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バラエティか報道か?沖縄基地建設を放送した『ニュース女子』問題|久田将義コラム

2017年02月06日 ニュース女子 久田将義 報道 沖縄

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『ニュース女子』という番組が炎上している。TOKYO MXが放送している番組で沖縄・高江にヘリパッド移設工事現場に、ジャーナリスト井上和彦氏が沖縄に出向き、周辺を取材するのだがテロップで、反対派を「テロリスト」呼ばわりしたこと(他もあるが割愛)などが問題となっている。すなわち偏向と言っても差し支えない内容だった。

 報道番組は公正中立を原則としているが、どこかしら「自メディアの主張」をするのが本来の姿である。言い方を変えればどの媒体も偏向している。が、この回の内容は僕ですら理由は後述するが「引いた」構成だった。

 反対派が、過激さを増しているのは事実だろう。が、機動捜査隊の警察官が「この土人が」と反対派に放った言葉は、絶対容認できない。知り合いの、丸暴(暴力団専門の警察官)に聞いても「私もデモの警備に駆り出されましたが、市民に対して『土人』などという言葉を投げるのは言語道断。警察学校で習っていたものとして恥ずかしい」と言っているほどだ。ヤクザ顔負けの迫力でガサ入れをする荒くれの丸暴の刑事でも、である。

『ニュース女子』問題を受けて、2月2日付け東京新聞で異例ともとれる「お詫び記事」が掲載された。よほど事態を重くみたのだろう。すなわち、かの番組は東京新聞論説副主幹長谷川幸洋氏がメインMCを務めており、これに対して読者にお詫びするといった内容だった。が、いまいち、「誰に対して」「何を」「誰が」謝罪しているのかが、わかりにくかった。

 僕は一回ばかり、この番組に出演したことがあるのだが、実態はいわゆるバラエティ番組であり、おじさん男性有識者が20~30代の女性タレントに向けて、「世の中の色々な事を教えてあげますよ」という文化人がタレント並みに一生懸命笑いを取るという番組で、僕はあのような「声の大きな人の意見が通る番組」は苦手なのを再確認したものである。かの番組は、在阪の放送作家に話を聞いたところ、ディレクターや放送作家たち三人くらいがノリで制作したのではないかという。僕もそんなところだと思う。それが、このような問題になるとは計算違いだったのではないか。「バラエティだからいいじゃん」と。

 ある問題が起きた時、色々な要素を混同してはいけない......という原則に従えば、「高江反対運動の報道の在り方」と「お詫び広告を載せた東京新聞と論説副主幹長谷川氏の立ち位置」について分けて、論じるべきと考える。

 ここでは、東京新聞のお詫び記事に関して考察してみたい。まず、長谷川氏が一ジャーナリストとして、新聞社の方向と違っていようがそれは氏の自由だという事だ。ちなみに東京新聞は僕が政治経済専門の会員制雑誌「月刊選択」編集部に在籍したころ、記者の方たちにはかなり健筆をふるっていただいたのと、話していて「感じの良い」記者が多かった(反対に朝日新聞や読売新聞の特に政治記者は、ちょっと雰囲気が異なる。言ってしまえばプライドが高い)。

 長谷川氏は、ご自身の肩書「東京新聞論説副主幹」というものによって、テレビのオファーが来ていたはずである。氏と同席した有識者によると喜々としながら「テレビに出ると講演が舞い込んできて忙しい。記事を書くよりテレビ・講演がおいしい」(大意)と言っていたという。だったら東京新聞をお辞めになった方がよいのではと思った次第だ。前記したように当初は「東京新聞論説副主幹」という経歴によって仕事のオファーが来ていたはずだからである。書くのが面倒ならば、「ジャーナリスト風タレント」として振り切ったら如何。

 それならば、メインMCとして、台本通り進行し、高江の取材VTRが偏向していても、それに異を唱える事なく、他のコメンテーターたちと同じく「テレビ・新聞が明らかにされていない反対派の実態がわかりました」という番組の趣旨の乗っかったコメントをしても、百歩譲って善しとしよう。

「百歩譲って」と譲歩したのは、反対派をテロリスト扱いした点にある。これは、重く受け止めたい。テロリストの残虐性はいうまでもない。無辜の市民を己の思想を押し通すためにむごたらしく殺害してきた。人ひとりの、いや、数十名数百名の尊い命を奪う行為と同列に論じるのは、理解できない。反対派が仮にものすごく過激だったとしても、である。

「バラエティだから」、と言って言論の自由を甘く考えていたのではないか。特に、長谷川氏は、立場は高江建設に賛成だとして、あるいは反対派に対して疑義を抱いていたとしても、この文言には言葉の重さを承知であるジャーナリストであるならば異議を唱えるべきではなかったか。

 かつて、タレントでありながら、ご自身の番組の構成に番組中に異議を唱えて、中座した人がいる。上岡龍太郎氏だ。氏はタレントでありながらジャーナリスティックな資質を持ち合わせていた。名物番組「探偵ナイトスクープ」において、心霊現象を肯定するようなVTRが流れた際、上岡氏か色をなしてディレクターに詰め寄った。「心霊現象をあるかのように放送する趣旨の番組は容認できない」と番組途中で控室に戻り、抗議の意を示した。気骨のあるタレントである。上岡氏と長谷川氏、どちらがタレントでどちらがジャーナリストなのか、という事すら考えさせられてしまった。

Written by 久田将義(東京ブレイキングニュース編集長)

Photo by Photommo

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生身の暴力論

報道への温度差。

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