8月中旬あたりからツイッターで、<#思ってたんとちがう育児>というハッシュタグがトレンドとなっているようです。育児の理想と現実を書き、<思ってたんとちがう育児>とオチをつける遊びで、たとえば、理想は聖母の笑みであかちゃんよちよち〜なんてところ、現実はぎえーぎえー泣き狂う子どもと必死の形相で対峙する......などの、育児あるある。
なかには子どもを高みに演出したいような、いやいやーいくらなんでも嘘松やないのかいこれはーと疑ってしまうものもありますが、ストレス発散の場で詮索はご法度ですよね。
このハッシュタグはたちまち共感を呼び、人気の投稿には3万RTがつくなど、育児をする者たちの憩いの場になっているようです。ちなみに「思ってたんとちがう」の元ネタは、『デザインあ』(NHK Eテレ)のワンコーナーで、日々Eテレに助けられている者たちならではのネームングセンスです。
さて、ざっと投稿主を見てみると、どうも女親ばかりで、男親の投稿があまりみることができません。こうした大喜利に参加できないシャイボーイたちなのかなと思う一方、ほかのハッシュタグでは嬉々として参加していることを思うと、イクメンはどこにいったのだろうと不思議に思うばかりです。いや、もしかしたらもう、廃れてしまっているのかもしれません。
というのも、イクメンという言葉がメディアに登場したのは約8年前。もうそろそろトレンドが一新されてもいい頃だし、最近では反イクメン派も現れているのです。
そもそも(筆者の独断と偏見による)イクメンの定義は、
『あかちゃんが泣けば「ママー、うんちー」と、ママはうんちじゃないのにわけのわからないことを言いつつ、「ママは手が離せないみたいだから、パパが変えてあげよう」とわざわざ名乗り出て、おしりふき半袋をごっそり使ってあかちゃんのおしりをピカッピカに磨き上げる。といったオムツ変えを休日に数回行い、自信をつけ、インスタグラムで出会った女性の出産報告ポストに、「懐かしいなー沐浴剤のスキナベーブの匂い。まあ俺は沐浴のほかに、オムツ変えもミルクあげも服を着替えさせるのもやったよ。そのうちなんで泣いてるかわかるようになった」とコメント。出産数日の女性に「イクメンですねーすごい!」と気を使わせ、「イクメンじゃないよ。ただ父親になっただけ。女性はお腹に赤ちゃんがいるから親になる実感あると思うけど」と勘違い甚だしい認識をどやあと披露し、出産直後の女性をさらに疲れさせる男』のこと。
こう認識しているので、イクメンはネガティブな言葉なんですよね。だから反イクメン派が登場するのもごく自然な現象です。
そんな反イクメン派の筆頭といえば、超売れっ子放送作家の鈴木おさむ氏。さきごろ上梓したエッセイ『ママになれないパパ』(マガジンハウス)で、「なりたいのはイクメンではなく、『父親』」とし、父親育児の新たな価値観を作ろうとしています。
だからといって、庶民は鈴木氏のように1年間育児休業なんて取れるわけがありません。庶民が同じようにしようものなら、お金がないから毎日イライラしっぱなし。自分で仕事がコントロールできるお金持ちの男性にしか、同じことはできません。
でも、そういったお金持ち男性には、「父親」になるよりも「イケダン」になってくれることを、妻は望んでいるのではないでしょうか。
イケダンとはセレブ志向女性向けファッション誌『VERY』(光文社)が発明した"イケてるダンナ"のこと。
家事育児スキルが高く、仕事もバリバリこなして上司部下周囲の人間すべてが信頼し、子どもの世話はもちろん妻への愛も止まらないハンサムという、すべてを備えたまるでファンタジーのような男性を指します。
以前、そんな『VERY』で連載を持つ小島慶子さんに取材をした際、「イケダンは男に枷をはめすぎで、男性はさぞキツかろう」とおっしゃっており、「そのかわり絶対浮気していますよねー」と和やかに盛り上がったことがあります。
でも、イケダンは浮気していいんですよ。お金があるから、妻もそんなことでいちいち目くじらたてないでしょうし、妻も妻で美しいからイケダン以外のいい感じに恋愛を楽しめる男性の数人くらいいるはずです。
だいいち、『VERY』では、性のフィールドワーカーこと宮○真司先生が連載をしているのですから、浮気には寛容なはずですしね。わたしのフィールドもワークされかかったことは、ここだけのハ・ナ・シ。(文◎春山有子)
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