業公演です。
一部報道によるとチケットの倍率が30倍だったというこの公演。会場にはもちろん超満員の1万2000人のファンが押し寄せ、全国のライブビューイング会場も大盛況だったようです。
オープニングでは、オーディションやデビュー当時の映像が流され、生駒の歴史を振り返る特別なコンサートであることを強く印象づけます。そして、デビュー曲『ぐるぐるカーテン』のカップリング曲『乃木坂の詩』から本編がスタート。続いてセカンドシングル『おいでシャンプー』を披露し、デビュー当時の初々しい姿がフラッシュバックします。
生駒のソロ曲『水玉模様』では、相変わらずの"味がある歌"で会場を魅了。「最後までこんな感じかあ」と自虐を交えた生駒でしたが、デビューからの7年間で成長した姿だけでなく、変わらぬ"生駒ちゃんらしさ"を感じることができたのもまたファンとしては大きな喜びだったはずです。
NARUTOサプライズで号泣
そして、4月25日発売のシングルから3期生が『トキトキメキメキ』を、2期生が『スカウトマン』を披露。さらに、生駒のソロダンスパフォーマンスを挟んで、生駒にとっての最後のセンター曲となる『Against』、シングル表題曲『シンクロニシティ』と続いていきます。
特筆すべきは、発売前のシングル収録曲をここで初披露したということでしょう。このコンサートはもちろん生駒里奈を送り出すためのものですが、だからといって、過去を懐かしむだけのものではない。乃木坂46の未来をしっかりと意識し、前に向かって進んでいく姿を見せてくれたのです。生駒の卒業公演なのに、卒業する生駒の方が現役のメンバーたちの背中を押しているような感覚でした。
生駒といえばAKB48との兼任を経験している唯一のメンバーです。今回のコンサートでは、生駒がAKB48のチームBメンバーとして初披露した『初日』を3期生と、渡辺麻友と2人で歌った『でもでもの涙を』を同じく秋田県出身の鈴木絢音と、AKB48選抜総選挙で選抜入りして歌った『心のプラカード』を2期生と、それぞれ披露しました。兼任という貴重な経験を、パフォーマンスを通して後輩たちに伝える生駒の深い"乃木坂46愛"が伝わってきます。
デビュー曲『ぐるぐるカーテン』でフロント3人を務めた、生田絵梨花、生駒里奈、星野みなみの「生生星」によるMCがあったり、番組で共演してきたバナナマンやスタッフからのメッセージがあったりなど、卒業公演ならではの演出もありつつ、だからといって涙ばかりにはならず、基本的には和やかで楽しい雰囲気に包まれていた卒業公演。そんななかで生駒が号泣したのは、アニメ『NARUTO -ナルト- 疾風伝』のオープニングテーマ曲にもなった『月の大きさ』を披露したあとのことです。
作品の主人公・ナルトからのメッセージと、作者である岸本斉史の直筆イラストがサプライズで映し出されると、そこまでほぼ泣いていなかった生駒も号泣。「一生頑張ります。生きててよかった!」と、感動をぶちまけていたのです。これまで、乃木坂46にすべてを捧げてきた生駒なのだから、これくらいのサプライズはあって当然でしょう!
齋藤飛鳥からのメッセージ
メンバーたちからも、生駒に対してたくさんのメッセージが送られました。高山一実の「長生きしてほしい」という言葉や、涙で言葉にならない様子を逆に生駒に笑われてしまう生田など、感動的で楽しいシーンがたくさんありましたが、中でも印象的だったのが齋藤飛鳥からのメッセージです。
齋藤は、生駒が卒業を決めた時、「生駒ちゃんが乃木坂として活動したいと思えるグループでいられなかったこと」に悲しさや悔しさを感じたと告白します。もちろん、前向きな卒業であることをしっかりと理解した齋藤は、今後の生駒を応援したいと思うようになり、さらに誇らしいメンバーともに乃木坂46として新しい夢を叶えていきたいと感じるようになった、と続けたのですが、それでもやはりなんともいえない複雑な思いが垣間見られた瞬間でした。グループのことを思うあまりに、齋藤は生駒の卒業に対して瞬間的ではありますが、「悔しさ」を感じてしまったのでしょう。
そんな齋藤飛鳥の言葉を含む、メンバーたちからメッセージを受けた生駒は「この人たちでなかったら、今私はここにいない」「このメンバーでなかったらここまでできなかった」と仲間たちへの深い思いを伝えます。さらには、「乃木坂46が今後活躍していくために、私は活躍したい」と、卒業後の自分の人生もまた乃木坂46に強く結びついたものであるとの思いを明かしました。齋藤が乃木坂46のことを思うのと同じように、生駒もまた乃木坂46のことを思って卒業を決意したのです。
「もっと上手くなりたい」「もっと険しい道を登りたい」という夢を抱いて卒業する生駒里奈。グループに捧げてきた青春を取り戻す時間が始まるかのようにも見えますが、生駒の心の中にはずっとずっと乃木坂46があり続けるのです。生駒は自分が卒業後に活躍することで、乃木坂46というグループの価値を高め、今後卒業していくメンバーたちへの"良き前例"になろうとしている......そんな思いが伝わってくるようです。
齋藤飛鳥だけでなく、乃木坂46のメンバーたちは、そんな思いを十分に理解し、生駒を送り出していきます。そしてこれからも前を走り続ける生駒の背中を見て、成長していくことでしょう。
『制服のマネキン』としてのプライド
本編ラストに歌ったのは『制服のマネキン』。生駒は「私が死ぬまで私の代名詞になるでしょう」と曲紹介をしました。初代センターとして矢面に立っていた生駒が、自分の感情を押し殺して「乃木坂46の顔」という役割を担っていたのであれば、それはまさに感情のない「マネキン」であったと言えるはず。そこに苦しさや葛藤があったことはいうまでもありません。
しかし、晴れやかに卒業する生駒の姿から伝わってくるのは、「マネキン」であったことに対する後悔などまったくないということ。そして「乃木坂46の顔」であったことを誇りに思っているということ。『制服のマネキン』としてのプライドを見せつけるかのような、堂々としたパフォーマンスでした。
ダブルアンコールのラストでは、秋元康総合プロデューサーが生駒をイメージして歌詞を書いたという『君の名は希望』を披露。感動的ではあるものの、決して湿っぽくない清々しさを感じるラストは、生駒里奈の、そして乃木坂46の明るい未来を照らしているかのようでした。
乃木坂46のメンバーとして最前線に立ち続けてきた生駒の歴史を振り返るという側面もあった今回の卒業公演。しかしそれは生駒の歴史だけでなく、乃木坂46の歴史そのものを振り返るような内容にもなっていました。自分の卒業公演なんだから、何もかも好きなようにやってもいいのに、結果的に「乃木坂46」にフォーカスしてしまう。最後の最後まで乃木坂46に青春を捧げる生駒里奈の美しき姿がそこにありました。(取材・文◎大塚ナギサ/写真提供◎AKS)
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