Photo by 逆境?それ、チャンスだよ
話題の池上彰が先週の週刊文春コラムで《このところ新聞業界で話題になっている「記事」があります。》と書いていた。それは、読売新聞9月4日付の【幻の「小渕幹事長」】という記事。
ああ、あれか! 思い出した。
あの日、近所の定食屋に昼ごはんを食べに行ったら読売新聞が置いてあったのでたまたま読んでいた。そして当該記事を読んで不思議な気がしたので、あとでまたじっくり読もうと思い写メを撮っておいたのだ。
その写メを見ながら、私が不思議な気持ちがした部分を具体的に記そう。ちなみにこの記事はネットでは有料で最後まで読めない。
記事は9月3日の安倍首相の内閣改造・自民党役員人事がおこなわれた翌日に書かれたもの。改造ドキュメントを書いているのだが、最後に読売は「小渕幹事長で調整」などの自らの人事見通し記事がハズレたことにこう言及しているのだ。
《結果的に読者に誤った印象を与えた。日々流動する政局に際しては、多角的な取材と慎重な判断により、今後とも正確で迅速な報道に努める》
この不思議な記事の締め。池上彰はこの部分を《これは弁解なのか、反省なのか、決意なのか。》と書いていたが、私は読売の「ドヤ顔」が浮かんだ。
誤った報道をしてもなかなか謝罪しなかった朝日に対してのイヤミという意味もあるだろうが、それよりも「我々はここまで政権に食い込んでいる」という自負と、なんなら「ホントに小渕幹事長で実現寸前までいったのだ。ただ、急に谷垣幹事長案になっただけ」という「説明」をしているように思えた。
実際に記事の冒頭では、《「受けてくれるか、まだわからない」。内閣改造・党役員人事を控えた8月下旬。安倍首相は、温めてきた小渕幹事長構想の行方をやきもきしながら見守っていた。》と紹介している。当事者のこんな言葉、ふつうはなかなかとれない。
そして最近興味深いコラムがあった。【「新聞は読売だけで十分」(政府高官) 朝日失墜で、安倍政権と読売の世論統制加速?】(ビジネスジャーナル)という須田慎一郎氏のコラムである。
須田氏とは最近トークライブでよくご一緒する。出演者のひとりである東京ブレイキングニュースの久田将義編集長が須田氏を招いてくれるのだ。いつもとっておきの話をしてくれる。
そんな須田氏のコラムは《「もう朝日新聞や毎日新聞は読む必要はありませんよ。新聞は、読売の一紙だけ読んでいれば十分」。内閣官房高官が真顔でこう話す。》というエピソードから始まる。いかに現在の読売新聞が政権に近いかというコラム内容。
かつてプロレスラーの長州力は「マスコミは東スポだけあればいい」と言った。権力側からすれば余計な論評はぜず、自分の書いてほしいことだけを伝えるメディアだけでいいという意味だ。安倍首相も現在は「長州状態」なのだろうか。
でも読売だけではない。安倍官邸は他のメディアに対しても巧妙なのだ。
最近出版された『安倍官邸と新聞 「二極化する報道」の危機』(徳山喜雄・集英社新書)を読むとよくわかる。
この本はメディアの二極化について「集団的自衛権」や「原発」「秘密保護法」の各新聞の記事を追っているのだが、一方で「安倍官邸のメディア戦略の巧妙さ」も書いている。
たとえば、これまでの首相は原則として日本のメディアからは単独インタビューをうけず、共同記者会見の方式をとってきたが、安倍首相になってからは、それが改められ、在京の新聞各紙と単独会見し、重要ニュースを1社だけに提供するようになったという。
その時期については、《首相や官邸の判断になり、首相の考えや思いを強くアピールする場として使われている》。
こんな首相サイドの思惑をわかっていたとしても、各紙は安倍首相の単独インタビューがとれるならでかでかと報じるに決まってる。
安倍首相は五輪招致演説で「福島はアンダーコントロールされている」と言った。それについては一年経った現在もツッコまれ放題なのだが、もしかしてメディアのアンダーコントロールには成功しているのか。
今後も要注目です。
Written by プチ鹿島
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