真夏日の中で行われた炎天下での参議院議員選挙。事前の世論調査通り、自民党の大勝で幕を閉じた。これで自民、公明の連立与党は参議院でも過半数の議席を獲得し、衆参両院で安定政権の座を手にした。選挙区で自民党が議席を失ったのは岩手選挙区と沖縄選挙区だけで、民主党大惨敗の結果となった。
民主党は党組織じたいの崩壊、分裂の危機を抱え込んでしまったといえる。3年3か月の政権交代で有権者の支持を決定的に失った民主党の自業自得という他はない。参議院大敗北の責任は海江田万里代表と細野豪幹事長にあることは明白である。
しかし、細野幹事長は8月一杯で辞任することを決めたが、海江田代表は続投の意向を示している。民主党内に代表を引き継ぐ政治家がいないことを如実に証明しているともいえる。本来ならば、岡田克也、前原誠司あたりが再浮上するところだが、二人とも地元に張り付く選挙戦を展開したが、ともに敗北した以上、責任は免れない。
選挙後に行われた民主党の常任幹事会では、東京選挙区で議席を失った責任の一環として無所属の大田原雅子候補を応援した民主党最高顧問の菅直人の離党や除名処分が問題化した。東京選挙区は鈴木寛と大田原の二名を公認する予定だったが、共倒れする可能性がある事から、細野幹事長の最終判断で鈴木寛に一本化するという経緯があった。
それを不服とした菅直人が、無所属で立候補を決めた大田原雅子を応援し、民主党公認の鈴木寛も次点で落選となった。誰が責任をとるかでもめたのである。まさに、貧すれば鈍すの見本みたいな話である。細野幹事長は、辞任表明に当たり、菅直人の反党行為と鳩山由紀夫元総理の発言が参議院選挙敗北の一因になったとして、この二人の「処分」を最優先事項としている。しかし、鳩山元総理はすでに民主党を離党し、政治家も引退している。この上、どんな「処分」を下すというのか。まさに八つ当たりという他はなく、民主党幹部の乱心ぶりである。
民主党大惨敗とは真逆に意気揚々としているのが、自民党・安倍総理だ。しかし、選挙戦では、カンジンの憲法改正、消費税増税、TPP,原発再稼働などに関しては争点にすることを巧みに避ける戦術をとった。円安と株高を達成したアベノミクスの雰囲気だけで選挙戦を制したともいえる。安倍総理の背後では霞ヶ関官僚、財界、米国、大手メディアが援軍を務めた。
政党乱立で対抗軸を打ち出せなかった野党の敗北は予想通りだった。東京選挙区において無所属で当選した山本太郎候補の健闘が唯一の救いだった。業界で干され、メディアからも敬遠された山本太郎はもはや失うものはない。支持者の支援やボランティアで国政に活躍の場を得た以上、一人でも暴れまくってもらいたいものだ。福島第一原発では汚染水を海に垂れ流していた事実も発覚し、東電もしぶしぶ認めた。地元漁協にすれば、死活問題だ。おそらく、自民党は原発再稼働を着々と進めるだろうから、山本太郎議員は原発再稼働反対派のシンボルとして今後の活躍に期待したい。
自民党が敗北した選挙区に沖縄がある。米軍基地の押しつけで、理不尽な差別を強いられてきた沖縄県民は安倍総理や石波幹事長、閣僚クラスが次々と応援に駆け付けたが、自民党公認、公明党推薦の安里政晃候補は野党推薦の糸数慶子議員に3万3千票差で敗れた。
沖縄の民意はオスプレイ強行配備反対であり、辺野古新基地建設反対である。驚いたのは投票日翌日には、普天間基地の野嵩ゲート前に2メートル以上の金網フェンスを突貫工事で築き上げたことだ。基地のゲートと一般道路の間にある小さいスペースは昨年10月のオスプレイ強行配備以来、反対派の抗議行動が展開されてきた意思表明の場所である。
沖縄で反自民党候補が勝利した翌日にこの仕打ち、沖縄県民はさらに怒りを強めている。安定多数を得た自民党は国家権力を使って強行に沖縄統治支配を強めていくだろう。しかし、自民党が勝ったにもかかわらず、投票率も低く、国民の半数は安倍政権の政策に反対であるという事実を謙虚に受け止めないと、いずれ致命的なシッペ返しを食う可能性がある。
安倍晋三、自戒すべしである。
Written by 岡留安則
Photo by Tom Curtis
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