プチ鹿島の「余計な下世話」

総裁選という「人間性クイズ」で勝ったのは誰だ!?|プチ鹿島の『余計な下世話!』

2015年09月15日 プチ鹿島 総裁選 自民党

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 無投票で安倍晋三氏の再選が決まった自民党総裁選。この結果に対し、以下のような声があった。

「総裁選は候補者同士の政策論争を通じ、さまざまな意見や世論があることを認識する貴重な機会だ。」
「首相への異論を許すまいと、ここまで対立候補を抑えこもうとした総裁選は記憶にない」(いずれも朝日新聞)

 ここまで真面目な視点がなくても、総裁選があれば「下世話さ」から人間が見えたと思うのだ。最近よく「政局より政策を」と言われる。人間関係のドロドロや、誰と誰が分裂したなどの「政局」報道は今のご時世、意識の高い方々からは小馬鹿にされがち。そんなものより政策論争だけが見たいという意見はたしかに正しい。

 でも政局を見るのも大切だと私は思う。なぜなら政治家の「人間性クイズ」を鑑賞できるチャンスだからだ。ふだんご立派なことを言っていても、ああ、この人は土壇場ではこんな振る舞いをするのかという発見は、政策を吟味するより信頼できるときがある。

●実は無投票でも見どころはあった今回の総裁選

 有権者に選ばれた政治家は緊急時や非日常の振る舞いこそが問われる。猪瀬直樹氏(前東京都知事)が政治家に向いてないと思ったのは5000万円の金銭スキャンダルなんかではなく、その釈明をする際に顔面蒼白でアワアワしていたことだ。あれでは東京に有事が起きときリーダーとしては頼れない。もっと図太さを見せてほしかった。

 総裁選という舞台は政治家の人となりを見るにじゅうぶんなチャンス。だから実現してほしかったが実は無投票でも見どころはあった。今回の見どころは安倍氏の相手として誰が手をあげるか? だった。もっと言えば「手をあげたところで勝ち目のない戦いに誰が手をあげるのか、その目的は?」。

 推薦人20人を集められず立候補はできなかったが、手をあげたのが野田聖子。いっぽう、立候補せずに安倍氏の再任が決まった翌日に「石破派立ち上げ」を表明したのが石破茂。たぶん永田町的に正しいのは石破茂だろう。絶大な力を持つ現総裁には手をあげずに恩を売り、再選翌日に派閥立ち上げを表明することで「次は手をあげます」と意思の表明をする。

 しかし、野田聖子があえて今回手をあげたことは結構な「貯金」になるはず。小泉純一郎を思い出してほしい。あの人、総裁選といえば空気を読まずに何度も出馬して、その姿は風車に突撃するドン・キホーテのようだった。永田町では失笑だったかもしれないが、何度目かのとき遂に「世間」に響いた。地方票で圧倒して、その結果を見た国会議員たちは、これで小泉を落としたらマズいと小泉支持にまわった。ドン・キホーテが勝った瞬間である。そう考えると、地方では人気があるのに国会議員には人気がないと言われる石破茂こそ小泉流で果敢にチャレンジすべきだったのだが、本人は派閥結成で王道を歩こうとしている。どこかズレてないか。

 今回、あの頃の小泉純一郎のように永田町で鼻で笑われたのは野田聖子だった。ドン・キホーテにもなれずピエロだったかもしれない。でも「観客」はそういう役者には同情もわく。野田氏が今回手をあげた甲斐はあったと思う理由がそこである。

「女性推進の安倍氏に潰された」とマスコミは悲劇的に書くが、野田本人はそんな取り上げられ方(旧態依然とした書き方も含め)も織り込み済みだったかもしれない。そうとう図太そうで石破氏よりはおもしろそう。突如として小泉化する可能性もある。さて数年後どうなる。

Written by プチ鹿島

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プチ鹿島●時事芸人。オフィス北野所属。◆TBSラジオ「東京ポッド許可局」◆TBSラジオ「荒川強啓ディ・キャッチ!」◆YBSラジオ「はみだし しゃべくりラジオキックス」◆NHKラジオ第一「午後のまりやーじゅ」◆書籍「うそ社説 2~時事芸人~」◆WEB本の雑誌メルマガ ◆連載コラム「宝島」「東スポWeb」「KAMINOGE」「映画野郎」「CIRCUS MAX 」

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