楽天イーグルスが初の日本一。星野仙一監督は4度目のシリーズ采配で悲願の初優勝。
「過去にシリーズ4度目までに優勝なしは8度全て敗退した西本監督しかおらず、星野監督は2人目の不名誉を免れた。」(スポニチ)
試合終了後、ある一冊の本をさっそく読み直してみた。2009年に出版された「日本シリーズ全データ分析 短期決戦の方程式」(小野俊哉 ちくま新書)。
WBCや五輪での国際試合も注目されたこの頃、著者は「短期決戦の本質を定量的に導き出せるものはないか、と考えたときに浮かんだのが、日本シリーズ」だとし、日本シリーズ全試合データ分析をしたのだ。
「分析結果を少しだけ予告すれば、短期決戦で最も大きな鍵を握るのは、エースでも4番でもなく、監督です。不思議なことに、日本シリースでは常勝を誇る監督と、敗戦のほろ苦さしか知らない監督がいます。」
その短期決戦に結果を残せていない監督として分析されたのが星野仙一だった。
著者は、日本シリーズに複数回以上出場した監督20人の成績を、ある「XとY」の数字で調べた。
X=先頭出塁し得点する確率を足し算する
Y=先頭出塁を許し失点する確率を足し算する
このギャップ「X-Y」がどれだけ大きいか探る。X値が大きいほど多く得点が取れ、Yが小さいほど失点が少なくてすむ。XからYを引いた値が大きいと勝率が高く、マイナスを示すと勝率が小さい。
「大事なのはその「X-Y」値と、日本シリーズの勝率との関係なのです。だいたい比例していることもわかった。」
そして、監督別に比較してみると2008年の時点では次の順位が。
「巨人の原監督が第1位。02年、08年の2度しか出場がありませんが、優れた成績であることに変わりがありません。一方、ワーストの成績は、実は、北京五輪の星野ジャパンを率いた星野仙一監督なのです。」
さらに興味深いのがこの指摘だ。
「指揮官にはふたつのタイプがあります。ひとつは『おまえしかいない。選んだのだから頼んだぞ』と選手を信用して動かないタイプ。もうひとつは、そのときもっとも調子の上がっている選手を、作戦が活かせるように起用するタイプ。」
「星野監督は、どちらのタイプか。その人物や采配ぶりをよく知る関係者は、口をそろえて前者のタイプ、と言います。選手を育てながら戦う長期のペナントレース では、「頼んだぞ」と言われた選手が、意気に感じ期待に応えてくれるのを待てます。(略)しかし、短期決戦で、その手法が通用するかは疑問です」。
確かに北京五輪でも星野監督は不調の岩瀬やエラーを重ねたG・G佐藤を何度も起用し失敗。批判を浴びた。
私は当時ブログに「星野はロマンチックおじさんだから。むしろ岩瀬が不調だったからこそ期待したフシもある。問題は、国際試合という戦場でも、ロマン主義は有効なのかということだが、あれだけ『星野、星野』と大騒ぎで送り出したのだから」と書いた。
徹底したリアリストの落合博満が来年また帰ってくる球界で、時代遅れのロマンチストは短期決戦には永遠に勝てないのか。それが今年の日本シリーズのみどころのひとつであった。
第七戦。前日160球完投の田中将大が最終回のマウンドへ。エースが連投という今さらの「昭和・日本シリーズ」色。野球ファンによってはその前時代ぶりに閉口したかもしれない。
でも星野のロマン主義に東北が沸いた。2013年の今だからこそ。
選手も、短期決戦には不向きと言われた「意気に感じ期待に応える」星野の手法を通用させた。
今年は「データ外」かもしれないが、よかったと思う。
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Written by プチ鹿島
Photo by 東北楽天ゴールデンイーグルス 感動の初優勝/日刊スポーツ出版社
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