Photo by 村尾信尚公式ホームページ
選挙ではなく、選挙特番の報告をしてみたい。生放送で混沌とした選挙特番には「そこでしか見れない」お宝シーンが転がっているからだ。また、そういう雑然とした空気の中での振る舞いにこそ、政治家やキャスターたちの資質が浮き上がってくるとも言える。
今回の衆院選挙。解散前から安倍首相のテンションの高さが目立った。もっと言えば、自分がツッコまれるのは嫌うが、相手のことは激しくツッコんだ。野党だろうがマスコミだろうが徹底していた。
そして投票日。首相は各局の選挙特番には「公平・中立」に出演しなければならない。もし絡みたくない番組や人物がいたとしてもその日だけは会話をする。ということは今回の選挙特番の見どころのひとつは「誰が安倍首相をイライラさせるのか」ではないか? これが観戦ポイントのひとつであろう。
予想をするなら「本命=池上彰(テレビ東京)、対抗・古舘伊知郎(テレビ朝日)」あたりだろうか。池上彰の政治家に対する踏み込み方は毎回選挙特番の見もの。安倍首相にも切り込んでイライラさせる可能性大。一方の古舘伊知郎は「日刊ゲンダイ」の選挙特番の解説記事で「安倍首相が嫌う古舘」とふつうに紹介されていた。なので対抗馬にした。
本番。まず池上彰はご丁寧に「安倍総理の野望年表」を作成し、憲法改正はいつごろを狙っているのかと解説し終え、中継が自民党本部とつながる。いくつか質問をしたなかで、安倍首相が顔色を一瞬変えたのが「集団的自衛権」に関する質問だった。
「選挙では集団的自衛権のことはあまり口にしなかったですね」(池上)
「そんなことありませんよ。あれだけテレビ討論で言ったじゃないですか」(安倍)
「ということはつまり、こうやって自民党が勝ったということは集団的自衛権の憲法解釈を支持されたと受け止めてらっしゃるのですね」(池上)
「ご理解を頂いたと思っている」(安倍)
安倍首相を少しイラッとさせた池上彰。古舘伊知郎はどうだったか。
「憲法改正、あと4年のうちに考えがおありなんですね?」(古舘)
「3分の2は高いハードル。衆参ですからね。国民的理解を深めていく」(安倍)
ここまでは淡々と。印象的だったのは最後のやりとりだ。
「持ち時間が短すぎる。年明けに是非スタジオにお越しください」(古舘)
「なかなか古舘さん手ごわいですから」(安倍)
「政治部長を通しますので是非」(古舘)
お互い笑顔だが目は笑っていない。この「政治部長を通す」というのは、もしかしたら「選挙期間中の報道の公平性を確保するよう求める文書を在京各局に渡していた」というあの件に対する古舘流のイヤミなのだろうか? 考えすぎか?
伏兵は日本テレビの選挙特番キャスター・村尾信尚だった。
「この道しかない、だけではなくて具体的に数字をあげて(経済政策を)訴えるべきでは?」という村尾氏の質問が飛ぶや、突然首相はしゃべり出して演説をぶった。遂にはイヤホンを外して一方的にしゃべり続けたのである。
「働く人の約7割は、中小企業に勤めています」と村尾氏がまた質問をするとまたテンションがあがりしゃべり続ける首相。
実はこの村尾氏もけっこう強い口調で安倍首相との会話に臨んでいた。この村尾氏は元大蔵官僚。一部オヤジジャーナルの書くとおり、消費増税をめぐる「財務省VS安倍の攻防」という構図が存在し、ここにも影響していたのだろうか? ※もちろん個人の下世話な妄想です。
とにもかくにも、今回の「誰が安倍首相をイライラさせるのか」クイズ、正解は村尾信尚キャスターでした。
Written by プチ鹿島
プチ鹿島●時事芸人。オフィス北野所属。◆TBSラジオ「東京ポッド許可局」◆TBSラジオ「荒川強啓ディ・キャッチ!」◆YBSラジオ「はみだし しゃべくりラジオキックス」◆NHKラジオ第一「午後のまりやーじゅ」◆書籍「うそ社説 2~時事芸人~」◆WEB本の雑誌メルマガ ◆連載コラム「宝島」「東スポWeb」「KAMINOGE」「映画野郎」「CIRCUS MAX 」
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